2017年2月の『押さえておきたい良書』
現代は会話力がものをいう時代といえる。面と向かって言葉をかわすだけでなく、電話、メール、SNSなど、会話をする機会が格段に増えているからだ。
会話は、人生のさまざまな場面において重要な役割を果たしている。ビジネスでは上司や部下、同僚、取引先などとの円滑な会話が、人間関係をよくしたり、ミスを減らす機能を果たす。何気ない会話から新しいアイデアが生まれたりもする。
では、会話力を身につけるにはどうしたらよいだろうか。学校では教えてくれない。自分自身の感覚や経験だけを頼りに会話をしている人がほとんどだろう。
本書『すごい「会話力」』は、会話をするときの身体の姿勢、偉人の言葉をスマートに引用する方法など、多岐にわたる会話力向上の具体的ノウハウを紹介している。著者は明治大学文学部教授で、教育学、身体論、コミュニケーション論を専門としている。ベストセラー『声に出して読みたい日本語』シリーズ(草思社文庫)など、言葉に関する多数の著書があり、テレビ出演などメディアへの露出も多い。
心と身体をオープンにして相手と向き合う
著者は、会話力の基盤に「自分をオープンにする」ことがあるとしている。オープンな姿勢で会話に臨めば、相手と情を通い合わせやすくなる。話し手がオープンでない、すなわち心と身体が硬い状態だと、聞き手の態度もぎこちなくなる。
著者は会話の準備として心と体の両者をオープンにする、次のような方法を紹介している。それは息を吐きながら軽くジャンプして全身をほぐしてから、「へその下に勇気をためるイメージ」を脳裏に浮かべるというものだ。
また、会話が始まってからは、へそや胸を意識して相手の側に向けておくことをすすめている。会社のデスクなどで横にいる人と話すときに、つい首だけを相手に向けがちだが、体全体を相手の前に向けるだけでも、相手に与える印象は大きく変わってくるそうだ。
会話のネタを効率的に仕入れる方法
会話にはさまざまな目的があるだろうが、たとえたわいのない雑談であっても、そこには「情報のやり取り」が発生する。したがって、良い情報をたくさんもち、それを相手に与えられれば、会話が豊かになる。そこで著者は、勤務する大学で、学生たちに次のようなトレーニングをすすめているそうだ。
聞くほうは、自分が持ってきた本ですからどんなことが書いてあるのかはよく知っている。その相手に向けてざっと説明するのです。”(『すごい「会話力」』p.96より)
著者によれば、要約して人にしゃべることを意識しながら読むと、5分程度の飛ばし読みでも頭に残りやすい。このトレーニングを繰り返すことで、会話に使える知識を効率よく仕入れられ、良い情報を与えられるようになるという。(担当:情報工場 宮﨑雄)