提供: アナログ・デバイセズ

アナログ・デバイセズ株式会社
代表取締役社長
中村 勝史

大型M&Aでさらなる事業成長を目指すアナログ・デバイセズ

トップに聞く「半導体業界のリーダーが日本の製造業にもたらす価値とは?」 トップに聞く「半導体業界のリーダーが日本の製造業にもたらす価値とは?」

写真:中村 勝史 氏

5Gの普及やデジタルトランスフォーメーション(DX)の進展により、電子・通信機器に組み込まれる半導体デバイスの需要が世界中で急速に拡大している。そうしたなか、アナログ半導体大手の米アナログ・デバイセズ社が同業の米マキシム・インテグレーテッド・プロダクツ社の買収を発表、2021年8月に買収手続きを完了させ、業界屈指の半導体メーカーが誕生した。この意義をアナログ・デバイセズ日本法人社長、中村勝史氏に聞いた。

コロナ禍における半導体市場苦悩

写真:中村 勝史 氏

中村 勝史
アナログ・デバイセズ株式会社
代表取締役社長

―― 電子・通信機器を生産する多くの製造業企業が深刻な半導体不足に見舞われるなど、半導体業界は新型コロナウイルス禍の影響を大きく受けました。今の半導体市場はどのような状況にありますか。

中村 半導体市場では数年おきに需要が高まるサイクルが存在しています。直近では2018年に産業機器、車載機器、民生機器など多くの分野で半導体需要が高まりました。新型コロナによるパンデミック(世界的大流行)が発生した2020年初頭は、ちょうど次に到来する需要サイクルが見えてきたこともあり、どの半導体メーカーもそれに向けた投資を進め、新製品の研究開発や生産能力の拡大に取り組んでいたところでした。

 そうしたなかパンデミックに見舞われ、当初はあらゆる機器向けの半導体需要が低下すると思われましたが、実際には半導体需要がむしろ高まることになりました。これは誰も予想できない出来事であり、結果的に2018年のピークを超えて過去最高の需要を記録しています。ところが半導体メーカーのなかには、生産拠点のロックダウンによって人の移動が制限され、需要に応えるだけの生産が追いつかない事態になったところもありました。これに原料の供給不足などもあいまって、製造業全体が深刻な半導体不足に陥ったというのが、コロナ禍における半導体市場の状況です。

―― その状況においてアナログ・デバイセズはどのような対策を講じたのでしょうか。

中村 アナログ・デバイセズはお客さまからの半導体需要に応えるため、2020年に工場を拡張して生産能力の拡大を図るという投資を積極的に進めました。半導体供給の面ではまだまだ頑張らなければいけませんが、それでも2018年の半導体製造キャパシティーに比べて3~4割は生産能力を拡大させています。需要に対しては、まずは人工呼吸器といった人の命に関わる医療機器の領域向けに最優先で供給を行うこととし、次に通信機器など社会インフラに関わる分野への供給に優先して取り組んでいます。また、産業市場と自動車市場向けの事業などが大きく伸び、2021年11月に発表した同年度決算では史上最高の売上高を達成することができました。

イノベーション重視研究開発に注力

―― アナログ・デバイセズの事業内容と日本法人について教えてください。

中村 アナログ・デバイセズは1965年に創業した50年以上の歴史を持つ半導体メーカーであり、イノベーションを重視して社会の成長に貢献することをビジネスコンセプトに掲げています。とりわけ業界トップクラスの研究・開発投資額を誇り、2021年度は実に売上高の約18%、年間13億ドルにも及びました。社会に貢献するためのESG(環境・社会・企業統治)への投資も重視しており、例えば工場や自動車のCO2排出量を減らす新しい技術の開発などにも取り組んでいます。こうした研究・開発への投資はお客さまが求める製品だけに限らず、新しい開発技術に対しても実施しており、ここに創業以来のビジネスの原点があります。

 日本法人は、高品質なものづくりを得意とする日本の製造業のお客さまに対し、最先端の半導体製品をスピード感を持っていち早く届けるという、アナログ・デバイセズのなかでも特に重要なビジネス拠点としての役割を担っています。また、変化の激しい市場ニーズや技術トレンドに素早く対応できるよう、アナログ・デバイセズでは企業などとパートナーを組むエコシステムの構築に取り組んでいます。日本の特長を生かしたエコシステムの事例や手法を、今後はさらに他のリージョンにも積極的に展開していきます。

イメージ:信号処理製品生産

―― アナログ・デバイセズのソリューションにはどのような強みや優位性がありますか。また、具体的にどのような製品を提供していますか。

中村 当社の最大の強みや優位性は、製品ポートフォリオの広さにあります。自動車、産業機器、民生機器、通信機器、医療機器などの市場を中心に、あらゆる種類の電子機器に使用されている高性能アナログ集積回路(IC)、ミックスド・シグナルIC、デジタル・シグナル・プロセッシング(DSP)といった信号処理製品を提供しています。現在はデータ・コンバータ、アンプ/リニア製品、無線周波数(RF)IC、パワーマネジメント製品、マイクロ電子機械システム(MEMS)技術を利用したセンサーなど、お客さまの幅広いニーズを満たす革新的な製品も幅広く生産しています。お客さまの数は全世界で12万5000社以上に及びます。

マキシム買収がもたらすシナジー効果

―― 2021年8月にマキシム・インテグレーテッド・プロダクツの買収が完了し、新生アナログ・デバイセズがスタートしました。このM&A(合併・買収)により、アナログ・デバイセズのビジネスはどのように変化しましたか。また日本の製造業企業に、どのような新たな価値をもたらしますか。

中村 買収が完了して3カ月が経過しましたが、すでに営業組織の統合を終えており、現在はアナログ・デバイセズの既存のお客さまに対してマキシム製品を提案するなどのエンゲージメントが始まり、非常に活気のある状況です。

 アナログ・デバイセズはマキシムに限らず、過去にも多くのM&Aを実施してきましたが、M&A戦略の目的はアナログ・デバイセズがこれまで持っていなかった技術、能力を買収企業から吸収することにあります。例えば2017年3月に米リニアテクノロジーを買収したことにより、アナログ・デバイセズは電源回りの広範な技術を手に入れることができました。これにより電源関連事業が大幅に成長し、2021年度は売上の約2割を占めるまでに至っています。

 今回のマキシム買収には、アナログ・デバイセズにとって製品ポートフォリオのさらなる拡大、アナログ・デバイセズとマキシムがそれぞれ得意としていた市場の開拓といったシナジー効果が期待されています。日本のお客さまに対しても、双方が持っていた製品のクロスセルを進めることにより、より大きな価値が提供できると考えています。

イメージ:シナジー効果

―― アナログ・デバイセズは半導体市場でさらに存在感を高めるために、どのような戦略・方針を打ち出していますか。また、日本のビジネスをどのように発展させていくとお考えですか。

中村 まず、すぐに取り組まなければならないのが製品供給の問題解決です。いま受注している製品を安定供給するにはまだ1年以上かかるというのが現状の見方です。アナログ・デバイセズでは、弊社の成長というよりも、お客さまの成長に貢献していけるようにきちんとサポートしていきます。

 そのうえでマキシムとの統合によるシナジー効果を最大化し、お客さまの課題を解決するためのソリューションを拡大していくことを重要な戦略と位置付けています。これは今後2、3年で非常に大きなインパクトが出せると見ており、日本のお客さまにもその価値を十分に提供していきたいと考えています。

 さらにもう一つ、製品を超えたアプリケーションレベルのイノベーションを加速させていくことです。特に社会に貢献するESG領域のアプリケーションを提供するというビジネスを狙っていく方針です。これは日本法人が日本のお客さまに対して中長期的に取り組むべきだという思いもあり、非常に重要なビジネス展開と位置付けています。

―― 最後に、アナログ・デバイセズの大切なお客さまである日本企業の経営者や事業担当者に向けたメッセージをお願いします。

中村 アナログ・デバイセズが一番得意としているのは、イノベーションを起こす技術力です。日本のお客さまに対して単に製品を提供するのではなく、お客さまの課題を解決するアプリケーションも含むトータルソリューションを提供することで、今後さらにお客さまのビジネスに貢献していきたいと考えています。マキシム統合後の新生アナログ・デバイセズにご期待ください。

写真:中村 勝史 氏

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