マキシム買収がもたらすシナジー効果
―― 2021年8月にマキシム・インテグレーテッド・プロダクツの買収が完了し、新生アナログ・デバイセズがスタートしました。このM&A(合併・買収)により、アナログ・デバイセズのビジネスはどのように変化しましたか。また日本の製造業企業に、どのような新たな価値をもたらしますか。
中村 買収が完了して3カ月が経過しましたが、すでに営業組織の統合を終えており、現在はアナログ・デバイセズの既存のお客さまに対してマキシム製品を提案するなどのエンゲージメントが始まり、非常に活気のある状況です。
アナログ・デバイセズはマキシムに限らず、過去にも多くのM&Aを実施してきましたが、M&A戦略の目的はアナログ・デバイセズがこれまで持っていなかった技術、能力を買収企業から吸収することにあります。例えば2017年3月に米リニアテクノロジーを買収したことにより、アナログ・デバイセズは電源回りの広範な技術を手に入れることができました。これにより電源関連事業が大幅に成長し、2021年度は売上の約2割を占めるまでに至っています。
今回のマキシム買収には、アナログ・デバイセズにとって製品ポートフォリオのさらなる拡大、アナログ・デバイセズとマキシムがそれぞれ得意としていた市場の開拓といったシナジー効果が期待されています。日本のお客さまに対しても、双方が持っていた製品のクロスセルを進めることにより、より大きな価値が提供できると考えています。
―― アナログ・デバイセズは半導体市場でさらに存在感を高めるために、どのような戦略・方針を打ち出していますか。また、日本のビジネスをどのように発展させていくとお考えですか。
中村 まず、すぐに取り組まなければならないのが製品供給の問題解決です。いま受注している製品を安定供給するにはまだ1年以上かかるというのが現状の見方です。アナログ・デバイセズでは、弊社の成長というよりも、お客さまの成長に貢献していけるようにきちんとサポートしていきます。
そのうえでマキシムとの統合によるシナジー効果を最大化し、お客さまの課題を解決するためのソリューションを拡大していくことを重要な戦略と位置付けています。これは今後2、3年で非常に大きなインパクトが出せると見ており、日本のお客さまにもその価値を十分に提供していきたいと考えています。
さらにもう一つ、製品を超えたアプリケーションレベルのイノベーションを加速させていくことです。特に社会に貢献するESG領域のアプリケーションを提供するというビジネスを狙っていく方針です。これは日本法人が日本のお客さまに対して中長期的に取り組むべきだという思いもあり、非常に重要なビジネス展開と位置付けています。
―― 最後に、アナログ・デバイセズの大切なお客さまである日本企業の経営者や事業担当者に向けたメッセージをお願いします。
中村 アナログ・デバイセズが一番得意としているのは、イノベーションを起こす技術力です。日本のお客さまに対して単に製品を提供するのではなく、お客さまの課題を解決するアプリケーションも含むトータルソリューションを提供することで、今後さらにお客さまのビジネスに貢献していきたいと考えています。マキシム統合後の新生アナログ・デバイセズにご期待ください。