カルティエ ジャパン プレジデント&CEO 宮地純さん
女優・ユニセフ親善大使 黒柳徹子さん

性別、国籍、年齢に
かかわらず
みんなが輝ける社会を
目指したい

校長先生の
「みんな一緒だよ」
という言葉が
私を成長させてくれました

SDGs(持続可能な開発目標)への関心が高まるとともに、ジェンダー平等という課題がさらに浮き彫りになる日本。カルティエは2025年日本国際博覧会(大阪・関西万博)において同協会、内閣府、経済産業省との共催により、女性のエンパワーメントなどをテーマにした「ウーマンズ パビリオン in collaboration with Cartier」を出展する。男女格差のない未来を実現するために、今から私たちに取り組めることとは。様々な“女性初”の偉業を成し遂げてきた女優の黒柳徹子さんと、カルティエ ジャパンでCEOを務める宮地 純さんの対談から、その答えを探る。提供:カルティエ

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日本に根づくジェンダーギャップを打開するために必要な女性の意識改革

宮地私は“カルティエ ジャパン初の日本人女性CEO”として紹介される機会が多くありますが、カルティエには昔から女性の活躍を積極的に応援する文化がありました。1933年、メゾン初のクリエイティブディレクターとなったのもジャンヌ・トゥーサンという女性です。就任の後押しをしたのは、当時メゾンを率いていた創業者の孫、ルイ・カルティエ。周囲の反対を押し切り、ジャンヌの実力を認めて、大抜てきに至ったのです。現在、世界各国のカルティエのトップは半数近くが女性で、スタッフも7割以上が女性です。

ジャンヌ・トゥーサン Henry Clarke, Vogue © Condé Nast

カルティエの象徴「パンテール(豹)」のデザインを数多く考案した、初のクリエイティブディレクター、ジャンヌ・トゥーサン

黒柳日本は封建的な時代が長かったけれど、カルティエでは、そんな時代から女性が認められてきたんですね。私は、1953年にテレビ女優第1号としてNHK放送劇団に入団しましたが、やはり男性から女性への偏見に遭いました。あるとき、男性の上司に自分の意見を言ったところ、「ばか、女性は黙ってやりゃあいいんだよ」という言葉をぶつけられたこともありました。同じように仕事をしていても、女性というだけで差別される矛盾を感じましたね。

宮地父の仕事の関係で、幼少期をヨーロッパで過ごしたことや、両親の影響もあってか、「女性だから」という感覚はあまり持たずに育ちました。日本において、それまで存在していなかったもの、いわば第1号を想像するということは常にとても難しいことなのかもしれません。

黒柳難しいというより、受け入れるのが嫌なんじゃないかしら。私は、テレビでニュースを読んだ初めての女性でもあるのだけれど、当時はニュースを読むのは男性と決まっていました。女性はアシスタントとして隣に座り、白いブラウスと紺色のタイトスカートを履いてニコニコしているのが仕事だったんです。それも主婦や主婦だった経験がある人限定。“視聴者の多くが主婦だから、そのほうが安心する”という理由だったのね。“主婦ではない人は信ぴょう性がないので反感を買う”というような風潮でした。女性からして、そういう意識だったんです。私のように独身でアメリカ帰りという経歴は異例中の異例。それでも、落ち度なく一生懸命努力していたら、女性なのに偉いと褒めてはもらえなかったけれど、だんだん受け入れてもらえるようになった。やがて、そのニュースショーが「徹子の部屋」になり、今年で49年目を迎えます。

黒柳徹子さん

多くの米国のテレビ番組にも出演し、著名な米新聞各紙でも日本を代表する女性として紹介されたこともある黒柳徹子さん

女優・ユニセフ親善大使

黒柳 徹子さん

NHK専属のテレビ女優第1号となって以来、テレビやラジオ、舞台などで幅広く活躍。800万部を超える日本記録を達成したベストセラー『窓ぎわのトットちゃん』(講談社)に続き、2023年に出版された『続 窓ぎわのトットちゃん』(同)も話題に。ユニセフ親善大使は今年で就任40周年。21年には国際女性デーHAPPY WOMAN AWARD 2021 for SDGs個人部門受賞

宮地日本では個性を認めるよりも協調性が重視されることが多いなと感じることがありますが、女性は特に敏感にそれを感じ取って躊躇(ちゅうちょ)することがあるのかもしれません。また、“〇〇は、こうあるべき”というラベリングに縛られ、その役割をこなそうとする女性が多いように思います。今は、もっと自らが自分らしく生きる選択をする時代になってきている。先ほどご紹介したジャンヌや黒柳さんのように、自分の個性や独自の考え方、審美眼を大切にし、一歩踏み出す女性が、いつの時代も道を切り開くのではないでしょうか。

女性が生き生きと輝くために大切な男性側の意識の変革とは

黒柳優秀な女性が出てくるだけでなく、それをサポートする環境も大事ね。私が働き出した時代は、普通が一番という考え方が一般的だったので、個性を認めてもらうのはひと苦労でした。それでも「そのままでいいんですよ」と声をかけてくれる男性のディレクターもいて、励みになりました。良き導き手があれば、女性も自信を持つきっかけになり、より良い社会になっていくのではないでしょうか。

宮地カルティエには「美と個性をたたえる」というパーパスがあります。女性の社会進出をサポートする良き導き手になれるように、様々な支援も行なってきました。2006年には、社会をより良くするために活躍する女性起業家を支援する「カルティエ ウーマンズ イニシアチブ」を創設。12年には「カルティエ フィランソロピー」を設立し、貧困に苦しむ地域の女性や子どもたちの生活改善を支援しています。女性起業家たちをつなぐサポートも行っています。同じ境遇の仲間たちと出会うことで、悩みや解決法を共有できる環境ができて、それが心の支えになればと思っています。

カルティエ ウーマンズ イニシアチブ © Jean Picon

2006年創設の「カルティエ ウーマンズ イニシアチブ」。現在まで63カ国、297名の女性起業家に総額744万米ドルを支援

黒柳本来なら味方になるべき女性同士が足を引っ張るようなことも多いので、女性起業家同士のコミュニティーをつくり、相談できるような環境を整えることは素敵なことですね。本当に日本人は人の才能を認めるのが不得意。とくに男性が女性の能力を受け入れるのは難しい風潮があるのかもしれません。

宮地海外の同僚たちと話していると、皆それぞれに工夫をしながら生き生きと、キャリアも家庭もパートナーと一緒にやりくりしている話をよく聞き、勇気をもらいます。世界経済フォーラム(WEF)が2023年に発表した「ジェンダーギャップ指数」では指数対象国146カ国中、日本は過去最低の125位という結果でした。どの国もパーフェクトではないですが、相対的にevolution(進化)が遅いというのは残念なことです。

宮地純さん

カルティエ ジャパン プレジデント&CEOの宮地 純さん。大阪・関西万博の「ウーマンズ パビリオン」への意気込みを熱く語った

カルティエ ジャパン プレジデント&CEO

宮地 純さん

京都大学法学部卒業後、外資系証券会社に入社。仏ビジネススクールINSEAD(インシアード)にてMBA取得後、ラグジュアリー業界でキャリアをスタート。2017年リシュモン ジャパン入社、カルティエ ジャパン マーケテイング&コミュニケーション本部長に就任。20年8月より現職

黒柳本当ね。女性の努力も必要ですけれど、男性には、もっと鷹揚(おうよう)に女性の成功を応援してほしいと思います。そんな気概のある男性は、優れた女性の部下が出てきたときには、応援する気持ちを忘れず、無邪気に自分らしく接してください。とにかく警戒心を抱かせないこと。そうすれば、上司は女性から信頼してもらえます。そして、堂々としていれば、自然と円滑なコミュニケーションが築け、お互いがよきビジネスパートナーになれるはずです。

大阪・関西万博ウーマンズ パビリオンに込められたカルティエの思い

宮地男女平等の社会というのは、どちらか一方の努力だけでは成り立たないと思うんです。その思いをこめて、2025年大阪・関西万博ウーマンズ パビリオンのスローガンは「ともに生き、ともに輝く未来へ」としています。2020年ドバイ万博に引き続き2回目の出展となりますが、性別はもちろん年齢、国籍等の壁を超えて、みんなが輝く社会について、多くの方に考えていただきたいなと思っています。

黒柳『窓ぎわのトットちゃん』(講談社)でも書いたのですが、私が通っていたトモエ学園の小林宗作校長先生は、いつも「みんな一緒だよ」と話してくださいました。そうすると、子どもながらに障害のある友人と遠くまで出かけるようなときも、どうすれば一緒に行けるかを真剣に考える。差別をする大人がいれば、おかしいという感覚が自然と身につくんですね。「みんな一緒」ということを、万博という、多くの老若男女が訪れる場所で広めることができるというのは、よいきっかけになりそうですね。

黒柳徹子さんと宮地純さん

ニューヨークで活動を行った黒柳さんと、幼少期を欧州で過ごした宮地さん。国際感覚あふれるふたりが日本の未来について語り合った

宮地ともに」には行政と民間をはじめとするステークホルダーが一緒に取り組むという意味も込められています。「ウーマンズ パビリオン」は、カルティエ単体ではなく、内閣府、経済産業省、2025年日本国際博覧会協会の共催であることも意義深いことだと感じています。カルティエが参画する「ウォッチ&ジュエリー イニシアティブ2030」も国やブランドの垣根を超えて発足しました。今回の万博でも、すでにアフリカ諸国から一緒に何かできないかというオファーをいただいて、これから具体的に動き出す予定です。

黒柳ユニセフ親善大使としてアフリカへ出かける機会も多く、多くの女性や子どもたちが苦労をしている現場を目にしています。まだまだ男性優位の社会が中心ですが、こういう場がきっかけになり、意識の高い人たちが立ち上がり、変わっていければうれしいですね。

大阪・関西万博「ウーマンズ パビリオン in collaboration with Cartier」 © Cartier ウーマンズ パビリオンロゴ

写真:大阪・関西万博「ウーマンズ パビリオン in collaboration with Cartier」の出展は、2020年のドバイ国際博覧会(ドバイ万博)に続いて2回目。内閣府、経済産業省、2025年日本国際博覧会協会との共催となる。グローバル アーティスティック リードには、1851年の万博以来初の女性アーティストとして、2020年ドバイ万博の英国パビリオンも担当したエズ・デヴリンさんが就任。パビリオンのリードアーキテクトは、建築家の永山祐子さんが務める。ドバイ万博で永山さんが設計した日本館の「組子ファサード」をリユースし、敷地形状に合わせてパッチワークのように配置する、サステナブルな観点にも注目が集まる

写真:3月8日の国際女性デーに初めてお披露目されたウーマンズ パビリオンのロゴ。「ともに生き、ともに輝く未来へ」という思いが力強い文字に集約されている

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宮地最近、黒柳さんの著書のなかで見つけた、香蘭女学校の校歌のワンフレーズにハッとさせられました。「咲くはわが身のつとめなり」というものです。これは、女性に向けられた応援歌のようですね。

黒柳子どものときには、深く考えずに歌っていましたが、考えてみれば深い意味がある歌詞ですよね。「咲くはわが身のつとめなり」。日本女性には、これからもどんどん開花して、輝いてほしいと思います。あなたのような社長が出てきていることも、多くの女性たちにとってエールになるのではないかしらね。ますます期待しています。

宮地ありがとうございます。万博は2025年4月から始まります。大阪で、美しく咲き誇る女性たちが増える社会の実現をみんなで一緒に考え、心の奥底から共鳴してもらえる場が提供できるよう努力しますので、どうぞご期待ください。

黒柳徹子さん

2025年大阪・関西万博でカルティエが出展する「ウーマンズ パビリオン」をきっかけに、多くの人が個性を発揮して自分らしく輝く未来が実現することを黒柳徹子さんは願っているという

3月8日の日経本紙朝刊に掲載された広告紙面も
こちらからご覧いただけます。

日経本紙朝刊広告紙面サムネイル PDF DOWNLOAD

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