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今月の『押さえておきたい良書

『ネガポジ反転で人生が楽になる』

エド・はるみのどん底経験から導き出された、ネガティブ感情を吹っ飛ばす方法

『ネガポジ反転で人生が楽になる』
エド・はるみ 著
日経BP社
2018/10 184p 1,400円(税別)

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 あなたは物事をいつもポジティブに捉えられるだろうか。それとも、ついつい悪いほうへネガティブに考えてしまうタイプだろうか。もし「私は性格的にネガティブだから……」と思い込んでいるなら、本書『ネガポジ反転で人生が楽になる』をおすすめしたい。

 著者は、2008年に持ちネタ「グ~!」で流行語大賞を受賞した芸人のエド・はるみ氏。ブレイク後は「一発屋」と称され、事実ではないネットの記事や週刊誌の誹謗(ひぼう)中傷記事で追いつめられたという。そんな「どん底の日々」の中、自分を苦しめる「世間」や「社会」とは一体どういうものなのかを考えるに至った。改めて広い視野で社会を捉え直し、自身の思いを発信していくために、慶應義塾大学大学院に入学。本書は、そうした彼女の研究成果が結実したものだ。

豊富な具体例を通してネガポジ反転を実践する

 本書では、日常で感じるネガティブな感情をポジティブに反転させることを「ネガポジ反転」と呼ぶ。そして、一見ネガティブとしか捉えられない状況でも、いかに考え、どう行動すればネガポジ反転を実践できるかを、具体的な事例を交えて解説している。

 例えば、「職場に、一方的に変な噂や悪口を流す人がおり、身に覚えのないことを言われ困っている」というケース。著者は「自分を見直すきっかけをくれているのかもしれない」と前置きし、その当人に直接「変な噂を聞いたんだけど、その話、もう少し詳しく聞かせてくれない?」と思いきって話しかけることを提案する。人生どう転ぶか分からない、それがきっかけで、無二の親友になるかもしれない、とさえ言う。

 実は、私の職場にも思い当たるような人がいる。私も今度勇気を出して話しかけてみようかなという気になってくる。

 ただ、理屈では「こうしたらいい」と分かっていても、実際にはどうしても踏み出せないこともあるのではないか。だが、そんなときこそネガポジ反転の出番であり、本書が提示する「1ミリでも動く」ことから始めればいいのだ。「1ミリ」とハードルを下げておけば行動しやすくなる。ともかく動き始めさえすれば、予想より多く動くこともできるだろうし、成功体験が積み重ねられ、おのずとやる気が出てくるだろう。先の例で言うと、「噂を流す当人について周りの人に話を聞く」「まずは簡単な挨拶を交わす」などの準備をして1つずつ段階を踏んでゆけば、思い描く目標に到達することが可能になるだろう。

 どちらかと言えば私は物事をネガティブに捉えがちな人間だ。だが、ネガポジ反転という言葉を知ったことで、どのような状況にもポジティブな面を見つけられるのだという気づきを得ることができた。

 著者は「多くの人々が、より優しい気持ちと笑顔で、共に助け合って生きていける社会」を目指しているのだという。ネガポジ反転を繰り返せば、その考え方は体になじんでくるように感じる。そういう人が増えれば、きっと著者の目指す社会も夢ではないだろう。

情報工場 エディター 山田 周平

情報工場 エディター 山田 周平

埼玉県出身。早稲田大学第一文学部卒。学生時代はラジオ・雑誌投稿、大喜利コンテスト参加など笑いの道を追求する。現在は内外図書・雑誌の販売業および輸出入業、学術情報提供サービス業、出版業を展開する会社に勤務し、学術雑誌の編集に携わる。趣味は読書、映画鑑賞。好きな作家は色川武大、筒井康隆、川上弘美など。

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