デジタル×教育 子どもたちへ、何ができるのか

ICTで導く、教育の未来

デジタル技術を活用する力を育むべく文部科学省が掲げた「GIGAスクール構想」は、1人1台端末を達成。より主体性を培うためのICT(情報通信技術)活用を目指し、構想は次のステップに移る。機器の普及や教材のデジタル化を果たした今、さらなるICT教育の促進に向けた「NEXT GIGA」へとステージは移行している。今後は、人材不足や自治体間格差の解消が課題だ。国や自治体、民間企業と学校との連携強化も欠かせない。

文部科学省や経済産業省では、生徒児童の主体性を育てるため、多様な学びができる環境づくりを推し進めている。各省の担当者に、学校教育デジタルトランスフォーメーション(DX)の最新動向を聞いた。

教育をとりまくICT環境

変わる社会、求められる思考力

電子決済やIoT家電など、ICTは身近になった。技術の進歩に伴い、社会構造も変化している。先行きが不透明で予測不可能な「VUCA(ブーカ)」の時代といわれる今、次世代の人材に求められるのは、単に情報や技術を利用するだけでなく、主体的に活用し、個人や社会の可能性を開く力だ。

社会の変化に合わせ、学校教育のあり方も見直されている。画像や動画教材による視覚的な学び、クラウド上での共同編集やビデオ会議による意見交換などにより、子どもの興味関心を広げ、思考力を深める教育が重視されるようになった。

ICT教育は「NEXT GIGA」へ

日本では2001年からIT(情報技術)教育体制の強化に動き出していたが、機器の導入や事例の浸透に課題が残った。こうした問題意識を踏まえ、文部科学省が教育におけるICT活用を促進すべく、19年に掲げたのが「GIGAスクール構想」だ。学校内のWi-FiやLAN整備への補正予算が組まれ、総務省や経済産業省など、各省でも補助事業が措置された。

20年の新型コロナウイルス感染症拡大による一斉休校の影響で、構想は大幅に前倒し。23年度には、全自治体での1人1台端末の実現に至った。

学校×基礎学習の価値、再認識

寺島史朗氏の写真

文部科学省 初等中等教育局学校情報基盤・教材課長 学校デジタル化プロジェクトチームリーダー寺島 史朗

日本の学校教育の現状をどうとらえていますか。

昨年、経済協力開発機構(OECD)が発表した学習到達度調査(PISA2022)では、日本は81カ国中トップクラスの成績となりました。この背景には、ICT機器を活用した授業改善が進んでいることや、新型コロナウイルス感染症による休校期間が他国より短かったことなどが影響したと示唆されており、GIGAスクール構想の方向性は間違っていないこと、そして、改めて「学校」というリアルの場で得られる学びの価値を認識しました。

GIGAスクール構想の次の課題は何でしょう。

これまでは、まずはアナログで行ってきた作業をデジタル上に置き換えることから始まりましたが、1人1台端末が整備された今、このツールを最大限に活用して、学習進度や内容の個別最適化、他者との協同的な学びの充実といった、学び方のパラダイムシフトが求められます。多様で先進的な学習方法を取り入れるだけでなく、基礎・基本の定着も欠かさずに、主体的、対話的で深い学びの素地を築いていくことが重要です。

企業や住民を含む地域社会に期待することはありますか。

ICT機器の利活用に地域や学校間で格差が生じつつあることも課題の一つです。社会全体で児童生徒の将来を支えていけるよう、教育関係者以外の多くの人にも、変わりつつある学校教育の現状を知ってもらいたいと考えています。ICT機器をうまく活用している学校は1人の意欲ある教師が主導しているのではなく、学校全体で認識を共有し、様々な外部の力も活用しながら、改革に取り組んでいます。文部科学省では好事例の展開にも注力しているので、参考にしてもらえればと思います。

自主性育む「ビュッフェ」型の学びへ

五十棲浩二氏の写真

経済産業省 商務・サービスグループ サービス政策課 教育産業室長五十棲 浩二

教育現場のデジタル活用の状況をどう見ますか。

GIGAスクール構想で1人1台端末が実現したことで、日本は海外と比べても、ICTを活用した学びを提供する優れた環境が整いました。一方、ICTの利用率は上がっていますが、自主的に調べものをしたり、創作活動に使ったりといった面では途上段階にあります。学校卒業後の社会では、様々な選択を迫られる場面が多くなります。「与えられた学び」に取り組むだけではなく、ICTも活用しながら、多様な選択肢の中から自らの学びを選択し、探究することが今後は不可欠だと考えています。

経済産業省が果たすべき役割をどうとらえますか。

越境を促し、選択肢と出会いの機会を増やすことです。学校の垣根を越え、企業や地域コミュニティーとの関わりによって、子どもたちが選択できる学びの幅も増えていきます。文部科学省の掲げる「社会に開かれた教育」と軌を一にしながら、地域社会、産業界との連携を進めたいと考えています。

これからの教育には何が必要でしょう。

これまでの教育はあえて言えば、あらゆる要素を盛り込んだ全員一律の「幕の内弁当」的な面があります。今後、自ら選び取る「ビュッフェ」的な学びへ転換し、教員はその選択をサポートすることが求められます。それには、デジタル技術の利活用が欠かせません。次世代の人材育成支援に意欲ある企業や個人と教育現場とを結ぶ、エコシステムの構築も目指しています。

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