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2017年12月の『押さえておきたい良書

『超「姿勢」力』

あなたのその不調、「猫背」が原因かも

『超「姿勢」力』
ZERO GYM 著
重森 健太 監修
クロスメディア・パブリッシング
2017/10 189p 1,380円(税別)

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 あなたは仕事に取り組む自分の「姿勢」に自信があるだろうか。いや、心構えや意欲など精神面を言っているわけではない。文字通り、デスクに向かって座っている時などの「体の構え」の話だ。

 そう問われたとたん、背筋をしゃんと伸ばした人も多いのではないだろうか。本書『超「姿勢」力』によると、背中が丸まった、いわゆる「猫背」になりがちなビジネスパーソンが急増している。パソコンやスマートフォンの長時間の使用が原因と考えられる。

 「たかが猫背」と侮るなかれ。猫背は想像以上に深刻なダメージを体に与える。当然、仕事のパフォーマンスにも影響する。

 本書は、姿勢が心身に及ぼす作用について、科学的な知見を交えて解説。その上で、猫背を治す4週間のトレーニングプログラムを紹介している。

 同プログラムは東京・千駄ヶ谷にあるビジネスパーソンのための疲労回復専用ジム、ZERO GYMが開発したものであり、同所で体験できる。理学療法士でもある関西福祉科学大学の重森健太教授(専門は地域理学療法学、早期認知症学、トレーニング科学)監修のもと、ZERO GYMが著したのが本書である。

正しい姿勢と呼吸は同じ筋肉を使う

 猫背の最大の問題は「正しく呼吸する力」が衰えることだ。下記引用のように、背筋を伸ばした姿勢の維持と呼吸は、じつは同じ筋肉を使っている。

“姿勢と呼吸をひもとくカギは、腹横筋と脊柱起立筋にある。ともに正しい姿勢をキープするのに欠かせない筋肉だが、じつは呼吸にも深く関連している。
 腹横筋は息を吐き切るときに働く「呼息筋」、脊柱起立筋は収縮することで胸郭を広げ、多量の空気を取り込む「吸息筋」として機能する。”(『超「姿勢」力』p.128より)

 腹横筋(ふくおうきん)とは脇腹にある筋肉の一つ。脊柱起立筋(せきちゅうきりつきん)は背中の中心部を縦に走る筋肉だ。とくに腹横筋が緩んでいると、肺の中の空気を吐き切れない。そうすると、次に息を吸う時に肺の中の空気を入れるスペースが小さくなる。そうすると浅い呼吸を繰り返さざるを得なくなるのだ。

 私たちの体を形成する細胞は、酸素を使ってエネルギーを生み出している。だが、浅い呼吸が続くと十分な酸素が細胞に行き渡らない。それが、疲労や眠気、頭痛といった不調の原因になる。

背筋を伸ばすとストレスが25%減に

 体だけではない。姿勢は「心」にも影響を及ぼす。これは科学的にも実証されており、本書ではハーバード大学のエイミー・カディ准教授らが行った以下の実験が紹介されている。

 被験者を2つのグループに分け、一方のメンバーには全員背筋をきちんと伸ばさせる。他方のグループの全員には背中を丸めた猫背の姿勢をとってもらう。2分後、それぞれのグループの被験者の唾液を調べ、ストレスホルモンであるコルチゾールの値を計測する。

 その結果、前者はコルチゾール値が25%減り、後者は15%増加したという。猫背の解消にはストレスを減らす効果が大いに期待できるのだ。

 猫背がクセになっている人は、たとえ意識して背筋を伸ばしたとしても、いつの間にかまた背中が丸まってきてしまうものだ。どうすれば自然と背筋が伸びるのだろうか。

 本書で紹介されている猫背矯正トレーニングは「ブリッジ」ができるようになるのを目指す。あおむけから手足を踏ん張り、体を弓なりに持ち上げるあのポーズである。

 最近、どうも仕事のパフォーマンスが上がらない、疲れやすい、といった人は、本書を読んで姿勢との関係を疑ってみてはどうだろう。実際のトレーニング方法も写真付きで解説されているので、試してみるのもおすすめだ。

情報工場 エディター 安藤 奈々

情報工場 エディター 安藤 奈々

神奈川生まれ千葉育ち。早稲田大学第一文学部卒。翻訳会社でコーディネーターとして勤務した後、出版業界紙で広告営業および作家への取材・原稿執筆に従事。情報工場では主に女性向けコンテンツのライティング・編集を担当。1年半の育休から2017年4月に復帰。プライベートでは小説をよく読む。好きな作家は三浦しをん、梨木香歩、綿矢りさなど。ダッシュする喜びに目覚めた娘を追いかけ、疲弊する日々を送っている。

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2017年12月のブックレビュー

情報工場 読書人ウェブ 三省堂書店