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2016年12月の『押さえておきたい良書

歯はみがいてはいけない

なぜ毎食後に歯みがきをしても虫歯になるのか?

『歯はみがいてはいけない』
森 昭 著
講談社(講談社+α新書)
2016/08 192p 840円(税別)

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 「虫歯になってしまった……」
 そんなとき、「歯みがきが足りなかったのかな」と反省する人が多いのではないだろうか。「食事が終わったら、歯ブラシに歯みがき剤をつけてしっかり歯をみがかないと、口内に雑菌が繁殖して虫歯になる」と、大半の日本人が常識のように思っていることだろう。
 しかし本書『歯はみがいてはいけない』では、私たちが常識と考える“歯みがき”は虫歯予防にはきわめて効果が薄いと指摘。かえって歯を痛めるなど、逆効果にもなるという。京都の竹屋町森歯科クリニックの院長を務める現役の歯科医師である著者が、歯の健康を守る方法として提案するのは、主にデンタルフロス(細い糸状の部位で歯と歯の間を掃除する器具)を用いた「予防歯科(虫歯や歯周病などになってから治療するのではなく、ならないように予防する歯科医療)」である。

「食べかすとり歯みがき」が知覚過敏の原因に

 食後に歯みがき剤をつけた歯ブラシで歯をゴシゴシとみがく、といった行為は著者によれば、歯についた食べかすを取るだけの「食べかすとり歯みがき」に過ぎない。それでは虫歯を予防するどころか、歯を削り、神経を傷つける危険があるという。

“多くの方は、歯みがきのときにしみるような痛みを感じると、「虫歯かもしれない」「歯みがきが足りないのかもしれない」と考えて、食後にさらにしっかりと「食べかすとり歯みがき」をし始め、歯はますます削られていきます。研磨剤入りの歯磨剤(歯みがき剤)を使えば、いっそう歯の削られる量が増えます。まじめな方ほど、こういう悪循環にハマります。このようにして、30歳以上の日本人のほとんどが、知覚過敏や楔状欠損(注:歯の根元が楔状にえぐれること)を経験しています。”(『歯はみがいてはいけない』p.31より)

 また、糖質を含む食事をすると、口の中は酸性に傾く。そうすると、歯の表面のカルシウムやリンが溶け出すので、歯が柔らかくなる。つまり、歯をゴシゴシみがくことで傷つきやすい状態になるのだ。口中の唾液には、柔らかくなった歯を再石灰化し、元の硬さを取り戻させる働きがある。ところが歯をみがき口をすすぐことによって、唾液は吐き出されてしまう。

歯みがきではなく“プラークコントロール”が歯を守る

 著者は歯の健康を保つ最良の方法として“プラークコントロール”を推奨している。プラーク(歯垢)は歯に付着した細菌であり、虫歯や歯周病の原因になる。多くの日本人が習慣にしている「食べかすとり歯みがき」だけでは、プラークを除去(プラークコントロール)できないという。デンタルフロス・歯間ブラシなどを用いて「歯と歯の間」や「歯の付け根」を掃除しなければならない。デンタルフロスによるプラーク除去については、著者自身は毎日4回(起床後・朝食後・昼食後・寝る前)行っているそうだ。さらに著者は、3~4カ月に1回、歯科衛生士によるプロフェッショナルな口腔ケアも受けている。
 プラークは糖尿病や高血圧、心筋梗塞、脳梗塞などの全身病の原因にもなりかねない、と著者は警鐘を鳴らす。プラークコントロールは歯を丈夫に保つためのものだけではないのだ。(担当:情報工場 宮﨑雄)

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2016年12月のブックレビュー

情報工場 読書人ウェブ 三省堂書店