2018年2月の『押さえておきたい良書』
グーグルをはじめとするグローバル企業が社員の研修プログラムに取り入れるなど、ここ数年来、「マインドフルネス」をはじめとする瞑想(めいそう)がメインのメンタルトレーニングが流行しているようだ。
マインドフルネスは仏教の瞑想法をアレンジしたものだが、同様に「気づき」が得られ、集中力や創造力を高められるとされる手法の1つに「ジャーナリング」がある。本書『「手で書くこと」が知性を引き出す』では、その効用や具体的な実践法について専門家が詳しく解説している。
ジャーナリングは、一言でいえば「あるテーマについて決まった時間ずっと書き続ける」エクササイズだ。「書く瞑想」とも称され、最近になって注目を集めつつある。
著者はドリームコーチ・ドットコム代表取締役で、一般社団法人マインドフルリーダーシップインスティテュート(MiLI)の理事を務める。リーダーシップやマネジメントに関するコーチングやセミナー、講演などを活発に行っている。
最低5分、何でもいいから「とにかく書く」
著者によれば、ジャーナリングに最適なのは芯が柔らかめの鉛筆と、白紙かケイ線のみのシンプルなノートだという。これらを使い、あるテーマについて5分から20分間ほど手を動かして書く。その際、次に引用する各点に留意する。
(2)脚色せず事実をあるがままに書く
(3)(他人の目を気にする必要はないので)気持ちをあるがままに書く
(4)文法や文章、文字の誤りなどは気にせずに自由に書く
(5)リラックスでき、かつ集中して取り組める空間を整える”(『「手で書くこと」が知性を引き出す』p.45より)
テーマは原則自由だ。自分の書きたいことを書くのが良いそうだが、「何を書いていいかさっぱり分からない」という人に向けて本書では、「ドラえもんのポケットを持って1年間生きられるとしたら」など、いくつかの例題を挙げている。
無意識領域から現れる言葉が「本来の自分」
ジャーナリングでひたすら手を動かし続けていくと、次第に心の深層にある無意識の領域から自然に言葉が湧き出てくるようになるという。あたかも自分で書いたのではないような感覚が得られるそれらの言葉は、「自分は心の底でこんなふうに考え、感じていたのか」という「本来の自分」への気づきを与えてくれる。
そうした気づきや集中は、創造性を高め、パフォーマンスを向上させるのみならず、コミュニケーションや人間関係の改善にも功を奏するのだそうだ。本書によれば、過去の傷やトラウマから立ち直るのにジャーナリングが活用されるケースもある。
本書の後半には24のジャーナリングワークが例示され、実際に書き込めるスペースも用意されている。ぜひ試してほしい。
情報工場 エディター 安藤 奈々
神奈川生まれ千葉育ち。早稲田大学第一文学部卒。翻訳会社でコーディネーターとして勤務した後、出版業界紙で広告営業および作家への取材・原稿執筆に従事。情報工場では主に女性向けコンテンツのライティング・編集を担当。1年半の育休から2017年4月に復帰。プライベートでは小説をよく読む。好きな作家は三浦しをん、梨木香歩、綿矢りさなど。ダッシュする喜びに目覚めた娘を追いかけ、疲弊する日々を送っている。