提供:ベイン・アンド・カンパニー

「結果」にこだわり、日本企業の「フルポテンシャル」を実現 ベイン・アンド・カンパニー 日本代表 デイヴ・マイケルズ氏「結果」にこだわり、日本企業の「フルポテンシャル」を実現 ベイン・アンド・カンパニー 日本代表 デイヴ・マイケルズ氏

今年、日本法人設立から40年の節目を迎える大手グローバルコンサルティング会社、ベイン・アンド・カンパニー。1月から日本代表を務めるのがデイヴ・マイケルズ氏だ。低成長、高齢化、さらにはコロナ禍と、厳しい経営環境に直面する日本企業をどう支援していくのか。企業変革のエキスパートでもあるマイケルズ氏に、戦略コンサルティング会社の提供する価値や今後の事業方針について尋ねた。

強みと弱みはコインの表裏。
「変革力」から浮かび上がる
日本企業の課題

写真:ベイン・アンド・カンパニー 日本代表 デイヴ・マイケルズ氏

ベイン・アンド・カンパニー 
日本代表

デイヴ・マイケルズ

ハーバード大学経営大学院修士課程(MBA)修了。ベイン・アンド・カンパニーで25年以上にわたりオペレーティングモデル、成長戦略、組織効率化、組織変革プログラムなど多岐にわたるプロジェクトに従事。現在は企業変革プラクティスのグローバルリーダーとシニアコーチを務める。学生時代はラグビー選手で、ポジションは司令塔のフライハーフ(スタンドオフ)。50代の新たな挑戦としてサーフィンとドラムの習得に励んでいる。

—欧米、南米、インドなど世界各地でコンサルティングを経験してきた立場から、日本企業の強み、弱みをどう見ていますか。

一般的に日本企業は硬直的で機敏さに欠け、出る杭は打たれる文化があると言われます。しかし個人や国と同じで、企業の強みと弱みはコインの裏表のように表裏一体とも言えます。先に挙げた弱みは、細部へのこだわり、緻密な計画性、高い信頼性や再現力といった強みにつながっています。日本のコーポレートガバナンスは改善傾向にあり、今までイノベーションを起こしてきたというレガシー(伝統)もあり、経営者は自信を持って変革に挑みはじめている。我々は日本企業の潜在能力を信じています。当社はミッションドリブンな組織であり、日本におけるベインの使命は、日本企業が従業員、顧客、そして社会全体のために企業のフルポテンシャルの実現(企業の潜在能力を解き放ち、企業価値を最大化させること)を支援することだと考えています。

—ベイン・アンド・カンパニーはこのほど企業の変革力を測定する指標を開発し、昨年のハーバード・ビジネス・レビューの表紙に取り上げられました。そこでも日本企業の変革力に対する課題や、強みが浮かび上がったようです。

私を含めた当社のチームでは、企業が優れた変革力を発揮するための能力を構成する9つの特性を特定しました。その中には、明確で意義のある「パーパス」を持つこと、革新的なアイデアを組織全体に「拡大」させていくこと、すぐに行動に起こすことができる「柔軟性」のある文化醸成といった各要素が含まれています。それぞれについて従業員が「0~10」のスケールで主観的に評価し、その企業の総合的なスコアを算出したものが「チェンジ・パワー・インデックス」です。その結果、変革力のスコアは、企業業績において非常に強力な自社の変革成功のための予測材料になることがわかりました。

昨年、世界の296社を対象に実施した調査では、グローバルの平均値が7.1であるのに対し、日本企業の平均は5.3。ちなみに米国は6.9、中国は7.9でした。このような調査方式では日本人の謙虚さが影響し、日本企業のスコアが低くなりがちな面も否定できません。しかし9つの特性のなかで、日本企業にはいくつかの共通したパターンが見られます。もちろん同じ企業内でも部門間でスコアに差が出ることもありますが、計画性や完璧性を求めるあまり、スピード感が重視される経営環境に対応することを困難に感じている様子がうかがえます。ただ、容易ではありませんが、こうした弱点は克服できるものです。

協業と結果重視の姿勢、
創業者から受け継ぐ

—日本におけるベイン・アンド・カンパニーの顧客は主にどのような方々でしょうか。

当社は、変革志向を持ったエグゼクティブの方々――限界に挑戦し、社会に大きなインパクトを創造したいと願っているリーダーの皆様――と協働させていただく機会が多くあります。当社では、製造業から消費財、金融サービスといったあらゆる業界において、戦略からオペレーション、企業買収(M&A)等の様々なテーマのコンサルティング活動を行っております。

—日本企業に対してベイン・アンド・カンパニーが提供できる価値とは、どのようなものでしょうか。

私の父は起業家で、冗談交じりに「なぜ多くの企業がコンサルタントの助けを必要としているのか」とよく聞かれることもあり、この質問については常々考えてきました。コンサルティング会社を活用する利点としてよく挙げられるのは、(1)外部の客観的視点を取り入れることで変化を加速できる、(2)国内外の多数の企業と課題解決に取り組むなかで蓄積された知見を得られる、(3)新たなケイパビリティ(能力)を習得できることです。

それに加えてクライアントのフィードバックを見ると、当社ならではの強みが3つ浮かびあがります。1つめは経営者としてのマインドセットをもっていること、すなわち単にクライアントのプロジェクトを引き受けるのではなく、経営者と同じ視点で企業価値を最大化させる方法を考え、行動する姿勢です。ここには当社がいち早く、プライベートエクイティ(PE、未公開株投資)会社にコンサルティングを提供しはじめたことが影響しています。PEは企業価値を高める方法を常に考えており、ともに仕事をするなかで同じ発想が当社にも根づいたのでしょう。私もクライアントとの対話で、「明日PEファンドがあなたの会社を買収したら、彼らはどのような手を打つと思いますか」という思考実験をしていただくことがあります。

2つめは独自の協業モデルです。当社ではクライアントの幹部層だけで仕事を進めるのではなく、組織のあらゆる階層で協力関係を築きます。クライアントの変化を持続性のあるものにするには、そのような協業が不可欠だからです。顧客ロイヤルティの高さを示すネット・プロモーター・スコア(NPS)で、当社が長年コンサルティング業界のトップを維持しているのもこのためでしょう。

3つめはこよなく結果を重視する姿勢です。当社は1973年、ボストン コンサルティング グループのコンサルタントだったビル・ベインが「レポート(報告書)よりリザルト(結果)を」という理念を掲げて創業しました。優れたアイデアを盛り込んだ報告書が、たなざらしになっては意味がありません。クライアントから「ベインのコンサルタントは起業家のようだ」というお言葉をいただくことが多いのは、プラグマティック(現実的)で結果にこだわり、クライアントの行動につながるまでは満足しない創業者のDNAが受け継がれているためでしょう。

外部パートナーとの
連携強化。
変化する環境で
最善のサービスを

写真:デイヴ・マイケルズ氏

—今後はどのような分野に力を注いでいくのでしょうか。

日本企業は、組織のさらなる効率化、デジタル化、サステイナビリティの強化、アジャイル化、世界市場における競争力の向上といった、さまざまな変革の必要性に迫られています。こうしたニーズにお応えするため、最重要課題は5つあります。

まずはクライアントのESG(環境・社会・企業統治)戦略、そしてサステイナビリティへの取り組みを支援することです。いかなる企業も逃れることのできない、そして多大な機会が存在する領域です。2つめはイノベーション。成長を加速するために社内で新規事業を育成する方法、アナリティクス(最新の分析ツール)の活用法、組織として機敏さやデザイン思考を身につける方法などを提案していきます。3つめはグローバルで蓄積された専門知識と日本市場から得られた知見の融合、すなわち日本のベストを世界のベストと結びつけていきます。業界やケイパビリティをまたいで、グローバルで得られた専門知識による深い知見を活用し、日本企業のフルポテンシャル実現のために最適な支援を提供しています。

4つめは当社自体のダイバーシティ(多様性)の推進と、優秀な人材を採用し、グローバルに活躍するチームを強化することです。東京オフィスはここ4年でパートナーの数を3倍に増やすなど、戦略的に重要な市場である日本での陣容を著しく強化してきました。言語や国籍、ジェンダー、学歴、経験などあらゆる面で多様性を大切にしていきます。グローバルではGlassdoorの「働きやすい企業ランキング」で継続して上位に選ばれており、日本でもOpenWorkの企業総合評価で第一位を獲得しています。これは当社にとって誇りであり、こうした評価を継続して得られるように今後も一層努力してまいります。

最後にコミュニティとの関係強化です。社会的使命を起点に考え、行動する組織として、非営利組織などこれまで以上に幅広いクライアントにコンサルティングをお届けしていきます。また環境の変化は激しく、クライアントに最善のサービスを提供するにはそれにふさわしいエコシステムを構築する必要があります。前代表の奥野慎太郎が、今後は日本法人会長としてこれらの活動を推進していくとともに、デジタルマーケティングなど当社を補完するような専門能力を有する外部パートナーとの連携に積極的に取り組んでいきます。

—クライアントを取り巻く環境変化に合わせて、ベイン・アンド・カンパニーも変化していく、と。

クライアントのコンサルティング会社に対する期待は急速に変化し、求められるサービスの幅も広がっています。かつては主に戦略課題への解決策を求められることが多くありましたが、組織に大きな変化を起こすためにはそれだけでは足りません。このためここ10年、当社は企業変革やリーダーシップの分野に投資してきました。組織は人でできています。変化するのは組織ではなく、人なのです。人には感情や認知バイアスがあり、一般的に変化を嫌います。従業員とともにどう変化していくべきか、クライアントと一体となって考えてまいります。

日本代表に就任する際、日本人ではない私で良いのか悩みましたが、2019年のラグビー・ワールドカップの際、家族とともに「下見」を兼ねて来日し、清潔で安全で秩序ある側面と、深みと独自性のある文化を併せ持つ日本に魅了されました。さまざまな国で日本企業と同じ課題に悩むクライアントと接してきた経験を生かし、東京オフィスのパートナーとともに、日本のクライアント企業が秘めた潜在能力を解き放ち、フルポテンシャルを実現できるようにご支援できることを楽しみにしています。

写真:デイヴ・マイケルズ氏

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