2017年7月の『押さえておきたい良書』
普段、ビジネススーツに合わせて履く「靴」に、どれだけこだわりを持っているだろうか。どんな意識で選び、履き分け、手入れをしているだろうか。自信を持って語れる人はあまり多くないかもしれない。しかし、本書『一流の人はなぜそこまで、靴にこだわるのか?』によれば、靴には履く人の人間性やビジネスに対する姿勢が表れるものだという。靴に無頓着なことで、正当な評価を受けられないおそれもある。
本書は、靴、とくにフォーマルな紳士靴にまつわる知識とノウハウが凝縮された一冊だ。基本のスタイルやデザイン、選び方・履き方、メンテナンス方法などを網羅しており、それらを実践することで、一目置かれるビジネスマンへの第一歩を踏み出せる。また、ビジネスマンの足元の観察から、その資質や人柄を見抜くコツも学べる。
著者は渡辺産業株式会社の代表取締役。同社は50年以上の歴史を誇る、英国ブランド専門のアパレル輸入代理店だ。
上質な一足を手入れしながら大事に履き続けるべき
著者は一流のビジネスマンを「相手と長期的な信頼関係を築ける人」と定義している。そういう人たちは、著者の目から見て、たいてい「いい靴」を履いているという。といっても、単に高価であるという基準だけではない。自分に合った上質な一足を見つけ、手入れをして大切に履き続けているのだ。
そんな靴に対する姿勢は、その靴を見る人に、一つのものを大切にする、誠実で実直な人柄があり、それがビジネスに対する姿勢でもあると感じさせられる。また、メンテナンスを面倒がらず、きっちり行えるのは、マネジメント能力がある証拠にもなるだろう。
ちなみに元英国首相のトニー・ブレア氏は、首相就任前に老舗メーカー「チャーチ」で購入した上質な靴を18年間大切に履き続けたそうだ。
何度も靴底を交換できる「グッドイヤーウェルト製法」
著者は、靴を選ぶ際には、とくにアウトソール(地面に触れる靴底)に目を向けるべきだと主張している。アッパー(表部分)と比較して意識されづらいが、履き心地と靴の寿命に大きく影響するのだそうだ。
また、長く履きたい靴を選ぶコツの一つに、「製法に注目する」というものがあるという。靴は欠かさず定期的に手入れをしていたとしても、底がすり減るなどの経年劣化は避けられない。そこで、修理やパーツの交換が簡単にできる製法かどうかを気にすべきだ、という。
とくに著者が勧めるのは「グッドイヤーウェルト製法」で作られた靴。この製法では、アッパーとアウトソールを、ウェルトという細い革を間に挟んで間接的に縫い合わせてある。そのため、アッパーを傷つけることなくアウトソールを何度も交換できる。さらに、靴内部にコルクのクッション材が入っているため、履き心地に安定感が出る。
著者によると、信頼のおけるビジネスマンの足元は、グッドイヤーウェルト製法の靴であることが多いそうだ。(担当:情報工場 宮﨑雄)