働く人とそのご家族のための健康講座

  • 01 胃がん
  • 02 がん治療と緩和ケア
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提 供:第一三共株式会社

今回のテーマ「胃がん」早期発見が何より大切 今回のテーマ「胃がん」早期発見が何より大切

かつて日本人のがんの死亡数、第1位が胃がんでした。
しかし近年、多くの方が胃がんを克服し、社会復帰を果たしています。
胃がんの診断・治療方法の向上が大きな役割を果たす中、
がん研究会有明病院・病院長の佐野武先生は、早期発見が何よりも重要であると指摘しています。

POINT 01

主原因はピロリ菌

胃がんとはどういう病気ですか。症状や特徴を教えてください。

多くのがんは早期では、自覚症状がほとんどありません。ところが胃がんの場合、「空腹時に胃がしくしく痛む、食事をとると改善する」など、胃潰瘍と同様の症状が早くから表れることがあります。これは胃がんの初期段階で、がんの部分が一部崩れ、潰瘍ができるからです。

こうした症状でクリニックを訪れ、内視鏡検査で胃がんが見つかる患者さんが少なくありません。ところが、昨年から続く新型コロナウイルス感染症の影響で、軽い胃痛なら、病院へは行かず、市販薬で済ます方が増えています。薬で潰瘍は治り、痛みは消えますが、がん自体は消えずに育ちます。受診控えで、胃がんを早期発見する機会が失われてしまうことが心配です。

一方で、早期には症状が出ない患者さんもたくさんいます。2年に1度は検診を受けるとよいでしょう。

胃がんの原因を教えてください。

ヘリコバクター・ピロリ(ピロリ菌)が主原因です。過去には、塩辛い食べ物とか、魚の皮の焦げ、漬物なども主な原因と考えられたことがあります。しかし、これらはピロリ菌の毒性を強める働きはあるものの、あくまで従であり、主はピロリ菌です。

以前、胃がんは世界で一番多いがんでした。しかし、欧米を中心としてピロリ菌が急激に減少し、これにともなって胃がんは激減しています。日本も減少傾向にありますが、いまだにがんでの死亡数を見ると、男性で2位、女性で4位のがんとなっています。胃がんと診断される日本人は年間12万~13万人、年齢で見ると50歳前後から増えはじめ、発症平均年齢は70歳くらいになります(図1)。

ピロリ菌は幼児期に感染がおこるのですが、衛生環境の改善などから、今の若い世代ではピロリ菌を持たない人が多く、胃がんは今後さらに減少していくと思われます。

(図1)年齢階級別胃がん罹患(りかん)率

(図1)年齢階級別胃がん罹患(りかん)率

出典:国立がん研究センターがん情報サービス「がん統計’21」(全国がん登録)・「胃がん」年齢階級別胃がん罹患率

除菌はどのようにするのでしょうか。

プロトンポンプ阻害薬(酸を抑える薬)に2種類の抗生物質を1週間併用する3剤併用療法で約8割の患者さんが除菌に成功します。不十分な場合は、また別の薬を服用します。ピロリ菌は胃がんだけでなく、他の病気の原因にもなりますから、積極的に除菌するとよいでしょう。デメリットはあまりなく、強いて言えば胃の粘膜が元気になって胃酸が増え、逆流性食道炎のリスクがやや高まることが挙げられます。ただし、成人になって除菌しても胃がんにかかるリスクがなくなるわけではありませんので検診は必要です。

POINT 02

治療の中心は手術による切除

胃がんの治療法を教えてください。

病期(ステージ)ⅠやⅡの胃がんの場合、手術による切除が主な治療法になります。胃がんは、他の部位のがんに比べて早期からリンパ節に転移します。そこで、リンパ節を含めて切除することが重要です。

ただし非常に早期の胃がんで、リンパ節への転移がないと想定される場合は、内視鏡による切除で済みます(図2)。また高齢者など手術に耐える体力が十分でない患者さんでは、転移リスクとのバランスを考えて内視鏡切除を選択することもあります。

(図2)内視鏡検査・手術の様子

(図2)内視鏡検査・手術の様子

(図2)内視鏡検査・手術の様子

抗がん剤の役割を教えてください。

食道がんなどでは、抗がん剤と放射線療法との併用でがんを消滅させることができるケースもありますが、胃がんの場合、外科的手術なしでの治癒は今のところ困難です。そして手術の補助的手段、あるいは再発を防ぐために抗がん剤が重要な役割を果たします。

現在、術前に抗がん剤を使い、がんを小さくしてから切除する“術前化学療法”も注目されています。胃を摘出すると食事の量が減って体力が落ち、抗がん剤による副作用が強く出る可能性が高くなりますが、胃の切除前なら抗がん剤を十分に投与できると期待されるわけです。進行した胃がんの多い欧米では術前化学療法が主流ですが、術後の抗がん剤を上手に使う日本では、まだ術前化学療法のエビデンスがありません。

また現在、がん治療全般で免疫療法が注目されていますが、胃がんの場合当面は手術の補助手段までに限られると思います。

術後の生存率を教えてください。

胃がんの場合、治療後の生存率は発見時のステージでほぼ決まります。例えば、ある国の胃がん生存率が80%、もう一方の国が50%というとき、これは治療技術の差ではなく、早期発見・治療できた人の割合の差だと考えるのです。ステージⅠで見つかった人は約95%、ステージⅡをあわせても適切に抗がん剤を使うことで約90%は治癒が期待できます(※)。治療そのものも小さく済むことになりますから、早期発見が何よりも大切というわけです。

検診には、内視鏡検査と胃部エックス線造影検査(バリウム検査)が広く行われています。中でも内視鏡検査は、より確実に胃がんを発見できます。日本は内視鏡検査が世界で最も受けやすい国です。ご家族や大切な人たちのためにも、早期発見のための検診をお勧めします。

※国立がん研究センターがん情報サービス「がん統計‘19」(全国がん登録)・がん診療拠点病院等における5年生存率(2009~2010年診断例)

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