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今月の特選

1億稼ぐ子どもの育て方

『1億稼ぐ子どもの育て方』

  • 午堂 登紀雄 著
  • 主婦の友社
  • 2019/02 231p 1,404円(税込)

起業家の育児書 「1億円稼ぐ」にこだわる理由

 タイトルを見て、多額なお金を得ることが目的なのかと思う人もいるかもしれない。しかし、本書『1億稼ぐ子どもの育て方』のメッセージはそうではない。重要なのは収入ではなく、稼ぐ土台となる能力の方だという。

 稼げる能力とは「人生を切り拓く力」だ。生きるうえでの本質的なその能力を、どのように培っていけばいいのか。本書は今、成功している人物の子育て方法や各国の教育プログラム、自らの子育て体験を引き比べながら、その答えを探っている。著者はビジネス書のヒット作を多数手がけている起業家兼個人投資家。

 それにしても著者はなぜ1億円にこだわるのか。理由は2つある。一部の例外を除いて、「年収1億」は普通の会社員では達成することが難しい。そのため1億円を目指せば自分で事業を起こして成長させなければならない。つまりそれほどの意欲や姿勢――「起業家精神」が必要になる。

 起業家精神とは、人間の本性に根ざした知的好奇心だと著者は説く。市場が成熟しモノがあふれ、今後AIやロボットの台頭が予想される現代社会では、人間にしかできない新しい価値を創造することが必要だ。そこで「課題を自ら発見し、未知のことに挑戦する」という知的好奇心こそが重要になってくるのである。

 また、1億とは、自分が「好きな仕事」をしていなければ到達できない金額だ。好きなことを仕事にすれば没頭でき、新しい挑戦にも積極的に向かうことができる。1億円を目指して夢中になることは、やりがいや充足感といった「幸せを手に入れる力」にもつながるのだ。

子どもを家族旅行のコンダクターに

 では具体的に、子どもの「1億円稼ぐ能力」を養うためにはどうすればいいのだろうか? 1つには「判断軸を磨く」ということがある。正解のない未知の状況に直面したとき、知識や経験を応用して自分で判断し決めさせるのだ。

 例えば、家族旅行の計画を、予算と日程だけ与えて子どもに任せてみる。行き先、交通手段、宿泊先の選定、旅行先をめぐる順序をすべて企画させ、チケットの手配から当日のガイドも子どもにやらせるのだ。このように、家庭の中でイニシアチブをとる経験を積ませることが起業家に必要な自立心や責任感を育むという。実際この方法は、起業家を養成するアタッカーズ・ビジネススクールの大前研一氏などが活用しているそうだ。

 「宿題やテストの成績にごほうびはいらない」「安易にほめない」という指摘も興味深い。承認や報酬をゴールにしてしまうと、結局は指示待ち人間になってしまい、子どもの内発的な知的好奇心を妨げるという。親が子どもにすべきことは「評価」ではなく、「共感」。描いた絵を持ってきたときには「じょうずだね」ではなく、「どこが気に入っているの?」と子どもの価値観に寄り添うことが大切なのだ。

 著者は最後に、親の「当たり前」に触れている。他者との関わり方、物の見方、ふるまい……親の当たり前はそのまま子どもに相続される。育てることは、自分の価値観を改めて見直すことでもあるのだろう。子育て中の親はもちろん、ビジネスパーソンにも気づきの多い1冊だ。

1億稼ぐ子どもの育て方

『1億稼ぐ子どもの育て方』

  • 午堂 登紀雄 著
  • 主婦の友社
  • 2019/02 231p 1,404円(税込)
皆本 類

情報工場 エディター 皆本 類

熊本県出身、早稲田大学教育学部卒業。テレビ情報誌を発行する出版社勤務を経て、独立。女性誌のインタビューから経済誌の書評欄まで、幅広いテーマの取材・執筆に携わる。近年は、広告・PRプランナーとして消費者インサイトの発掘や地方若者議会の「広報力養成講座」の講師も。2018年に出産し、一児の母になる。

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