三菱地所リアルエステートサービス株式会社

スペシャリストたちの提言 企業戦略を考える

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Vol. 28 日経産業新聞フォーラム スペシャリストの智 CREカンファレンス 2020-2021・リポート この時代だから見えてくる
成長戦略とは

三菱地所リアルエステートサービスが協賛する恒例イベント「日経産業新聞フォーラム スペシャリストの智 CREカンファレンス」。2021年は1月、オンライン開催のセミナーで、現政権の成長戦略会議メンバーでもある経済学者、竹中平蔵氏が、コロナ禍を乗り超えていく日本経済のポテンシャルを語った。経営コンサルタントの藤沢久美氏と三菱地所リアルエステートサービスの湯浅哲生社長による対談ともあわせて紹介する。

PART1 特別講演 生き残る企業の成長戦略

慶應義塾大学 名誉教授/東洋大学 教授

竹中 平蔵

経営課題
  • 経営戦略
  • 事業戦略・立地戦略
  • 資産管理

今こそ、俯瞰の視点で状況を見定め、
誰よりも早く変化しよう

 コロナ禍で世界経済は逆境に見舞われているが、こういうときこそ、「バルコニーから俯瞰(ふかん)するような視点で状況を見定めることが大切だ」という竹中氏。必要に迫られるかたちでの選択ではあるものの、日本企業はリモートワークやデジタル化を推進せざるを得なかったが、その経験は今後の業績回復でも重要な役割を果たすという。

 そもそも日本企業はテクノロジー、マネー、人材リソースを備えており、それが有効に生かせなかったのは、規制などの硬直的な仕組みがあったから。企業のポテンシャルを引き出すような規制改革、構造改革がさらに進むかどうかが、これからの決め手になると、持論を展開する。

 企業自らの変化も重要だ。実際、飲食産業は大きな打撃を受けたが、テイクアウトなどにうまく対応したところは意外と売り上げが減らなかった。働き方を見直しリモートワークを増やしたところ、学校でも遠隔授業を以前から準備していたところは、事態に柔軟に対応できた。危機に際して柔軟にかつスピーディーに変化する種こそが生き延びるというのは、ダーウィンの進化論を引用するまでもなく真実だ。

 「変化を促す強いリーダーシップと、そのリーダーを信頼して行動を起こすフォロワーシップの両方を持つ企業こそが、この時代には強い」と氏は語る。

 一方で、コロナ禍にかかわらず、株式や不動産市況は活発だ。消費の落ち込みで行き場を失ったグローバル・マネーが株式や不動産に流れており、世界の都市別比較でもとりわけ東京の不動産が注目されている。

 不動産の資産価値はこれからますます高くなると竹中氏は見ている。同時にもう一つの投資対象として挙げるのが、データベース、研究開発、人材・組織といった無形の資産だ。「この無形資産に着目し、積極的に投資している企業はやはり強いし、企業成長に欠かせないリーダーシップとフォロワーシップの信頼関係のベースもそこから醸成されている」とした。

 コロナ禍が後押しした日本企業のDX(デジタル・トランスフォーメーション)。新設デジタル庁のリーダーシップ、5GなどIT(情報技術)インフラのさらなる進展やスマートシティー構想の始動にも注目だ。「できれば3月末ぐらいまでに第一次スーパーシティーの候補地を決めたい。そこでは企業にも積極的にチャレンジしてほしい」と竹中氏は呼びかける。「経済危機で変化が急速に進む時代は、それだけチャンスがあるということでもあり、同時に、企業間の格差が明確になる時代でもある。コロナ禍を乗り越えて、新たな成長に向けてチャレンジしていだきたい」と発言を締めくくった。

笑みを浮かべる竹中氏の写真
竹中 平蔵(たけなか へいぞう)
慶應義塾大学 名誉教授
東洋大学 教授
 1951年生まれ。博士(経済学)。一橋大学卒業。ハーバード大学客員准教授、慶應義塾大学総合政策学部教授などを経て2001年、小泉内閣の経済財政政策担当大臣、金融担当大臣、総務大臣などを歴任。現在、公益社団法人日本経済研究センター研究顧問、アカデミーヒルズ理事長、(株)パソナグループ取締役会長、オリックス(株)社外取締役、SBIホールディングス(株)社外取締役などを兼職。
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