新型コロナウイルスの影響でテレワークが進んだ。だがテレワークによって「生産性が下がった」「仕事ぶりを評価してもらえないのでは」といった不安の声がビジネスパーソンから挙がっているようだ。それを裏付けるかのように、東京商工リサーチの最新調査では、リモートワークの実施率が低下してきている。
そこで、テレワークでスムーズに仕事をし、成果を出すための基本を見直してみてはどうだろう。本書『これからのテレワーク』は、四半世紀前からテレワークが当たり前の外資系企業に勤めていた著者が、テレワークのコツについて心構えからまとめた本だ。著者いわく、テレワークをうまく行うために必要な力は3つある。「セルフマネジメント力」「マルチコミュニケーション力」「成果の見せる化力」だ。本書ではこの3つの力をそれぞれ細分化して、具体的なアクションや役立つツールを紹介している。
著者の片桐あい氏は株式会社カスタマーズ・ファースト代表取締役、人材育成コンサルタント。
セルフマネジメント力とは自己を律する力だ。自宅にある数々の誘惑に負けないという意味でもあり、これからの「自分のありたい姿」に近づくという意味でもある。テレワーク中は自分の裁量権が増えるため、新しい役職、働き方のために自分の仕事を再定義するチャンスがやってくる。例えば、組織としてやるべき領域の仕事を早く終え、隙間時間で「こっそりスキルアップ」も可能だという。
また、テレワーク中は同僚や上司の状況がわからない。信用を得るためにメール、チャット、ウェブ会議など様々なツールを駆使して「意識的に」同僚や上司に情報を共有することが大切だ。情報共有の際は「意見と事実を分ける」、「5W3H(When;いつ、Where;どこで、Who;誰が、What;何を、Why;なぜ、How much;いくらで、How many;どのくらい、How to;どうした)などのフォーマットを意識して、分かりやすく伝えるべし。これが、多様な人と多岐にわたるツールで連携するマルチコミュニケーション力の一環だ。
成果の見せる化は日本人が苦手とするところだが、テレワークにおいてアピール下手では上司の評価を得られない、と著者は指摘する。例えば1時間ごとの細かい単位で仕事の記録を取っておく、自分の仕事のプロセスを見直し、不要な作業を洗い出すといった取り組みは「わかりやすい成果」として上司にアピールできる。業務改善やこれから取り組んでみたいことを上司に提案することも、自身のキャリアアップにつながるだろう。
著者のいう3つの力を見ると、これまで以上に戦略的・主体的に仕事に向き合っていくことがテレワークを成功させる鍵のようだ。「テレワークでは仕事ができない人」と思われないように、本書で研究を重ねてみてほしい。