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今月の特選

総理通訳の外国語勉強法

『総理通訳の外国語勉強法』

  • 中川 浩一 著
  • 講談社(講談社現代新書)
  • 2020/01 176p 924円(税込)

外国語学習には「日本語発信」が先 現役外交官の教え

「英語がペラペラ話せたらなあ」「バイリンガルってかっこいい」……。誰しも一度は、こんな憧れを抱いたことがあるだろう。けれども英語の授業も遠い昔のこと、今さら外国語を習得するなんてとうてい無理、そう思っている人も多いはずだ。

だがそんな人にも勝機はある。なぜなら外国語学習で重要なのは他でもない、「日本語で考えること」であるからだ。そう強調するのが本書『総理通訳の外国語勉強法』。ゼロからアラビア語を学び、4年後にはアラファトPLO(パレスチナ解放機構)議長など要人の通訳を任されるようになった著者が、外国語習得における自身の哲学と独自のメソッドを公開している。

なお、中川氏は外務省本省に勤める現役の外交官で、アラビア語は世界でも有数の、習得が難しいとされる言語である。

アウトプットありきの学習法

外国語の勉強をしようと思うと、外国語のテキストを読んで理解することから始めがちだ。だが、中川氏は何よりもまず「話したい内容」を日本語で考えることが先だという。自分が外国人に話したい・話すべきことを決め、それに合わせて外国語をインプットしていくのだ。こうすれば、自分にとって必要度の高い単語や表現を覚えることになり定着しやすい。そして能動的な学びになる。つまり、アウトプットありきの学習法なのだ。

活用するのは「自己発信ノート」だ。発信したい内容、具体的には自己紹介やニュースを踏まえた意見などをノートに作文する。次にその内容を外国語に翻訳し、声に出して読み、いつでも話せるようにしておく。例えば中川氏はエジプトにいた際、「私は中川浩一と言います。このアパートの28階に住んでいます。ピラミッドが見えて景色は良いのですが、部屋のクーラーが壊れて暑くてたまらないんです。早く修理屋を呼んでください」というような内容をノートに書いていたという。

あくまでも母語での発信を起点にするのが著者の学習スタイル。これは「言葉ではなくメッセージを伝える」ことに重きを置く通訳者ならではの視点が生み出したものだろう。

ノートと併せて「オリジナル単語帳」の作成もおススメだという。これは自分にとって使用頻度が高そうな単語を選び、1つの日本語に対し複数の外国語を並べたもの。例えば「すばらしい」の英単語は「remarkable, wonderful, brilliant……」となる。習ったり聞いたりしたことはあるが使ったことのない単語を洗い出すのに有効で、表現の幅を広げることにもつながる。

黒子になりがちな通訳者直伝の、実践的な勉強のコツが紹介されている本書。緊張感あふれた総理通訳の舞台裏も、つい引き込まれる。もちろん一朝一夕にはいかないだろうが、著者のように外国語が自在に操れるようになれば、仕事の幅も広がり出世にもつながるかもしれない。

総理通訳の外国語勉強法

『総理通訳の外国語勉強法』

  • 中川 浩一 著
  • 講談社(講談社現代新書)
  • 2020/01 176p 924円(税込)
安藤 奈々

情報工場 エディター 安藤 奈々

情報工場エディター。8万人超のビジネスパーソンに良質な「ひらめき」を提供する書籍ダイジェストサービス「SERENDIP」編集部のエディター。早大卒。

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