「100人いたら100通りの働き方」があっていい。そう考えるのはクラウドベースのグループウエアや業務改善サービスを提供するサイボウズだ。社員それぞれが望む働き方を実現すべく、勤務時間や場所を“選べる”働き方や、すでに本業を持つ人を契約形態にこだわらずに採用する複(副)業採用など、次々に斬新な人事・採用制度を打ち出している。同社はどのようにして多様なライフ・ワーク・バランスを実現し、離れた場所でそれぞれのメンバーとつながりながら、チームワークを保っているのか。またそれを実現するツールとは。実際にその現場で働く当事者たちの“本音”を聞いた。
安達萌恵氏がSEとしてサイボウズに入社したのは2017年1月のこと。それから半年程たった頃、別の会社に勤める夫に上海への出向の辞令が下った。1年間という期限付きではあったが、夫を単身赴任で送り出し、上海と日本で別々に暮らすという生活は考えられなかった。
「せっかく入った会社だけど、いったん辞めるしかないのかな……」
半ば諦めかけていた安達氏だったが、会社はいくつもの選択肢を提示した。サイボウズでは、海外からリモートワークの形で働いている社員もいるし、上海にはアジア拠点もあるのでそこで働くこともできるというものだった。
上海の拠点で働ければ、仕事を辞めずに、夫と一緒の生活ができる。そして海外で新しいキャリアを磨くこともできる。安達氏は上海拠点での勤務を決断した。
上海では、SEとしての仕事のほか、同地にマーケティングチームを立ち上げることがミッションとなった。
ただ、すべてが理想どおりだったわけではない。「上海側のマーケティングチームのメンバーは4名しかいなくて経験も浅く、日本側としっかり連携をとらなければなりません。ですがどうしても閉鎖的になりがちで、上海チームと日本チームの間には見えない“壁”ができてしまいました」と安達氏は振り返る。
そこで上海拠点では、大型ディスプレーを使ってチーム対チームのテレビ会議ができる「Cisco TelePresence」や、PC、モバイルデバイスを使って場所を選ばずどこからでもWeb会議ができる「Cisco Jabber」を積極的に活用するようにした。
「やはりお互いに顔を見て話し合えると安心しますね。目の動き、身振り手振りなども交えて話すので、メールだけでは難しい細かいニュアンスや思いも伝わります。『元気そうだね』『昼は何を食べたの?』など、仕事と関係ないことも気軽に話せるのもよいところです」。こうしたコミュニケーションを通じて“壁”はなくなり、2つのチームに一体感が生まれたと安達氏は話す。
「実際に上海に来てみて感じたのは、中国ではITが進化するスピードは恐ろしいほど速いことです。うかうかしているとサイボウズ製品も中国市場で淘汰されてしまいます。上海と日本のマーケティングチーム全体でこの危機感を共有し、先手を打った施策を展開していかなければなりません」と安達氏は語る。日本に帰ってからも、ますます精力的に活動していく意気込みだ。
すでに別の仕事を持っている人を採用するサイボウズが始めた「複業採用」。この制度に強く共感したのが、新潟県妙高市でNPO法人「しごとのみらい」を運営する竹内義晴氏だ。
竹内氏はサイボウズではコーポレートブランディング部に所属。オウンドメディア「サイボウズ式」を通じた情報発信を行うほか、新たに立ち上げた「チームワーク総研」で多様な働き方を可能にするチームワークメソッドの研究開発に取り組んでいる。「私にとってサイボウズでの複業は『地方と東京』で働くという新しい可能性の追求であり、『二足のわらじ』で働く新しいチャレンジであり、あえて組織に所属する新しい働き方であり、とてもパワフルな試みです」と竹内氏は話す。
月に1回は東京の本社オフィスに“出勤”するが、基本的には新潟にいる。週の3日間をNPOでの活動にあて、2日間をサイボウズの仕事にあてるというのが現在のワークスタイルだ。
新潟からのリモートワークで、どうやってサイボウズのメンバーとのチームワークを実践しているのだろうか。竹内氏はこれを支える3つの条件を挙げる。
「まずは『ツール』。離れた場所で働くメンバー同士が情報共有できる仕組みが必須です。次に『制度』。そもそもリモートワークが認められていないと話になりません。そして3つめが『風土』です。いくらリモートワークの制度が用意されていても、実際にその働き方を選択する人が他のメンバーから白い目で見られるのではチームワークは成り立ちません」
実際に複業を始めてみて、「新たな課題も感じています」と竹内氏は明かす。まず、予想以上に大変だったのが働き方のマネジメントだった。「『サイボウズの仕事は週2日』と限定していても、現実にはそう単純に割り切れるものではありません。どこを落とし所とするのか、チームメンバーとの相談や自己管理が必要です」
また、距離が離れているが故の課題も出た。「チームに所属したが故に、同じオフィスで一緒に仕事をしていないことに『孤独』を感じることがあります。離れているだけに仕事の成果は結果で示すしかなく、今自分がどれだけ悩んでいるとか、アイデアが出なくて困っているなどのプロセスは分かってもらえません」
こうした課題を解決する手段として、竹内氏が大きな可能性を見出しているのがCisco TelePresenceや、Cisco Jabberの活用だ。
「言葉で『大丈夫』と言っていても本音はどうなのか、五感で感じられるところが映像や音声を通じたコミュニケーションのメリットです。チームにはパリで働いているメンバーもおり、リモートワークは今後ますます拡大していくでしょう。そうした中で、このシステムをあえて“雑談”にも利用することで、単なる情報だけでなく一人ひとりの葛藤までチーム全体で共有することが可能となり、心の距離を縮められます」と竹内氏。
こうして醸成されていくメンバー間の信頼感こそが、互いを認め合う良いチームワークを実現していく。
「100人いたら100通りの働き方があっていい」とするサイボウズ。ビジネスマーケティング本部にも思い思いの働き方を選択して活動するメンバーが多数在籍している。そんな同本部を統括しているのが林田保氏だ。
実際にどのような考え方で組織全体のマネジメントを行っているのだろうか。林田氏は「最も大切なことは、メンバーを“縛る管理のための管理”ではなく、それぞれの得意分野をさらに伸ばして活躍してもらうための“相互理解”と“信頼”です」と語る。そして「それを実現する環境構築にコストを惜しまず、コミュニケーションに時間をかけています」と強調する。
具体的に重視しているのが、リアルタイムと非同期の2つの側面からコミュニケーションを支える仕組みづくりだ。
「当社が導入しているCisco TelePresenceやCisco Jabberを活用したリアルタイムなコミュニケーションは、働く“場所”を超えたメンバー間の相互理解を促します。一方、サイボウズが本業とするグループウエアなどの非同期のコミュニケーションは、働く“時間”を超えた情報や知識の共有化を実現します」と林田氏は語る。
この2つのコミュニケーションを高度に融合していく中から、一人ひとりのメンバーの得意分野や保有するスキルなどがおのずと“見える化”していき、どのような働き方をしていても能力を正しく評価することが可能になるという。
その意味では今後、マネジャーや各グループのリーダーたちの役割もますます重要になっていく。「例えば彼らのデスク上のWeb会議システムは、常にMCU(多地点接続機能)をオンにしておくなど、配下のメンバーがより気軽に話しかけることができる環境づくりを進めていきたいと考えています」と林田氏は語る。
多様な働き方を実践するメンバー間の“壁”をなくすために、「やれることは、まずやってみる」というのがサイボウズの一貫した姿勢である。
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