提供:デロイト トーマツ コンサルティング

デロイト トーマツ
コンサルティング合同会社
マネジャー

渡邊 智昭

デロイト トーマツ
コンサルティング合同会社
ディレクター

時岡 章一

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大林 謙太

「ライフサイエンス業界のDX」を加速させるためのケイパビリティー

あらゆる産業・分野でデジタルトランスフォーメーション(DX)推進の動きが加速するなか、日本の医療・製薬業界はこれまで医療従事者との接点が中心のビジネスモデルを続けてきたため、最終顧客である患者視点のサービスの検討ができていなかった。また、部分最適のデジタル化から抜け出せず、患者起点のデータの取り扱いや収集が道半ばの状況でもある。そのような状況では各種システムやデータの分断が発生し、情報の連携・共有がうまくできず、患者視点の効果的な医療サービスを提供するのは難しい。こうした課題を解決して製薬業界のDX推進を支援しているのが、デロイト トーマツ コンサルティング(DTC)の「Connected Health」だ。患者と医療機関、製薬企業をデジタルでつないで、患者中心のヘルスケアを実現するConnected Healthの内容やDTCが持つケイパビリティーについて、担当者に聞いた。

製薬業界を取り巻くデジタル変革の課題

―― DXの実現に向けた取り組みが進むなか、日本の製薬業界はデジタル変革が遅れ気味という印象を受けます。日本の製薬業界にはどのような課題がありますか。

大林 主な課題として次の3つが挙げられます。1つは「業界特性」です。日本の製薬業界は非常に多くのレギュレーションやコンプライアンスが求められており、企業・組織が横並びになって保守的な立場で事業を展開しています。そのためにDXやデジタル変革といった先進的な取り組みに対して足踏みしているところが見受けられます。

 2つ目は「ビジネスモデル」です。製薬業界は長年にわたり、主要顧客である医療機関の医療従事者との対面による営業活動を通じて事業を拡大させるというビジネスモデルで成長を遂げてきました。ここにデジタルを取り入れるとなると、医療機関だけではなく患者を含んだステークホルダーを巻き込んだ検討が必要となるため、デジタル変革の取り組みが道半ばになりがちです。

 3つ目は「人材不足」です。製薬業界は既存のビジネスモデルを重視してきたこともあり、デジタル変革を推進する人材が圧倒的に不足しています。

 これらが日本の製薬業界のDXを遅らせる要因になっています。

 とはいえ、日本の製薬業界がデジタル変革にまったく取り組んでいないわけではありません。例えば医師や患者に対する情報提供やマーケティングといった領域については、個別最適化されたテクノロジーが活用されています。しかしながら、患者の医療データを収集・活用しながらコミュニケーションを図るという、一歩踏み込んだアプローチが出遅れていると言えるでしょう。

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渡邊 智昭

―― それらの課題は、適切な医療サービスを求める患者に対してどのような影響を及ぼしますか。

時岡 患者の医療データを蓄積し、リアルタイムに連携することができれば、過去の健康状態や病歴を見て疾病の重症化の予防につなげることが可能です。最近は健康管理に利用できるデバイスやアプリも数多く登場しているので、それらのデータとうまく連携させ、罹病リスクの高い人に情報提供を行う基盤は整っていますが、実際には広く活用されていると言えない状況です。例えば製薬会社は患者向けのアプリやメディアを持っているケースもありますが、患者は複数の製薬会社が提供する医薬品を服薬することも多いため、包括的に患者の医療データを蓄える必要があります。結局は患者自身が医師や薬剤師の指導を得て、製薬会社から提供される複数の情報を登録・管理しながら服薬しなければならないという状況にあります。

―― 課題解決に向け、製薬業界ではどのような動きが見られますか。

渡邊 患者に対して適切な医療サービスを提供するには、製薬業界だけでなく、行政や医療機関、医薬品販売や服薬指導を行う調剤薬局など、さまざまなステークホルダーを巻き込んだ取り組みが必要になります。すでに産官学と医療機関が連携し、患者数が限られた特定の疾病を対象にデータを蓄積・共有するという小規模な実証実験が各地で始まっています。

 ただし、データ共有の仕組みを用意したとしても、それぞれのステークホルダーにとってはベネフィットや収益が見えづらいという新たな課題があります。例えば製薬会社にとっては患者が治療を中断しないようにすることで継続的な医薬品の売り上げに貢献し、行政にとっては住民の健康を維持することで医療費の削減が期待できますが、現時点においてはすべてのステークホルダーのベネフィットや収益につながる明確かつ理想的なモデルケースは出来上がっておらず、プロローグコンセプトのフェーズにある状況です。

患者視点での医療体験向上を実現する
Connected Health

―― 製薬業界のDX推進を支援するために、DTCは「Connected Health」を提供しています。DTCにはどのようなケイパビリティーがあり、Connected Healthはどういった経緯から生まれたのでしょうか。

渡邊 DTCのケイパビリティーは大きく2点あります。1つは、製薬業界を含むライフサイエンス/ヘルスケア業界に特化した専門家やデジタル技術に特化した専門家が在籍し、患者中心医療という世界観の実現に向けて協働しているところです。ライフサイエンス/ヘルスケアの専門家にはもともと医療従事者だったメンバーも含まれており、患者や疾病ごとに異なる特性に対し、どのような課題があってどのような体験を提供するべきかといった構想をデザインできるケイパビリティーがあります。

 もう1つは、そうした構想を実現していくための“術(すべ)”を持っているというケイパビリティーです。グローバルで幅広くビジネスを展開するDTCは、オペレーションやシステムのデザイン、アプリケーションの開発・運用・拡張をエンドツーエンドで実現する体制を有しています。これはDTCの大きな強みであると自負しています。

 これらのケイパビリティーに加え、製薬業界の課題を解決してきたグローバルの知見が起点となって生まれたのがConnected Healthです。DTCではこれまでも製薬業界向けに、どのようなチャネルで、どのようなメッセージを、どのタイミングで届けるのか、といった医療従事者向けのマルチチャネル/オムニチャネルの戦略立案や実行支援のサービスを手がけてきました。しかし、そうしたサービスだけでは直接的に患者のQOL(Quality of Life)や疾病の完治に寄与することはできません。そこで患者を取り巻くステークホルダーがデジタルで双方向につながり、収集したデータを活用したさまざまなサービスを通じて患者に価値を還元すべきと考え、Connected Healthというサービスにまとめました。

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大林 謙太

―― Connected Healthでは、具体的にどのようなサービスが提供されるのでしょうか。

大林 Connected Healthでは患者エンゲージメントをどのように実現していくのか、患者を取り巻くステークホルダーに対してどのようなベネフィットを提供するのかといった構想をデザインするサービスを提供しています。一方で、患者の医療データをステークホルダー間で連携・共有・活用するためのプラットフォームも必要です。ここには製薬会社や医療機関から患者に対する情報提供だけでなく、例えば希少疾患を持つ患者同士が意見交換できるコミュニティー、服薬や悩みを相談するコンタクトセンター、患者自身が目標を設定するケアプログラム、医療機関のオンライン診療や調剤薬局の服薬指導といったさまざまなサービスが含まれます。

 ただし、必ずしもすべてのサービスが必要というわけではなく、患者に対して何を提供するのかを設定したうえでサービスを選んだり、バイタルデータを取り込むなどサービスを拡張したりすることも可能です。また、製薬会社や医療機関向けに患者の利用状況や服薬情報のモニタリング、ケアプログラムの管理といったバックオフィス機能も用意しています。

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ディレクター

時岡 章一

製薬業界のDXを支えるDTCの人材

図:製薬業界のDXを支えるDTCの人材

―― ここまで日本の製薬業界が抱える課題、その解決策となるDTCのConnected Healthについて紹介いただきました。DTCにはそうした製薬業界のDXを支援する多数の人材が在籍していますが、その中の主力メンバーでもある大林さん、時岡さんの経歴やDTCへの入社を決めた理由などをお聞かせください。

大林 私はシステムインテグレーターで10年、システム開発を経験したのち、2018年にDTCに入社しました。システムインテグレーターの仕事は顧客企業に対してソリューションを提供することに限られてしまいます。そうではなく、社会課題を解決する仕事に取り組めるような企業で働きたいと考え、DTCへ転職しました。

 現在は外資系製薬会社のCRM(顧客管理システム)を刷新するプロジェクトをリードしています。このプロジェクトは医療機関や医師とのコミュニケーションや体験を最適化するという命題を掲げ、CRM起点でデジタル変革に取り組むというものです。将来的には蓄積したデータを活用して創薬・R&Dや医師への情報還元に活用できる仕組みを目指しています。

時岡 私はERPパッケージベンダーに7年間勤務したのち、ITベンチャー、外資系コンサルティングファームを経て2020年にDTCに入社しました。前職でも製薬業界向けテクノロジーを担当していたこともあって、日本の医療モデルの改善に貢献したいと考え、ライフサイエンス/ヘルスケアビジネスに注力するDTCに転職しました。

 現在は製薬会社のCRM領域のプロジェクトマネージメントをはじめ、さまざまな業務を担当しています。この業界は風穴一つ開けるのも大変ですが、社会的なインパクトをもたらすことを目指して地道に業務に取り組んでいます。

―― 今後、どのような人材を仲間として迎えたいと考えていますか。

大林 コンサルティング会社の仕事は、答え合わせや答え探しではなく、答えをつくり出すことにフォーカスしていると思っています。DTCにはグローバルで30万人以上のプロフェッショナルが在籍し、とくにライフサイエンス/ヘルスケア分野では非常に強力な知見を有しています。バックグラウンドを問わず、自分の能力を発揮したいという人に、ぜひ仲間に加わってほしいですね。

時岡 DTCではプロフェッショナルとして働くことになりますが、一人で仕事をすることはなく、常にチームとしてメンバー同士が補完し合いながら活動しています。ライフサイエンス/ヘルスケア分野の経験者に限らず、さまざまなケイパビリティーを持った人を広く仲間に迎えたいと思います。

―― ありがとうございました。

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