「俺の背中を見て盗め」と考えるのは「昭和上司」。飲みニケーションで互いを知り、仕事を気持ちよく進めようとするのは「平成上司」。では、「令和上司」とはどんな上司か?
本書『令和上司のすすめ』は、現代に求められる上司としてのスキル、部下の育成方法について、考え方や心得を踏まえながら具体的に解説している。著者は、外資系企業でのマネジメント経験を持ち、経営やマーケティング、人材育成支援などを手掛けるビジネスファイターズ合同会社代表の飯田剛弘氏。
直近、コロナ禍もあってテレワークの機会が増えた。また、成果型の働き方が浸透し始め、マネジメントスタイルも変化しつつある。本書のいう令和上司とは、この状況に加え、グローバル環境にも柔軟に対応し、何とかして結果を出す上司のことだ。多様な文化背景や経験を持つメンバーを束ね、目標に向けて協働させていく力を持つ。
そんな令和上司の特徴の一つは、部下に対して「自分の方が優れている」という考え方を持たないことだ。ジョブ型雇用の導入で専門スキルを持つ人材を採用した場合など、部下が上司より知識を持っていることは珍しくない。部下をパートナーとして考え、一緒に成果を出すことにコミットする。相手の力を引き出す能力こそ「一生の武器」になると、著者は言う。
令和上司の特徴をもう一つあげるとすれば、過去の成功体験や、従来の方法にとらわれないことだろう。例えば、部下の国籍がさまざまな場合、「あ、うん」の呼吸や「以心伝心」は通用しない。自分の思いは具体的な言葉にして伝えることが必要になる。また、「報連相(報告・連絡・相談)は部下がするもの」という認識も、改めたほうがよさそうだ。令和上司は、部下に何でもかんでも報連相させない。手段が目的化するのを避けるためという。例えば報告であれば、「上司から必要な情報を具体的に部下に要求する」など、ルールを決めるとスムーズだ。
令和上司は、仕事もプライベートも、やりたいことすべてに全力だ。ただし、いわゆる「ワークライフバランス」とは違い、「一方を増やせば他方が減る」とは考えない。普段はプライベートを重視しつつ、ある時期は仕事に長時間没頭し、ときには趣味にも夢中になる。会社、プライベート、地域活動など何の役割であれ、やらされるのではなく自分の意志で好んで果たす。それが、結果的に仕事における高いパフォーマンスにつながるのだという。
私の周囲でも、後輩や部下と付き合うにあたり「自分の頃はこうではなかった……」と戸惑う上司の声を聞くことがある。しかし、嘆いていても仕方がない。時代が変化を続けるなか、変わらなければならないのは、何より先に自分自身だ。本書から、令和の理想の上司像をつかんでほしい。