精緻な機構美が存在感を放つドイツウォッチの名品、A.ランゲ&ゾーネ。同社の〈ランゲ1〉と〈サクソニア〉は、ブランド復興後の1994年に誕生した代表作だ。独創的な機能とバランスのとれたデザイン、そして仕上げの美しさ。まさに名品である。
1845年、ザクセン王国(現ドイツ東部)の山間の地グラスヒュッテに、時計師フェルディナント・アドルフ・ランゲが工房を興した。ドイツ高級時計史の幕開けだ。やがてA.ランゲ&ゾーネの社名で、最高の技が継承されていった。
第2次大戦後、旧東ドイツ政府によってランゲの時計工房は国有化、伝統は危機にさらされた。だが1990年、東西ドイツは統一。そして同年、アドルフの曾孫ウォルター・ランゲにより、新生"A.ランゲ&ゾーネ"が再建された。以来、ドイツウォッチの最高峰に立ち、新機構とデザインを次々と発表、世界の愛好家を魅了し続けている。
再建後の94年、同社は4モデルを発表したが、その中の2作がここに紹介する〈ランゲ1〉と〈サクソニア〉の初代モデルだった。誕生して27年経つが、創造の遺伝子は確実に受け継がれ、同時に新たな魅力が加味されている。
冒頭の〈ランゲ1〉はブランドのアイコンともいうべきモデルだ。時分針とスモールセコンドが左右非対称のレイアウト。ドレスデンに立つ歌劇場の時計を発想源とする瞬転式アウトサイズデイト。そして径38.5mmというケースサイズ。いずれも誕生時と変わらないが、2015年にムーブメントを刷新。外観はほぼそのまま、一層と精度向上したムーブメントが搭載されている。
A.ランゲ&ゾーネの歴史上の重要な出来事を解説した
「A.ランゲ&ゾーネの沿革」のストーリーを読む
1994年、A.ランゲ&ゾーネの復興第一弾として発表された
4モデルのうち最も注目を集めた「ランゲ1」とは?
一方で上写真が〈サクソニア〉だ。こちらはシンプルで端正なデザインが特徴であり、繊細な長短針とバーインデックス、そして6時位置のスモールセコンド、それぞれのバランス配分が美しい。流行に左右されない上品な面持ちなので、ペアで着けて愛用するのもお薦め。デザインはシンプルでも、機構の精密度は折り紙付きだ。左モデルのムーンフェイズは、122.6年後に一日分、調整すれば事足りる。
〈ランゲ1〉と〈サクソニア〉。いずれもA.ランゲ&ゾーネが自社開発・製造する世界最高水準のムーブメントを搭載し、美しい仕上げをケースバックから楽しめる。真に価値あるタイムピースを、ぜひ店舗でお確かめいただきたい。
ザクセン高級時計産業のルネサンスに多大な貢献を
果たしたコレクション「サクソニア」とは?
Photographs : Ryuta Arakaki (Pile Driver),
Styling : Tatsuhito Yonamine
Photograph : Toshio Debata ,
Text : Katsumi Takahashi
このコンテンツは2021年11月21日発行の
「THE NIKKEI MAGAZINE」からの転載です。