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2017年1月の『押さえておきたい良書

「言葉にできる」は武器になる。

コミュニケーションの悩みを解消する「内なる言葉」

『「言葉にできる」は武器になる。』
梅田 悟司 著
日本経済新聞出版社
2016/08 256p  1,500円(税別)

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 ほぼすべての業種・職種のビジネスパーソンにとって、「言葉」を上手に操れるコミュニケーションスキルは、頼もしい「武器」になる。日常生活でも物事を円滑に進め、人間関係を維持するうえで言葉が重要であることは言をまたない。しかし、その言葉を、それが母語の日本語であっても、うまく伝えられないと悩む人は多いのではないだろうか。
 本書『「言葉にできる」は武器になる。』は、「自分の意図が相手にどうも伝わっていないようだ」「納得してもらえる説明ができない」「誤解されがちだ」などの問題を根本から解決するメソッドを紹介している。それは、「内なる言葉」の鍛錬だ。話したり、書いたり、パソコンやスマホに入力したりといった「外に向かう言葉」に対し、内なる言葉は、頭の中で考えたり、胸の内で感じたりするときの言葉。後者を磨くことで、前者に重みと深みが出るのだという。
 著者は大手広告会社のコピーライター兼コンセプター。ジョージア(缶コーヒー)「世界は誰かの仕事でできている。」、タウンワーク(アルバイト求人情報サービス)「バイトするなら、タウンワーク。」などの作品を手がけ、カンヌ広告賞をはじめとする国内外30以上の賞を受けている。

思考と感情を書き出し、その解像度を上げる

 具体的にどうやって、内なる言葉を鍛えていくか。著者自身が実践しているのが、紙を用意してそこに自分の考えていること、感じたことを書き出していくというきわめてシンプルな方法だ。そして、書き出された言葉の「解像度」を上げていく。例えば「うれしい」「悲しい」といった言葉は漠然としている。つまり解像度が低い。スマホなどで解像度が低い画像は、ぼんやりとして細部が分からない。それと同じだ。それらを「本当はどういう感情なのか」を探って言葉にしてみることで解像度が上がっていく。

“(1)思考を漠然としたものでなく、内なる言葉と捉える。
(2)内なる言葉を、俯瞰した目線で観察する。
(3)そして、考えを進めることに集中し、内なる言葉の解像度を上げる。
 これが、私が思考を深めるために行っている方法である。
 この方法は、今自分が抱えている具体的な問題や不安を想定しながら読み進めていくと、分かりやすい。
 例えば、就職活動での「一体自分はどのような仕事を行いたいと思っているか」であったり、クライアントへの提案内容。さらには、自分はどういう人間なのかといった自分探しでもいいだろう。”(『「言葉にできる」は武器になる。』p.72-73より)

オリジナルな言葉を「外に向かう言葉」にできる

 著者は、上記のメソッドをA4サイズの紙を横置きにして横書きで、1枚につき一つずつ、頭に浮かんだこと、感じたことを書いていくことを勧めている。書き出したら、一つひとつに対し「なぜ?」「それで?」「本当に?」という三つの質問をする。そしてその答えをまた書いていく。それが終わったら、紙を並べ替えたり、グループ分けをして整理する。
 この作業を習慣化することで、奥深いオリジナルな言葉を、外に向かう言葉にできるようになるという。本書では、磨かれた内なる言葉を効果的に外に出すテクニックも紹介されている。
 そうすれば、就職活動の面接やエントリーシートでの言葉も、マニュアル通りではない、人格を感じさせるものになるだろう。内なる言葉をもとにした外に向かう言葉は、相手の心に響くものになりうるのだ。(担当:情報工場 吉川清史)

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2017年1月のブックレビュー

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