今月の特選

When 完璧なタイミングを科学する

『When 完璧なタイミングを科学する』

  • ダニエル・ピンク 著 勝間 和代 訳
  • 講談社
  • 2018/09 322p 2,376円(税込)

新年の目標は何度でも仕切り直せる タイミングと行動の深い関係

 新年を迎えるにあたり、何らかの目標を立てた人も多いだろう。本書『When 完璧なタイミングを科学する』で紹介されている研究によると、「ダイエット」の検索数は元日に急増するらしい。普通の日と比べるとなんと80%増。身に覚えのある人もいるのではないだろうか。

 この事象を単に“正月あるある”で終わらせてはいけない。元日に限らず、こうした「スタート」のタイミングは私たちのモチベーションを高め、その後の行動を決定する。そして、このタイミングを意識してコントロールすることで、目標までの道のりが明確になりやすくなる――本書はこのように述べ、人間の行動を「いつ(When)」という時間的な視点で科学的に考察している。著者はベストセラー『モチベーション3.0』のダニエル・ピンク氏。

再スタートが切れるチャンスは年に86回

 冒頭のような元日にモチベーションが高まる効果は、「時間的ランドマーク」効果とも呼ばれる。ランドマークとは目印のこと。このランドマークには、月の初め・週の初め・国民の祝日など、誰もが知る「社会的ランドマーク」、そして誕生日や転職初日などの「個人的ランドマーク」がある。

 注目すべきは、こうした時間的ランドマークが私たちの「人生の全体像をとらえる」タイミングとなっている点だ。本書の言葉を使えば「木から振り落とされ、森を見る」チャンスだ。このとき、思考は普段よりも深くなり、人生を俯瞰(ふかん)して熟考することができる。さらに過去を振り返り、軌道修正することができる。そして目標がクリアになるとともに自信が再起動され、達成のためのモチベーションが高まるのだ。

 ということは、物事が停滞したり、継続できなくなったりしたときは、この時間的ランドマークを意識して活用するのがいい。何かをスタートする、あるいは再スタートするのに有効な日は、先に挙げた日のほかに、宗教的に重要な休日、結婚や離婚記念日、卒業や休暇空けの翌日などが挙げられる(本書の読了日もランドマークになるという)。著者によれば、その数は1年間で86日も存在する。

ひらめき仕事をするならば夕方がよい

 人間の1日のパフォーマンスにはリズムがある、という研究結果も興味深い。著者によれば、多くの人の場合、1日の中でパフォーマンスが上がるタイミングは2回。午前中と、午後の遅い時間だ。1回目の午前中のピークではとくに分析的思考が高まり、2回目のピークは洞察的、つまりひらめき思考が高まるという。

 上記のリズムとは異なるタイプも存在するが、見分け方は本書に掲載されている。自分のタイプを知り、パフォーマンスのリズムを把握しておけば、時間帯と適切な仕事とのマッチングを試みることができるだろう。きっと仕事の効率が上がり、成果につながっていくに違いない。

When 完璧なタイミングを科学する

『When 完璧なタイミングを科学する』

  • ダニエル・ピンク 著 勝間 和代 訳
  • 講談社
  • 2018/09 322p 2,376円(税込)
安藤 奈々

情報工場 エディター 安藤 奈々

情報工場エディター。8万人超のビジネスパーソンに良質な「ひらめき」を提供する書籍ダイジェストサービス「SERENDIP」編集部のエディター。早大卒。

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