提供:アクセンチュア

アクセンチュア 代表取締役社長 江川 昌史氏 × クボタ 代表取締役社長 北尾 裕一氏
対談特集 全方位型価値(360°バリュー)がもたらす企業の未来像

食料・水・環境の〝命を支えるプラットフォーマー〟へ ——DXで新たな価値を協創

 アクセンチュアとクボタは戦略的パートナーシップを結び、食料・水・環境に関わる分野で社会課題解決に向けた新たな事業モデルの構築に動き出した。「命を支えるプラットフォーマー」を目指すクボタの挑戦を、「360度バリュー(全方位型価値)」を提供するアクセンチュアがデジタルトランスフォーメーション(DX)で支援し、ともにSDGs(持続可能な開発目標)が掲げる豊かな社会の実現に貢献していく。地球と人類の未来を見据え、新たな価値を協創する思いを両社のトップが語り合った。

暮らしに欠かせない
エッセンシャル事業

江川気候変動対策など地球環境問題への取り組みは人類の喫緊の課題です。こうした中でクボタは目指す姿として「豊かな社会と自然の循環にコミットする〝命を支えるプラットフォーマー〟」を掲げ、食料の生産性・安全性の向上、水資源・廃棄物の循環の促進、都市環境・生活環境の向上につながる新たなソリューションの提供を目指すと宣言されました。クボタは、グローバルにビジネスを展開しており、自然と密接に関係する食料・水・環境といった領域での変革を通じて持続可能な社会の実現に取り組んでいます。

アクセンチュアは企業を取り巻くすべてのステークホルダーに対して企業価値を高める「360度バリュー」という理念で、お客様の活動を支援しています。財務指標の改善だけでなく、DXの推進、ESG(環境・社会・企業統治)やサステナビリティ―の取り組み、デジタル人材の育成などでも、当社の技術やノウハウによってクボタの活動の力になりたいと思います。

北尾新型コロナウイルス禍の中、私たちの事業は人々の暮らしに欠かせないエッセンシャルビジネスであることを改めて認識しました。農業の現場も水インフラなどの環境事業もコロナだからといって、止めるわけにはいきません。社員の頑張りで製品・サービスを提供し続けることができました。

クボタの創業は1890年です。当時はコレラが流行し、創業者の久保田権四郎は「伝染病から人々を救いたい」との思いで水道用鋳鉄管の量産に成功しました。日本の水道インフラは、今や無くてはならない社会基盤であり、農機もその他産業機器についても時代のニーズに応えて開発し、暮らしを支えるシステムになっています。

これら製品・サービスを通じて蓄積してきたデータを、このDXの時代に有効活用できれば、社会が直面している課題を解決する糸口になるでしょうし、将来に対してもますます可能性が広がると考えます。

360°value

アクセンチュアの定義する「360°バリュー」とは、企業の財務的なパフォーマンス(Financial)だけでなく、優れた顧客体験(Experience)や持続可能性(Sustainability)といった多様な価値基準、また従業員や地域社会、株主、主要なパートナーといった多様なステークホルダーへの利益に基づいた、多次元的な価値評価の形態である。「Client」の部分には、業界・業種や経営状況等に応じ、顧客ごとに最適な指標を設定している。

ビッグデータ活用で
「スマート農業」に変革

江川日本の農業の課題に後継者不足があります。クボタは新たに農業を始める人を支援するため、農機のシェアリングサービスを始めましたね。

北尾茨城県つくばみらい市と京都府亀岡市の2地域で昨年スタートしました。農業において、初期投資は新規参入の障壁の一つです。農機のシェアリングサービスによって、就農のハードルを下げることができます。課題感を共有する自治体と連携して取り組むことで、日本農業を応援していきます。

江川アクセンチュアも福島県会津若松市で進めるスマートシティープロジェクトの中で、農業の高度化をテーマの一つにしています。就農者への情報提供やトマト栽培でのIT(情報技術)活用など緒に就いたばかり。地域農業の先進モデルづくりを一緒に進め、世界に広げていければと思っています。

フォト:北尾氏

北尾クボタは農業のDXを目指して、営農をITで支援する「KSAS(クボタスマートアグリシステム)」を農家に提供しています。農機をネットにつなげ、搭載したセンサーで農地や農作物、農作業のデータを蓄積・分析します。栽培ノウハウを見える化し、農作物の品質と収量を向上させ、生産性を高めることで、もうかる農業を実現していきます。

江川日本の農業は担い手が減り、個々の農家の大規模化が進んでいます。KSASによる生産性向上は日本の農業の競争力強化につながります。今後は農作業の完全自動化も視野に入れているのでしょうか。

北尾農機の自動運転では今はレベル2で、有人監視下での自動運転が可能です。人が運転するトラクターと協調しながら自動で作業をすることも可能で、軽労化や効率化の効果が期待できます。北海道岩見沢市でローカル5Gを活用した実験では高い精度の自動運転に成功しました。センシングや画像処理などの技術や自動運転に関する法整備が進めば、将来的には完全自動化も可能と考えます。

江川事業会社でも人工知能(AI)やRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)を使ってかなりの業務を自動化する動きがあります。業務データの蓄積と分析を重ねることで意思決定はどんどん賢くなります。データの力で事業を変革していくので「データドリブン・トランスフォーメーション」と呼んでいますが、農業でもデータを次々とフィードバックすることで高度化が期待できます。

北尾まさにKSASが目指している姿です。収量、気温・天候、生育状況などのデータは人工衛星やドローンでも収集します。ビッグデータの分析を繰り返すことでスマート農業につながります。さらに生産者とレストランやスーパーなどを結びつけたアグリプラットフォームを構築して全体のソリューションを提供していきたいと考えています。

循環経済の地域づくり
デジタル人材育成急ぐ

江川北尾社長はKSASに加え、資源リサイクルなど環境面での持続可能性を取り込んだ「スマートビレッジ構想」も描かれています。

北尾連携させていただいている各自治体を訪問していく中で着想しました。これからの社会は「分散型社会」に向かうと思っています。それぞれの地域やコミュニティーの中で、農作物をある程度自給、消費し、またそこからエネルギーを抽出する流れです。地産地消によってエネルギーも食料もロスを減らせます。クボタは廃棄物処理の技術を使って資源の再利用などの循環経済の実現に貢献できます。

例えば農業で出た残渣(ざんさ)物や下水の汚泥処理で出たメタンガスを電気や熱に変える技術があります。廃棄物を溶融してレアメタルなどの有価物を回収するリサイクル技術もあります。クボタが持つ技術を循環経済に生かしていく。農地から出るメタンガスや一酸化二窒素といった温暖化ガスの削減にも取り組みます。そのためには色々なパートナーの協力が必要です。

フォト:江川氏

江川新しい技術を社会に実装していくためには、様々なデータを蓄積して有効に活用できるかがカギになります。AIの活用など、クボタの戦略的パートナーとしてアクセンチュアも推進してまいります。

デジタル技術は工場の生産性向上や製品の設計・品質向上にも欠かせません。DXを実行するスピードが企業競争力を左右します。クボタは社内にDX人材を1000人育成する計画を進めていますね。

北尾DX人材はもっと増やしたいです。工場や設計などの現場にデジタルが分かる人材を配置し、現場と一緒になって迅速に問題解決できる体制を作りたいです。

江川アクセンチュアには社員のリスキリングでDX人材を育成するノウハウがあります。AIが使えるデータサイエンティストを養成する講座もありますのでぜひ、クボタでも活用していただきたいと思います。

北尾クボタは農業や水のインフラという地上数メートルと地下数メートルの事業を得意としてきました。ここで蓄積してきたビッグデータを活用できれば強みになります。アクセンチュアの力を借り、人類の生存に欠かせない食料・水・環境の分野で、クボタの製品・技術・サービスを通じたトータルソリューションを創り出したいと思います。

株式会社クボタ

1890年創業。主要製品は農業機械、建設機械、環境関連製品など。事業を通じて食料・水・環境分野の課題解決をめざす。

アクセンチュア株式会社

デジタル、クラウドおよびセキュリティー領域において卓越した能力で世界をリードするプロフェッショナルサービス企業。

フォト:クボタトラクターイメージ
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