提供:コミューン

事業成長のための重要施策「カスタマーサクセス」とは?

顧客との関係性進化させた
ウイングアーク1stコミュニティー戦略

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ウイングアーク1st株式会社
執行役員 マーケティング本部
本部長

久我 温紀

コミューン株式会社
執行役員CMO/
SuccessHub事業責任者

杉山 信弘

マーケティング戦略において「カスタマーサクセス」というキーワードが注目されている。簡単に言えば、商品やサービスを購入/契約した後の顧客の課題解決や活用支援を通じて、利用継続や追加購買を促進し、LTV(Life Time Value:顧客生涯価値)を高めるための取り組みだ。そこで必須となるのが、企業と顧客の双方向のコミュニケーションを実現するコミュニティーだ。

カスタマーサクセスを実現する
「顧客コミュニティー」

なぜ「カスタマーサクセス」が重要なのか。大手製薬会社やアパレルメーカー、大手ファッション通販運営企業、ゲームメーカー、ITソリューションベンダーなどでマーケティング担当を歴任し、現在はコミューンの執行役員CMO/SuccessHub事業責任者を務める杉山信弘氏は、次の2つの“法則”を挙げる。

1つは「1:5の法則」。さまざまな統計から新規顧客の獲得は既存顧客の維持 (継続購入や追加購入など)と比べて5倍のコストがかかることが明らかになっている。もう1つは「5:25の法則」。顧客離れを5%改善すれば、利益は25%改善されるというものだ。既存顧客には商品説明が不要なことから販売コストが下がる。さらに既存顧客は紹介などで新たな顧客を連れてくることがあるほか、前回よりも高額な商品を次回購入する可能性が高いというのがその理由である。

このように「既存顧客を重視すべき」という考え方はすでに実践知として体系化されている。これがすなわちカスタマーサクセスであり、「事業成長のために企業が絶対に取り組むべき施策です」と杉山氏は説く。

では、どうやってカスタマーサクセスを実践していけばよいのか。杉山氏がもう1つのキーワードとして示すのが「顧客コミュニティー」である。顧客と企業の双方向コミュニケーションを生み出していく場であり、カスタマーサクセスに向けて次のような効果をもたらす。

まず構築初期において、顧客コミュニティーは顧客の疑問や悩みを解消する役割を果たす。良質な情報が自然と蓄積されていくとともに、集まった顧客同士の自発的なコミュニケーションを促していく。「これにより既存顧客のロイヤリティーが高まり、売上も向上します」(杉山氏)

さらに、このコミュニケーションを通じて帰属意識が醸成され、より多くの顧客の“生の声”が集約されていく。「これらは自社商品やサービスに対するお客さまの本音を示したもので、新たなインサイト(気づき)の発掘につながります」(杉山氏)

そして構築中期以降は、UGC(User Generated Content:顧客主導のコンテンツ)がつくられ始め、顧客からの紹介も発生するなどコミュニティー自体のコンテンツ化が進んでいく。「結果として、顧客コミュニティーは新規顧客の獲得ももたらします」(杉山氏)

この絶大なビジネスインパクトをもたらす顧客コミュニティーをノーコードで構築するプラットフォームとして、コミューンが提供しているのが「commmune」だ。法人向けソフトウエア/クラウドサービスのレビューサイトITreviewが主催する「ITreview Grid Award 2023 Winter」において、最高賞のLeaderを2期連続6部門で受賞するなど、同製品はカスタマーサクセスを体現するソリューションとして認知度を高めている。

写真:杉山氏

コミューン株式会社
執行役員CMO/SuccessHub事業責任者

杉山 信弘

ウイングアーク1stが
カスタマー中心主義に向かった理由

数多くの企業がcommmuneを導入することで、カスタマーサクセスに向けた成果を上げ始めている。帳票ツールの「SVF」「SVF Cloud」やデータ分析基盤「Dr.Sum」、BIダッシュボード「MotionBoard」など、国内市場シェアでトップクラスのソフトウエア製品群で知られるウイングアーク1stもその1社だ。

ウイングアーク1stは自分たちのビジネスを取り囲む外部環境や競争環境の変化を捉え、マーケティングテーマのアップデートを行っているが、その中でもトップ項目に位置づけているのが「カスタマーセントリック(顧客中心主義)の実現」である。

そこに向けて舵を切った背景には何があるのか。ウイングアーク1st 執行役員 マーケティング本部 本部長の久我温紀氏は「以前のユーザーは情報武装が進むとともに便利さを追い求めるようになり、それに合わせてプロダクトの価値水準が大幅に向上しました。これに対して現在のユーザーは、より信頼・共感できるプロダクトを選定するなど、価値の方程式そのものが大きく変化しています」と語る。

加えて注目しているのが、リカーリングモデル(継続収益を得るためのビジネスモデル)の普及である。従来のようにモノ(製品)を売って終わりではなく、顧客との関係性の構築および発展がより重要になっている状況を捉えており、実際に同社のマーケティング活動においても「商いの継続」をKPIとして追いかけているという。

さらにウイングアーク1stのようなソフトウエアベンダーにとって、決して無視できないのがPLG(Product-Led Growth)と呼ばれる動向である。直訳すれば「製品主導の成長」となるが、要するにその本質は「営業やマーケティング活動をそのプロダクト自体に取り込むことでビジネスの成長を促していく」ことにある。例えば無償でトライアルできる製品を公開し、その良さをユーザーに体験してもらった上で有償版に誘導する戦略は、典型的なPLGといえる。これまでのように宣伝力や営業力によって製品を売るのではなく、プロダクト自身がその価値をユーザーに直接伝えて購入を促していくのである。

「これまでのように営業プロセスに注力し、プロダクトを説明するのではなく、これからはお客さまの購買プロセスに注力し、プロダクトを使ってもらうことが重要となります。そうした顧客体験の変化に対応したアプローチを考えたとき、当然の帰結としてカスタマーサクセスに向かうことになります」と久我氏は強調する。

こうしてウイングアーク1stは、ビジネスの成長につながるカスタマーサクセスのループを確立すべく、その基盤としてcommmuneを導入した。

写真:久我氏

ウイングアーク1st株式会社
執行役員 マーケティング本部 本部長

久我 温紀

コミュニティーを核に
社内横断の連携プロジェクトも活性化

ウイングアーク1stがカスタマーサクセスに乗り出すのは、実はこれが初めてではない。むしろ競合他社よりも早い時期の2018年に「nest」という独自のユーザーコミュニティーを立ち上げて、顧客との継続的な関係構築を進めてきた。

ところが、この取り組みは期待した成果を上げることができなかった。新規登録が停滞し、アクティブ率も次第に低下していったのである。さまざまな追跡調査を行った結果、原因の一つはFacebookをコミュニティーのプラットフォームとして利用していたことにあった。

「Facebookのアカウントを持っていない、あるいは会社のルールとして業務用端末からのFacebookへのアクセスが禁止されているというユーザーが数多くいました。そもそもSNSであるFacebookは特定のコミュニティーのためのプラットフォームとして設計されているわけではなく、特定のユーザーにとって有益な場所にはなっていなかったのです」と久我氏は振り返る。

そこでユーザー設定による属性情報別の情報発信やポイント機能など、コミュニティーに特化した機能を実装した専用プラットフォームに的を絞って選定を進めた結果、commmuneの導入を決定したのである。

こうしてウイングアーク1stは、これまで各製品の最新情報や活用事例、イベント情報などの発信を担ってきた「WingArc Membership」と、ユーザーコミュニティーのnestの2つに分かれていた活動をcommmuneで統合。22年7月8日、新生nestとしてリニューアルオープンした。

写真:久我氏と杉山氏

これを契機に、新たなワーキンググループの発足やユーザー自走型の交流、コロナ禍におけるオンラインでの交流活動支援など、カスタマーサクセスに軸足をおいたマーケティング活動が一気に活性化。象徴的な動きとして「あるユーザーからの質問に対して弊社のメンバーよりも早く、多くのユーザーから回答が寄せられるなど、ユーザー同士の“助け合いの場”としての活動が広がっています」と久我氏は語る。

ウイングアーク1stはcommmuneを導入するにあたり、「各種イベント情報や活用コンテンツ、頼りになるユーザーなど、ここに来ればすべてに出会うことができるコミュニティーをつくりたいと考えました」と久我氏は語るが、まさにその狙いどおりのコミュニケーションの集約を実現できたと言えよう。

実際、nestは以前との比較で、登録ユーザー数340%増(20年:692名→22年:2355名)をはじめ、イベントの平均参加人数440%増、ユーザーアンケート回答率200%増、製品認知度190%増といった驚異的な伸びを示している。

また想定外のうれしい出来事として、nestを通じて新たな商談機会が生まれているほか、マーケティングチーム以外の社内のさまざまな部門のメンバーも参加したコラボレーションが起こっている。「マーケティング本部、CX統括部、CR統括部(直需創出営業)を横断した連携プロジェクトに発展しているものもあり、これはユーザーコミュニティーがなかった頃には考えられなかった動きです」と久我氏。

さらに、ユーザー向け施策の共有、オンライン相談会の共同開催、ユーザー向けコンテンツの掲載先整備、ユーザーイベントの共同企画、アクティブユーザー情報の共有、ロイヤルカスタマーの育成など、「すべてはユーザーの成功のためのプロセス」がnestを中心に始動しているという。

コミューンの杉山氏はウイングアーク1stにおける一連の取り組みを「カスタマーサクセスを追求するすべての企業が参考にするべき事例」と高く評価しつつ、コミューンとしても「お客さまとさらに深くつながるコミュニティーを構築したい」「ユーザーの力をもっと経営に活かしたい」と考える企業を、今後も積極的に支援していく考えだ。

写真:久我氏と杉山氏
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