提供:アクセンチュア
アクセンチュア×会津若松市
スマートシティの未来図描く

スマートシティで先頭を走る福島県会津若松市。アクセンチュアが東日本大震災の復興支援でこの地に拠点を構えたことを機に始まったデジタル技術による社会課題解決の取り組みには地方自治体だけでなく、最前線のプロジェクトに身を置きたいという若者からも熱い視線が注がれている。会津若松市長の室井照平氏とアクセンチュア社長の江川昌史氏がこれまでの歩みとこれから描く未来図を語り合った。

半年で500人超が視察に来訪 熱視線が集まる「会津モデル」とは

会津若松市長 室井 照平氏
会津若松市長
室井 照平
室井

会津若松市ではICT(情報通信技術)を活用する「スマートシティ会津若松」に取り組んでおり、昨年には「デジタル田園都市国家構想(デジ田)推進交付金」のうち、先導的な取り組みを支援する「タイプ3」に最多の交付決定額で採択されました。食・農業、観光、決済、ヘルスケア、防災、行政の6分野でデジタルサービスの実装を行い、このうち、ヘルスケアと観光、および領域を超えた連携を可能とするデータ連携基盤について、アクセンチュアを中心とする事業者と開発を進めてきました。

ヘルスケア分野では医師と市民がデータを共有する「つなげるデータ医療」を開発して市民に提供しているほか、高血圧傾向のある患者を対象に「遠隔医療サービス」も提供しています。分散していた個人のヘルスケア・データを集約・共有することで、生活習慣病の予防につながり、医療費の抑制にも寄与すると思います。

観光分野ではスマートシティ関連の視察やビジネスで会津若松市を訪れる人が大幅に増えたため、これを経済効果につなげるべく、市役所と民間企業の視察を一元的に受け付けるウェブサイトを公開しました。飲食店の空き状況などを地図上で確認できるアプリ「Visitory(ビジトリー)」も提供しています。

アクセンチュア 代表取締役社長 江川 昌史氏
アクセンチュア 代表取締役社長
江川 昌史
江川

昨年10月のデジ田事業開始以降、半年で500人以上が視察目的で訪れており、2千万円を超える経済効果があったと聞いています。アクセンチュアへ地方自治体からの問い合わせも絶え間なくあり、9つの自治体で会津モデルが導入されました。このほか、全国で約20の自治体から相談を受けており、非常に高い関心を寄せていただいています。

「データは市民のものであり、オプトインで得たデータは共有のものとし、様々なサービスに連携させていく」という発想はありそうでなかったので、着実に全国に広がっている手応えを感じています。

室井

デジ田のような巨大プロジェクトを実現させるには、市民や地域のステークホルダーの理解が不可欠です。対話の積み重ねが「スマートシティ会津若松」の取り組みの基礎であり、少しずつ市民理解が得られていると実感しています。

日本初のICT専門大学である会津大学が存在する地域特性を背景に、2019年にはICTオフィス「スマートシティAiCT」を開所。アクセンチュアも企業誘致に協力してくれたおかげで、今では40社以上のICT関連企業が入居しています。21年には入居企業を中心に一般社団法人AiCTコンソーシアムが設立され、大企業と地域企業の枠を超えたイノベーションが生まれやすい環境も構築されています。

22年には市と会津大学、コンソーシアムの間で「スマートシティ会津若松」の推進に関する基本協定を締結しました。3者がより一層密に連携する体制があったからこそ、デジ田の採択と、6分野でのサービス提供という結果を出すことができたと考えています。

会津若松市でのスマートシティプロジェクトは今も進化を続けている

データ連携のカギは「都市OS」 市民が主役の持続可能な仕組み

江川

東日本大震災で甚大な被害を受けた福島県の復興を支援したい、という思いから会津若松市に拠点を置くと決めました。最初の3年間は復興支援に取り組んできたのですが、会津に関われば関わるほど、魅力やポテンシャルの大きさを感じ、「この地は地方創生やスマートシティのモデルになるのではないか」と考えるようになりました。

社内でもスマートシティのあり方を議論していたのですが、海外の事例を見ても、持続可能なモデルが見当たりません。私たちが考えたのは、データは市民のものであり、一企業が独占するのではなく、様々な企業がオープンな形で活用するモデルでないと、将来成り立たなくなるということ。

こうした認識のもと、地域のデータを活用して地域に住む人々の暮らしをよくするためのデータ連携プラットフォームとして作ったのが「都市OS」です。共通基盤とAPIを標準化したことで既存の行政の情報システムと容易につなげられ、データを活用してスマートシティのエコシステムが構築できます。

共通IDを使うため、市民は手を煩わすことなく、様々なサービスを便利に利用でき、自治体は地域を超えて共通の部分に同じ仕組みである都市OSを採用することで余計なシステムの開発費用を抑え、都市間の連携も容易になります。都市OS上でサービスを展開する企業も地域ごとに提供するハードルが下がり、市民、行政、企業それぞれにメリットがあります。

室井

デジ田の補助金対象事業とは異なりますが、会津地域の中小製造業がDXを通じて生産性向上に取り組めるよう、アクセンチュアには共通で利用できる業務プラットフォームCMEs(コネクテッド・マニファクチャリング・エンタープライゼス)も開発していただきました。

地域企業間の連携を通じた生産性向上やそこで働く方の賃金アップにつながると期待しています。実際、導入企業の中には従業員の賃金を3%アップさせた企業もあると聞いています。

江川

このCMEsは、当時、日本商工会議所の会頭だった三村明夫氏から「アクセンチュアは中小企業の支援も行ってほしい」とご指南をいただき、それに応える形で誕生しました。大企業向けに提供していたSAPのソリューションを従量課金モデルで中小の製造業に提供する道筋をつけ、会津若松市に導入したのです。中小企業が自ら学べる教育プログラム「CMEsアカデミア」も提供することで、導入のハードルも下げています。

IT人材の確保という課題はありますが、一筋の光明も見えてきました。新型コロナウイルス禍でデジタルが加速したことによる在宅勤務と若者に広がりつつある東京と地方のデュアルライフなどの価値観の変化です。これらによって地方でも付加価値の高い職に就くことができ、地方の生産性向上につながるのではないでしょうか。

会津若松で生まれたデータ連携プラットフォームが日本全国に広がり始めた

地方で働く選択肢を広げる 社会課題解決への挑戦

室井

地方で働く選択肢が認知されつつあるため、魅力的な仕事や住みたくなるまちづくりに力を入れていきたいと思っています。

江川

アクセンチュアでも昨夏から「ロケーション フレキシビリティ制度」を導入。日本全国どこに住んでいても在宅勤務を基本として働けるようになりました。若い世代は社会課題に対する感度が高く、スマートシティ・プロジェクトに取り組むためにアクセンチュアで働きたいという明確な意思をもってドアをたたく人が増えています。

室井

「スマートシティ会津若松」の取り組みをさらに発展させることで、地域発の「三方良し」のまちづくりを進め、共助型スマートシティのモデルになりたいと考えています。そのためにも、様々な企業の知恵を借りながら連携を強化していきたいと思います。

江川

ありがたいことに、会津若松市が全国のスマートシティのリーダー的都市と見なされるようになりました。これからは市とともに、協調領域と競争領域を意識しながら、限られた資源で魅力的なまちづくりをする「会津モデル」を全国に広げていきたい。一過性の実証実験にとどまらず、持続可能性ある共助型都市経営ができれば、日本中に明るい未来図が描けると確信しています。

対談する室井 照平氏、江川 昌史氏