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今月の特選

聞いたら忘れない勉強法

『聞いたら忘れない勉強法』

  • 黒澤 孟司 著 小松 正史 監修
  • フォレスト出版
  • 2020/07 192p 1,540円(税込)

10分で記憶を定着させる 「速聴勉強法」のススメ

近年、ビジネスパーソンの中で「学び直し」(リカレント教育)への意識が高まっている。背景には、スキルアップはもちろん、変化の激しい時代を生き抜くための知識や知恵を、今一度しっかり身に着けておきたいという思いがあるのだろう。一方で、記憶力の衰えを感じている方もいるかもしれない。

そこで開いてもらいたいのが本書『聞いたら忘れない勉強法』である。紹介されているのは「耳」を使った学習法、名づけて「速聴勉強法」。「読む」「書く」ことが中心の視覚的な勉強に、「聴く」という聴覚的な学びをプラスすることで記憶効率を上げていくメソッドだ。著者は現役の医師だが、医学部受験に何度も失敗しており、その苦労の中で開発された勉強法だという。監修の小松氏は京都精華大学教授で音響心理学者。

イメージを広げてリリック(歌詞)にして覚える

さっそく速聴勉強法のステップを見てみよう。以下の4ステップで進んでゆく。

ステップ1:ノートをまとめる理解段階
ステップ2:リリックの作成段階
ステップ3:レコーディングの段階
ステップ4:リスニングの段階

ステップ1と2は、「書く」段階だ。例えば歴史的な出来事の中から、覚えなければならない要素をピックアップする(例:1560年 織田信長が駿河の今川義元に勝つ。桶狭間の戦い)。

次に、ここがユニークなところなのだが、学ぶべき要素から連想したイメージをヒントにインフォグラフィック(イラストや図解)を描き、リリック(歌詞)をつくる。上記の例でいくと、著者は、NHK大河ドラマ『麒麟がくる』の配役「今川義元=片岡愛之助」を連想して、このようなリリックをつくったという。

「今川軍、今ごろ(1560年)驚く桶狭間。愛之助、今川焼を食べ、よし! もっと持ってこよ! 桶に入るくらい、持ってこよ!」

著者も述べているが、無機的な情報にインパクトのあるイメージを結びつけることが大切であるため、どんなにバカバカしく見える内容でも構わない。インフォグラフィックも他者に見せるものではないので、ここは思い切った自己流の連想をするのが良さそうだ。

1ファイルの内容を10分以内に覚える

つくったリリックを自分でスマホやボイスレコーダーに吹き込んでいくのがステップ3だ。1ファイル90秒ほどでまとめるのが良い。そして、ステップ4でいよいよ速聴する。リリックを吹き込んだ音声ファイルを、「3倍速」で聴いていくのだ。つまり、90秒ほどのファイルだと30秒で聴き終えられる。これを20回=10分間繰り返すと、ファイルの内容がほぼ覚えられると著者は説く。

本書のメソッドはオリジナルのテキストを自分で作り、それを読み上げ聴くという、非常に身体的で能動的なものだ。また、速聴はインフォグラフィックを見ながら行うなど、細かな手順もある。面倒くさいと思うかもしれないが、諸々のプロセスはすべて記憶の「フック」をつくるもの。五感をフル活用して、「忘れない学び」を手にしてみてはいかがだろうか。

聞いたら忘れない勉強法

『聞いたら忘れない勉強法』

  • 黒澤 孟司 著 小松 正史 監修
  • フォレスト出版
  • 2020/07 192p 1,540円(税込)
安藤 奈々

情報工場 エディター 安藤 奈々

情報工場エディター。8万人超のビジネスパーソンに良質な「ひらめき」を提供する書籍ダイジェストサービス「SERENDIP」編集部のエディター。早大卒。

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