今やネットからあらゆる情報が入手できる時代だ。しかし、ネットの情報にはフェイクニュースもあり、どこの誰が発信しているのかもわからないものも多い。
だが新聞は発信者という「出所」が明示され、かつ何のために発信されるのかという「目的」が明確だ。しかも客観的な裏づけである「数値情報」を伴う。信頼性の高い情報、つまり「インテリジェンス」として読むことができる。
本書『入社前から先取り! 日経新聞の読み方・活かし方』は、日経新聞の記事からインテリジェンスを読み解く方法を14日間でマスターできるよう指南する。これから社会に出る就活生を対象としているが、ビジネスパーソンにも役立つノウハウが満載だ。
著者は株式会社NIE.Eカレッジ代表取締役。ライフワークとして「新聞による経済教育」に取り組んでいる。
現代は情報がヒト・モノ・カネを動かすカギを握る情報資本主義社会。信頼でき、かつ、自分や組織にとって有益な情報を取捨選択し、次にとるべき行動へとつなげる「情報リテラシー」が不可欠だ。
ビジネスパーソンがこの情報リテラシーを鍛えるには日経新聞がうってつけだ。なぜなら、日経新聞は「経済」という視点で収集・整理した世の中の動きや企業動向の最新情報を届けてくれるからだ。
例えば経済面には、日本経済全体に影響する幅広いジャンルの記事が掲載され、ヒト・モノ・カネの大きな流れを捉えることができる。豊富な数値情報は、なぜそのような数値(=結果)になるのかを考えながら読むことで経済感度を磨くこともできる。
数値情報を「読む」際は、実際の現象に先立って変化する「先行指数」、現在の状況を表す「一致指数」、過去の現象を遅れて示す「遅行指数」の3つに分類して捉えるという。例えば、設備投資の数値や新規求人などの先行指数が新事業開始に先立って増加している企業は、事業の拡大が予想される、という具合だ。
「置き換え読み」という方法もある。例えば「トヨタが定額利用に参入」とあれば、主語を「自動車業界は」と置き換えるのだ。すると「なぜ定額? ホンダや日産もやるのか? 定額とは動画配信の見放題と同じ発想?」など、想像が広がる。主語を自社に置き換えれば「我が社で定額利用できるサービスは何があるのか?」など自然にアイデアも広がるだろう。
さらに日経新聞にはファクト(事実)だけでなくオピニオン(意見)記事も豊富。子会社であるイギリスの「フィナンシャル・タイムズ」紙の社説や国際ニュースも多く翻訳され掲載される。海外視点も含めた多様なオピニオンを読み比べて、自分のオピニオンを深めることができると著者は説く。
情報リテラシーを鍛え、インテリジェンスを読み解き、さらに自らのオピニオンを形成する力は、特にこれから変化の激しい時代にはビジネスパーソンの必須のスキル。本書を片手に、日経新聞の読み方をしっかり身につけたい。