働き方改革の成果を把握するためにエンゲージメントスコアを活用する働き方改革の成果を把握するためにエンゲージメントスコアを活用する

提供:アトラエ

2024年に創業220年を迎える清水建設は、日本を代表する建設会社として多くの建造物を手掛け、高い評価を得てきた。その源泉とされるのが人財である。「論語と算盤」を社是に据え、人財を資産と捉えてきた同社では早くから働き方改革に取り組んでいる。現在では全社レベルでエンゲージメントサーベイが実施され、従業員の意識改革に効果的に活用されている。従業員と派遣社員合わせて約1万人もの規模の同社が、どう働き方改革に取り組んでいるのか。同社執行役員 人事部長の村田広氏と東北支店 総務部 人事グループ長の田村亜希子氏に話を聞いた。

働き方改革で実現する「人財のイノベーション」

 「子どもたちに誇れるしごとを。」というコーポレートメッセージを掲げる同社には経営方針の原点とも言える教えがある。それが「論語と算盤」である。同社の相談役だった渋沢栄一氏が唱えた理念であり「道理に適った企業活動によって社会に貢献し、結果として適正な利潤を得て社業を発展させる」という考え方だ。

 道徳と経済を両立させるという理念を実践してきた同社の高品質のものづくりは、常に高い評価を受けてきた。それを支えてきたのが人財である。同社の執行役員 人事部長の村田広氏は「多くの建造物を手掛ける中で、発注者様と約束した期日を守りながら常に良い品質の建造物をつくり上げるには、人と人とのつながりが欠かせません。ものづくりは人づくりから始まるのです」と語る。

 持続可能な未来づくりへ貢献できる「スマートイノベーションカンパニー」を目指す2030年の長期ビジョンでも、「事業構造」「技術」「人財」の3つのイノベーションを融合させることで新たな価値を創造していくと宣言している。この「人財」のイノベーションの中核に位置づけられているのが「働き方改革」である。

 建設業界は、工期の関係もあり労働時間が長くなりがちな労働環境であり、働き方改革は喫緊の経営課題である。建設業界においても、2024年4月から時間外労働の上限規制が適用される。村田氏は「品質や工期遵守など当たり前のことを守り続ける一方で、変えていけるものを見つけて積極的に変革に取り組んできました」と話す。

村田広 氏

清水建設株式会社
執行役員 人事部長
村田広

個人レベルでは意識を変えづらいからこそ
会社が仕組みを提示する

 同社の働き方改革がスタートしたのは2015年のことだ。それはトップメッセージの発信から始まった。「生産体制の最前線である建設現場をはじめとして、環境がそれぞれ異なる職場の働き方を変えていくには、従業員一人ひとりが主体的に考え行動することが必要です。トップの想いを繰り返し伝えることで、個人の意識が変わっていきます」と村田氏はその狙いを話す。

 2018年からは「働き方改革WEEK」を開催。働き方改革につながる活動を取り上げて投票によって表彰する「働き方改革表彰」や、ノー残業デー推進、有識者を招いての講演会などを実施してきた。また、情報提供やインタビューなどを盛り込んだ小冊子の作成・配布や、イントラネットに働き方改革の専用サイトを開設するなど、社内広報にも努めた。そして、エンゲージメントサーベイ「働きがい意識調査」を開始し、2019年には中期経営計画の非財務KPIとして「働きがい指標」を策定した。

 こうした様々な取り組みを支えてきたのが事業部門に所属する100人強の人事担当者たちだ。本社にある人事部と各部門の人事担当者で連携し、人事部が新しい施策を考えて制度を整え、部門の人事担当者が前線で展開する形で役割を分担して働き方改革を推進してきた。

 事業部門の人事担当者である東北支店 総務部 人事グループ長の田村亜希子氏は「建設業界では昔は週休2日が当たり前ではありませんでした。しかし、今では当然になりつつあります。様々な施策に取り組み、トップが年間に何度もメッセージを発信することで、本気度が伝わって従業員一人ひとりの意識は確実に変わってきました」と振り返る。

 現在、同社では働き方改革にさらに拍車をかけている。働き方改革WEEKは昨年から「働き方・働きがい改革月間」に期間を拡大した。村田氏は「1週間のイベントではできることが限られていました。従業員が自律的に取り組むには習慣づけが必要です。今後も『働き方・働きがい改革』に継続的に取り組んでいきます。個人レベルでは意識を変えづらいからこそ、会社が仕組みを提示することが必要なのです」と語る。

田村亜希子 氏

清水建設株式会社
東北支店 総務部 人事グループ長
田村亜希子

全社で毎月実施されるエンゲージメントサーベイ

 年に一度「働きがい意識調査」として実施してきたエンゲージメントサーベイも強化された。もっと頻繁にサーベイを実施して従業員の意識の変化を把握できれば、施策のPDCAサイクルを強化することにつながると考えたからだ。そこで注目したのが手軽に実施できるアトラエのエンゲージメントサーベイ「Wevox」だった。

 Wevoxは2021年4月に横浜支店で先行的に導入された。当時の横浜支店の人事担当者がWevoxの存在を知り、1 on 1と合わせて実施して働きがいと生産性の向上を促そうと考えたのがきっかけだった。その後、本社の人事部が効果的であると判断し、2022年4月からの全社導入が決定した。

 社内で説明会を実施して、5月から2カ月に一度人事部からサーベイを一括配信して実施してきたが、9月からは毎月にサイクルが短縮された。結果の閲覧権限については、従業員は自身のスコアだけでなく、自身が所属する部署のスコアを確認することができる。部門の人事担当者はスコアを分析し、気になった部署や個人をフォローすることに活用しているという。

 田村氏は「最初はどこをどう見ればよいか戸惑うこともありましたが、3~4回で慣れました。今では早ければ1週間程度でフォローまで完了できています」と話す。東北支店での回答数は毎回500~600件で、ヒアリングなどのフォローが必要になるのは10件程度だという。

 「毎月実施すると回答率が下がると予想していましたが、こちらからプッシュしなくても回答率は下がらず8割をキープしています。16問という手軽なアンケートで、従業員に対する負担も少ないからではないでしょうか」と田村氏はWevoxの手軽さを評価する。

Wevoxをツールとして従業員との対話を図る

 Wevoxを導入したメリットについて村田氏は「今まで人事部がボールを投げ、従業員は受け取ることで終わっていましたが、今はサーベイを通じて対話することができます。Wevoxが全社と個人がコミュニケーションを取るためのツールになっているのです。人事部門の改革のためにも活用できます」と指摘する。

 全社の各部署をWevoxという統一されたツールで横断的に実施できることでエンゲージメントという共通の尺度で見ることができるようになった。「事業部門ごとに課題は違いますが、進む方向が一致していることが重要です」(村田氏)。

 こうした仕組みを大きな組織で実施していく上で、部門の人事担当者に期待されていることはきめ細かなフォローである。田村氏は「本社の変革のスピード感と事業部門ではどうしてもタイムラグが生まれてしまいます。そのギャップを埋めるのが人事担当者の役目だと考えています」と話す。

 ただし、サーベイのスコアの受け止め方については慎重な考えだ。「ある程度気をつけている項目はありますが、すべての数値に一喜一憂する必要はないと思います。数値の低下が続くようであれば、きちんとフォローするようにしています」と田村氏。村田氏も「部署長は数値の上下にこだわりすぎずに、自分の考えを浸透させるきっかけにしてほしい」とつけ加える。

 各組織がサーベイ結果を使って自律的に組織開発を行えるよう、研修も実施している。昨年10月から3カ月かけてすべての部署長・副部署長クラスに向けて、サーベイの活用と1 on 1ミーティングの実践に関する研修を行った。

 丸1日をかけた研修プログラムで、約700人の部署長・副部署長が受講完了し、現在は実践を進めている。今年度は、約3500人の管理職に対象範囲を拡大する予定だ。

 「人事部門としてはWevoxを通して客観的なデータを活用できるようになりました。イノベーションのためには深く広く見る目線が重要です。そのための発想の転換ができました」と村田氏。Wevoxは人財を大切にしてきた同社の組織が、さらに成長するための推進エンジンになるのではないだろうか。

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