提供:コグニザントジャパン

DXに向けた「人材争奪戦」に備える

グローバルIT人材可能性

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谷崎 勝教

株式会社日本総合研究所
代表取締役社長 兼 最高執行役員

新村 穣

コグニザントジャパン株式会社
常務執行役員 金融・保険事業統括

日本のデジタル化が遅れていると指摘されて久しい。その大きな原因と考えられているのがIT人材の不足だ。その解決策として日本国外のIT技術者の活用を検討する企業が増えている。「IT大国」インドをはじめ各国に拠点を置くグローバル大手テクノロジーソリューション企業のコグニザントは、事業変革の遅れと人手不足に悩む日本企業にどんな役割を果たせるのか。日本総合研究所 代表取締役社長の谷崎勝教氏と、コグニザントジャパン 常務執行役員の新村穣氏が意見を交わした。

IT活用とイノベーションの間のギャップ

―― 日本は世界に比べ、デジタル化の取り組みが立ち遅れていると言われています。実際にはどのような状況にあるのでしょうか。

谷崎 日本企業でデジタル化を推進してきた立場からすれば、「日本のデジタル化が立ち遅れている」と言われるのはとても残念です。とはいえ、IMD(国際経営開発研究所)の「デジタル競争力ランキング(2023年版)」において日本が世界32位という位置に甘んじているのは紛れもない事実であり、日本のデジタル化が遅れていることは直視せざるを得ません。

日本におけるシステム構築は社外のITベンダーに大きく依存してきました。また最先端デジタル技術のほとんどが米国発であるために、日本企業はそれらを適用するのに精一杯で、イノベーションが起こりにくかったという側面もあります。しかし情報をグローバルで瞬時に共有できる今、すでに確立したデジタル技術を応用してギャップを埋めることができればまだまだ挽回できますし、伸びしろもあると思います。

写真:谷崎 勝教 氏

谷崎 勝教

株式会社日本総合研究所
代表取締役社長 兼 最高執行役員

1982年に住友銀行(現・三井住友銀行)へ入行。市場運用部長やシステム統括部長を経て、三井住友フィナンシャルグループCIO、CDIOを歴任し、SMBCグループ全体のデジタル戦略推進を牽引(けんいん)してきた。2022年に「Japan CDO of The Year 2022」を受賞。19年から現職(23年から専任)。

新村 日本企業は成果を出すことにこだわり、失敗を許さないという傾向が海外企業よりも強いと感じています。日本企業では、デジタルトランスフォーメーション(DX)が進められていますが、その実情はIT部門主導による業務効率化を目的とした取り組みが中心です。それに対し、多くの海外企業ではCIOのみならずCOOを含めたトップが主導して試行錯誤を繰り返しながら業務や事業の抜本的な変革が進められています。

日本企業でもイノベーションを起こしていくという意識を持った経営層が増えたものの、現場のIT部門はやはり成果を求めて近視眼的に動く傾向が見られます。日本企業のデジタル化が遅れていると言われるのは、事業会社の経営層とIT部門の役割が分断され、それぞれをつなぐ組織・人材が不十分だというところに一因があると考えています。

事業会社とITベンダーで人材の奪い合いが加速

――デジタル化が進まない要因の1つに「IT人材の不足」を指摘する声もあります。これについて、どのような課題があるのでしょうか。

谷崎 IT人材不足を強く実感するようになったのは、ここ10年来のことです。もともと金融機関では業務効率化が主目的のシステム構築をITベンダーに委託することが多く、事業会社ではIT人材をそれほど必要としていませんでした。

ところが、デジタライゼーションの進展に伴いデジタル技術を活用した顧客目線の新しいサービス開発が不可欠となる中、事業会社にもデジタル技術の分かる人材が必要になりました。日本総研でもIT人材の採用を強化し、今年は2年前に比べて2倍ほどのIT人材が入社しました。

そこで生じるのが、事業会社とITベンダーのIT人材の争奪戦です。新卒だけでなくキャリア採用も含めた奪い合いの様相を呈しており、日本だけではIT人材の需要に供給が追い付かない状況です。

新村 谷崎さんがおっしゃるように、当社もやはりお客さまからIT人材不足の悩みに関する多くの相談を受けています。

顧客により良いサービスを提供し続けるために老朽化するシステムをモダナイズしていくことは避けて通れません。そうした役割を担うIT人材不足を一気に解消することは難しいため、10年後を見据えて今の人材をリスキリングする形でIT人材を育成・確保することで課題を解決しようという動きが活発になっています。

もう1つ、注目するべき動向が海外にオフショアサイトを有するITベンダーとの協業です。自前でオフショアセンターを立ち上げようと考える日本企業もありますが、海外拠点で一からブランドを立ち上げ現地で優秀な人材を採用するところから始めるのは時間も労力も多大なものがあります。さらに海外は10年、20年後に情勢が大きく変化するリスクがあります。そうしたリスクを軽減するためにも、すでにグローバルでビジネスを展開している実績を持ち、日本国内に拠点を持つITベンダーと協業することが、今のIT人材不足の解消につながる最短かつ最適な課題解決策だと考えています。将来的な自社ブランド化もその先には我々のサポートのもとで実現していけることでしょう。

写真:新村 穣 氏

新村 穣

コグニザントジャパン株式会社
常務執行役員 金融・保険事業統括

ディジタル・イクイップメント、ヒューレット・パッカード、DXCテクノロジーを経て、21年にコグニザントジャパンに入社。30年以上にわたって金融、ライフサイエンス、輸送、製造、流通など幅広い業界に携わった経験を持つ。現在は金融業界の顧客にDX戦略を提言・推進する役割を担う。

他国を圧倒するIT人材輩出国としてのインド

―― IT人材不足の課題解決策としてインドのIT人材を活用する動きが見られます。なぜ今インドが注目され、インドにはどのような強みがあるとお考えですか。

谷崎 ビジネスがグローバルに広がっていく一方、日本におけるIT人材の供給能力がこの先、一気に高まることはありません。そのために、どうしてもグローバルでIT人材の供給元を確保していく必要があります。日本では大学・大学院を卒業するIT専攻の学生数は3.4万人程度だと言われています。これは世界第9位であるものの、フィリピン、ミャンマー、インドネシアといった東南アジア各国をも下回る数です。それに対し、最大のIT人材輩出国であるインドでは55万人もあり、その数は世界第2位の米国に比べて3.5倍以上に上ります。

情報通信技術分野の卒業者数 国別トップ10

グラフ:情報通信技術分野の卒業者数 国別トップ10
情報通信技術分野の卒業者数 国別トップ10(出典:ヒューマンリソシア「92カ国をデータでみるITエンジニアレポートvol.3  世界の大学等におけるIT教育について独自調査」20年)

それだけ圧倒的な数のIT人材を供給するところが、インドが注目される大きな理由です。インド出身者は海外にも積極的に進出し、例えば米国大手IT企業の経営者にもインド出身者が数多く見られます。「IT大国」インドの人材を無視しては、グローバルな金融機関としての成長は見込めません。

新村 IT人材確保に課題を抱える日本企業にとって、インドの強みは豊富なIT人材の数にあります。しかも日本をはじめとする主要国が人口減少に悩まされる中、インドの人口は増え続けており、将来性の面でも安泰です。

さらにインドは、日本や欧米と同じ民主・法治国家であり、カントリーリスクが少ないことも大きな特長です。コグニザントは米国に本社がありますが、米国人から見ても日本人から見てもインド人は付き合いやすく良好な人間関係を構築できます。そして、英語はもちろんのこと、日本語までも話せるマルチリンガルの比率が非常に高いことも、インドのIT人材の特長です。

単なるオフショアではない
インド人材を活かしたソリューション

―― コグニザントはインド国内に拠点を構え、全世界に向けてテクノロジーソリューションを提供しています。どのような形でビジネスに取り組んでいるのでしょうか。

新村 グローバル企業であるコグニザントの中でもインドは重要な事業拠点です。全世界に在籍する約35万人の従業員のうち約25万人がインド国内で働いており、15都市に約50の事業拠点を構えています。いずれの拠点でも、各地の理工系大学などと連携しながらIT人材の育成にも積極的に取り組んでいます。

これらの拠点は単なるオフショアセンターや開発拠点ではありません。インド国内に蓄積されたITの知見やノウハウはコグニザントの資産であり、これらに付加価値を加えてさらに優れたデジタル技術の開発、イノベーションの提供に取り組んでいます。

例えば日本のお客さまにソリューションを提供する際にはコグニザントジャパンが窓口となり、日本・米国・インドのエンジニアが1つのチームを組んでお客さまの課題を抽出するというように、最初の段階からグローバルで協業するという形でビジネスに取り組んでいます。24年からは、日本のお客さまを対象にコグニザントのインド拠点を紹介し、インドの魅力を実感していただくための「インドツアー」も実施しています。

谷崎 私自身もインドに出張したことがありますが、インドにおけるコグニザントの存在感の大きさは想像以上でした。インドのIT人材と実際に話をしてみると、頭の回転が非常に速いという印象を強く持ちました。やると決めたら最後まで責任を持ち、人との絆を大切にする文化もあります。

またインドには、ヒンディー語で「創意工夫のある革新的な問題解決方法」を意味する「ジュガード」という言葉があり、この精神がインドのIT人材の根幹にあるとも感じました。とにかく一般的な日本人が抱いているインドのイメージとは大きく異なるので、インドには一度訪問してみることをお勧めします。

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IT人材活用だけでなく、IT人材育成も支援していく

――IT人材活用の観点から、今後日本企業はどのようにあるべきでしょうか。

谷崎 日本のIT人材不足を補うには、インドはもちろん、グローバルに広がるIT人材をいかに活用するかが大きなキーポイントになると考えています。しかし、その際に日本流のやり方でマネジメントしていくと、グローバルでビジネスを展開する際に通用しないところもあるはずです。

コグニザントを含め、世界中に人材を抱えるグローバル企業とうまく付き合っていくことも、デジタル化の取り組みが周回遅れと言われる日本企業が挽回する近道であり、価値を得るための有効な取り組みとなるでしょう。

―― コグニザントは今後、日本企業にどのような支援を行い、日本企業のビジネスにどう貢献していこうとお考えですか。

新村 コグニザントが提供できるのは、インドをはじめとする各国の豊富なIT人材を活用して日本企業のIT人材不足という課題を解決するだけに限りません。事業会社がIT戦略を遂行していくために必要なIT人材をリスキリング・育成していくこともサポートできます。

このようなIT人材に関する支援を軸にしながらコグニザントのケイパビリティーを活用し、日本企業のデジタル化の推進を支えていくことがコグニザントの大きな役割であり、日本のお客さまへの貢献につながると考えています。

写真:新村氏と谷崎氏

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