企業の約99.7%が中小企業だといわれる日本。持続的な日本経済の発展には、その成長が不可欠だといえるが、コロナ禍や人材不足、後継者問題など、多くの課題を抱えているのが実情だ。そんな中、スモールビジネスへのバッキング──中小企業の応援を打ち出しているのが、アメリカン・エキスプレスだ。

1850年にアメリカで創業したアメリカン・エキスプレス(アメックス)。その社名のとおり、創業当初は物を運ぶ「Express」(運送業)からスタートしており、現在のクレジットカード・ビジネスを提供するに至るまでには、長い歴史のなかで時代の変化やニーズに合わせてお客様、地域コミュニティー、そして社員を第一に考えサービスやビジネスを革新してきている。
「なかでも“スモールビジネス”(中小企業)は、創業当時からアメックスにとって重要な顧客です。『日々、世界最高の顧客体験を提供する。』というビジョンのもと、中小企業の経営・ビジネスの成長をバッキングしながら、共に成長してきたと思っています」とアメリカン・エキスプレス 副社長 須藤靖洋氏は語る。
アメックスでは、売上や利益のみを求めるのではなく、社員一人ひとりが自分たちの役割・意義を認識し、事業を通して社会に貢献していけるように取り組んでいるという。「そういった取り組みは、アメックスだけでできることではなく、理念を共有するパートナーが必要です」と須藤氏。そんなパートナーシップの一例、Forbes JAPANとの2018年からの取り組みを紹介したい。同誌編集長 藤吉雅春氏と須藤氏の対談を実施、その経緯や理念を伺った。
「Forbes JAPAN CEO Conference 2018」での特別賞創設から、地方の起業家紹介、スタートアップの表彰など年々範囲を拡大してきた両者のパートナーシップ。そしていま、「スモールビジネス」の経営者が悩みを共有し、アイデアをもらう場として2020年に立ち上げた「お悩みピッチ」に、新たな展開が生まれようとしている。
── 最初に、パートナーシップの経緯をお聞かせください。
藤吉 2018年にForbes JAPANが「スモールジャイアンツ」の表彰を始めたのがきっかけです。組織は小さくても、大きな価値を提供している革新的な中小企業が多数あるのに全然知られていない、と。
須藤 そんなスモールビジネスへのバッキングによって、いつか世界を変えるような企業が輩出されてくるということを夢見て、パートナーシップを開始しました。
── 日本の起業率は5%程度ですが、何が課題だと考えられますか?
須藤 アメックスには世界中のお客さま事例が厳重なセキュリティー下で管理されていますが、各国の起業家の傾向や事業拡大のタイミングを見ると、最近はアフリカやインド、南米などで起業家が増えており、欧米と同様に固定観念にとらわれないアイデア、起業家を受け入れサポートする文化や環境があることが分かります。比較すると日本には課題があるといえるかもしれませんし、まだまだ可能性があるとも考えられます。
── パートナーシップの中で、印象に残っておられる取り組みは?
藤吉 やはり「お悩みピッチ」ですね。コロナ禍が拡大した2020年、世の中すべてが困り果てたときに、僕がずっと見てきた全国の中小企業の生きる知恵を、悩んでる人たちとマッチングさせて生かそうじゃないかと、アメックスとタッグを組んで開催しました。1回目から大変白熱しました。
須藤 悩める経営者のためのコミュニティーやプラットフォームの提供は、アメックスが常に考えてきた“経営者のみなさまに何ができるか”に直結しています。お悩みピッチに参加することは、自分の現実と向き合うことでもあります。ほかの経営者からシェアされる経験は、時には厳しい声ともなります。そのすべてが参加者全員の成長につながっていく。この濃い時間を、日本全国のさまざまな起業家に共有し、業種、世代、地域を越えてボーダーレスにミングル(交流)していただけました。

── アメリカン・エキスプレスでは、他にどんなスモールビジネスの支援に取り組んでいますか?
須藤 街のお店を応援するSHOP SMALLという取り組みを、日本で2017年から取り組んでいます。カード会員の集客促進や店頭支援ツールの無償提供のほか、2022年は女性ショップオーナーを応援するプログラムも立ち上げました。
── 最後に、今後に期待することなどメッセージをお願いします。
藤吉 アメックスの事業の本質は“助ける”こと(バッキング)。あらゆるビジネスの原点も、誰かを手助けすることだと思うので、「お助け」のムーブメントを世界に広めたいです。
須藤 私たちが創業時から大切にしている3本の大切な柱、サービス、トラスト(信頼)、セキュリティーを守り、お客さまのニーズに沿ったクレジット・カードを越えたサービス「beyond the card」を提供し続けることで、成長を目指すすべてのスモールビジネスの経営者さまにとって、なくてはならない存在で居続けられたらと思います。



毎回、経営者がお悩みを持ち込み、規模や業界の異なる経営者が「お助け隊」となりアイデアや経験を提案する「お悩みピッチ」。この日のイベント前半に「お悩み人」として登壇したのは、Forbes JAPANが2020年に日本発「世界を変える30歳未満の30人」に選出した株式会社TIEWAのCEO合田文氏。ニッチなマーケットの開拓をどうするか、サービス開発の局面で意思決定の際にどこまでデータを活用すべきかなど、まさにいま直面している悩みが吐露された。
イベント後半では逆に、その模様を見守っていた来場者とのワークショップにアドバイスする側としても参加。両方の立場でお悩みピッチに参加してみて、「これすごくいい会じゃないですか! こういう機会が多くの起業家にあるといいなと思います。Win-Winしかないという気持ちになりました」とコメントを寄せ、イベント終了後も来場者と名残惜しそうにしばし立ち話を続ける様子が印象的だった。また、主催者として参加したアメックス須藤氏も、共通の悩みを気軽にぶつけ合い助け合うこのプラットフォームには大きな手応えを感じていたようだった。「虎の巻によって、垣根を越えた連携でスモールビジネスが活性化していってほしい」と期待を寄せていた。
悩みを吐露することの価値、応援し合う喜び――まさに「誰かの経験が、人を輝かせる武器になる」お悩みピッチの虎の巻が、中小企業の日にローンチ。Forbes JAPANとアメックスがシェアするこの虎の巻を手に、まずは気軽に場づくりに挑戦してみてもらいたい。