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今月の特選

サクセスフル・エイジング 老いない人生の作り方

『サクセスフル・エイジング 老いない人生の作り方』

  • ダニエル・J・レヴィティン 著
  • アルク
  • 2021/03 480p 1,980円(税込)

誠実な人は長生き? 科学が勧める老いない生き方

中学1年で学校を中退。17歳までに4つの仕事をクビになり、ずっと定職に就けず、人生のほとんどは無一文。50歳でようやく開いた店は、成功しないまま62歳で閉店。時は1952年、平均寿命は約65歳だった――ところが、この男はこの後借金でレストランをオープンし、それを大当たりさせる。男の名はハーランド・サンダース。ケンタッキー・フライド・チキンの創業者だ。90歳で亡くなるまで、会社のアンバサダーとして活躍した。彼は新しいことに開放的で、好奇心が旺盛だった。

人生の後期に新しい事業やスポーツ、芸術活動を始めることは、生活の質を高め、寿命を延ばす、と本書『サクセスフル・エイジング』は説く――サンダースならずとも、人は誰でも、何歳でも、自分の生き方と人生を変えられるのだ。

本書は、神経科学者である著者が、発達神経科学と個人差心理学を軸に、老化にまつわる研究成果を多角的にまとめた一冊だ。性格、記憶、知覚、食事、運動など膨大なトピックを扱い、「生涯を通じて健康で、活動的で、幸福でいられる」方法を科学的な根拠とともに示している。

「誠実性」が寿命を延ばす

本書によると「性格」は高齢者の健康と相関関係がある。性格診断の世界標準として「外向性」「協調性」「誠実性」「感情の安定性」「体験への開放性(知性、想像力を含む)」という「ビッグファイブ」と呼ばれる5つの因子がある。一般的に高齢者は、自分から会話を始めるような外向性、新しいものへの好奇心といった開放性が低下する。代わりに、協調性、誠実性、感情の安定性が高まる。

この中でも、誠実性が寿命に大きく影響するという。定期的に健康診断を受ける、約束を守るなど、「誠実な人」は健康や幸福の度合いが高く、全死因で死亡率が低いという研究結果が出ている。サンダースのように開放性が高い人は活動的に年を重ねるが、開放性が「高すぎる」と、危険なことに挑んで命を落とす場合もある。

大切なのは、因子のレベルすなわち性格は何歳からでも「変えられる」と自覚することだ。著者は「好奇心、開放性、交友、誠実性、健康的な習慣」を促進するライフスタイルが重要だと主張する。

凸凹道の意外な効果

本書には老化に対抗するための様々な手段が示されているが、特に重要なのが身体活動だ。いわゆる「運動」に限らず、家の近所を少し速めのペースで歩くだけでもいい。特に自然の中の凸凹道を歩くのが効果的という。目や耳で光や風を感じ、足の裏で凸凹を感じることで、脳に多くの刺激が届き細胞が活性化されるからだ。

身体と脳はきわめて密接に結び付いており、身体が衰えると脳の働きも衰えるのは至極当然なのだという。実際に、身体活動によって記憶力、総合的な認知力、創造力までもが高まることがわかっている。

著者によると、高齢期は「第3の成長期」。老いを恐れず、日々をいきいきと過ごすために、ぜひ本書を開いてほしい。

サクセスフル・エイジング 老いない人生の作り方

『サクセスフル・エイジング 老いない人生の作り方』

  • ダニエル・J・レヴィティン 著
  • アルク
  • 2021/03 480p 1,980円(税込)
安藤 奈々

情報工場 エディター 安藤 奈々

情報工場エディター。8万人超のビジネスパーソンに良質な「ひらめき」を提供する書籍ダイジェストサービス「SERENDIP」編集部のエディター。早大卒。

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