FinCity Global Forum グリーン国際金融都市・東京の未来

採録

世界的にグリーン競争が激しさを増し、日本は2050年のカーボンニュートラル、脱炭素社会の実現を目指す。その道筋が模索される中、東京国際金融機構(FinCity.Tokyo)と日本経済新聞社は2月2日、グリーン国際金融都市・東京をテーマにオンラインでシンポジウムを開催。国内外の専門家、関係者が様々な角度から議論を交わし、金融の力で脱炭素を支援し、東京からアジア全体の持続的成長に貢献することが重要と訴えた。

主催:一般社団法人 東京国際金融機構(FinCity.Tokyo) 共催:日本経済新聞社 後援:金融庁

開会挨拶

中曽 宏氏

「グリーン国際金融都市・東京の未来」

中曽 宏

東京国際金融機構(FinCity.Tokyo) 会長

アジア企業の資金調達支えよ

2050年のカーボンニュートラルが目標となり、政府が掲げた日本の国際金融センター構想は、金融の力で脱炭素を支援することを目的としたグリーン国際金融センター構想へと進化した。これに合わせて東京都は、グリーン化・デジタル化への対応を金融面から支援する「国際金融都市・東京」構想2.0を発表した。日本の国際金融センターが目指すべきは、日本とアジアの企業のファイナンスの場として機能していくことだ。東京が独自の役割を果たすことで、アジア全体の脱炭素化と持続的な成長に貢献できるだろう。

基調講演1

木原 誠二氏

「サステナブル資本主義を推進するための国際金融都市」

木原 誠二

内閣官房副長官

移行債市場、着実に育成

「新しい資本主義」における最大の課題の一つがカーボンニュートラルだ。政府はすでに2兆円のグリーンイノベーション基金を活用して具体的に動き始めている。昨年の骨太の方針には、グリーンボンド取引を促進するためのグリーン国際金融センター実現への取り組みを明記した。適格性を認証する枠組みの構築、発行情報を集約するプラットフォームの整備を着実に進め、トランジションボンド(移行債)市場を育成していく。スタートアップの創出も重要で、5カ年計画を策定して官民連携によるスタートアップの大幅増を目指す。

基調講演2

黄川田 仁志氏

「資産運用業に対する期待と資産運用高度化に向けた金融庁の取組み」

黄川田 仁志

内閣府副大臣(金融担当副大臣)

資産運用力の強化から後押し

金融庁は資産運用会社の運用力強化に向けて、顧客利益優先のガバナンス、経営体制、目指す姿・強みの明確化、運用重視の業務運営体制の視点から、資産運用会社と対話を重ねてきた。また、パフォーマンスとコストの課題、同一ベンチマークに連動するインデックスファンドの手数料のばらつきなどを指摘するとともに、ESGファンドが一般のファンドと中身が変わらないとの懸念を踏まえ、資産運用会社と議論を継続している。資産運用会社の運用力強化が国際金融都市・東京の実現につながる。金融庁も業界の前向きな取り組みを後押しする。

基調講演3

山道 裕己氏

「国際金融センター東京とJPX」

山道 裕己

日本取引所グループCOO/東京証券取引所 社長

市場の活性化と
サステナビリティの推進

東京証券取引所は、海外投資家の売買高シェアが約6割を占める流動性が高い市場であり、さらに活性化すべく4月に市場区分を再編する。昨年6月のコーポレートガバナンスコードの改定は、取締役会の機能発揮、多様な人材登用、気候関連情報開示の質・量の拡充、英文での情報開示・提供等がポイントだ。サステナビリティーに関しては、上場会社向けの取り組み支援やESG関連商品の提供等を実施、さらにJPXグループ全体でカーボンニュートラルの達成目標を発表し、課題解決に取り組む。

パネルディスカッション1

「国内における高度金融人材の採用活性化と 金融業の魅力」

パネルディスカッション1

パネルディスカッション1 左から柳澤氏(進行)、三嶋氏、上原氏、尾崎氏、野中氏、井谷氏

三嶋 英城

SMBCクラウドサイン
代表取締役社長

上原 玄之

Symphony アジアパシフィック地域
戦略・企画担当

尾崎 由紀子

野村ホールディングス株式会社
執行役員 グループ人事担当/
野村證券株式会社
執行役員 人事兼人材開発担当

野中 瑛里子

一般社団法人Fintech協会 事務局長/
合同会社N.FIELD代表

井谷 太

三井住友信託銀行
取締役専務執行役員

〈進行〉 柳澤 誉之

リクルート HRエージェントDivision ハイキャリア・グローバルコンサルティング マネジャー

専門性持つ多様な人材の還流を

国内金融産業の展望はネガティブに捉えられがちであるが、こうした閉塞感を打破すべく、銀行・証券業界では、既に、シニア人材や女性の活躍推進、異業種からのキャリア採用の導入、先進的な社員教育など、改革に向けた取り組みを着実に進めている。また、金融業界のリスク管理の厳格さと厚い顧客基盤は、飛躍への大きなポテンシャルでもある。専門知識をもった多様な人材が、金融機関やフィンテック等スタートアップ企業を流動的に行き来することで、金融はさらに進化する。そういった土壌の整備を、業界一丸となって進めていくことが重要。

パネルディスカッション2

「文化芸術×国際金融都市」

パネルディスカッション2

パネルディスカッション2 左から鈴木氏(進行)、武田氏、東海林氏、原氏

武田 文志

観世流能楽師

東海林 正賢

KPMGコンサルティング株式会社
フィンテック・イノベーション パートナー/
一般社団法人オルタナティブデータ推進協議会
代表理事

原 朋直

ジャズトランペット奏者/作曲家/バンドリーダー/
洗足学園音楽大学教授 ジャズコース代表

〈進行〉 鈴木 ともみ

経済キャスター

アート発イノベーション創出へ

世界の金融都市では文化芸術が旺盛。各都市では、業種横断的に多様な才能が集結・融合し、イノベーションの創出と都市成長の原動力となっている。能楽に代表される伝統的芸術からJAZZのような異文化の融合から生み出された音楽まで、多彩な文化芸術を堪能できるのは日本の強み。また、国内では、パーパス等新しい視点での経営理念が問われ、アート思考等のアプローチや文化芸術の持つ可能性に対する関心が高まっている。国際金融都市構想の進展により、日本の文化芸術の内外展開が加速されることも期待される。

パネルディスカッション3

「脱炭素社会の実現に向けた
グリーンファイナンスの推進」

パネルディスカッション3

パネルディスカッション3 左から小平(進行)、西村氏、森氏、末廣氏、大澤氏

西村 和浩

東急不動産ホールディングス執行役員/
東急不動産執行役員

森 敦仁

FTSE Russell サステナブル投資部門
日本代表

末廣 孝信

三井住友銀行 ホールセール統括部
サステナブルビジネス推進室 部長

大澤 晶子

日本生命保険 取締役執行役員

〈進行〉 小平 龍四郎

日本経済新聞社 論説委員 兼 編集委員

ネットゼロへ資金需要支える

2050年のネットゼロ達成には今後10年の設備投資や技術開発が重要で、そのための資金需要は兆円単位に上ると見込まれる。ESGファイナンスを積極的に活用して脱炭素に取り組む企業も増え、サステナブルファイナンスは大きく伸びている。実効性を高めるには、機関投資家と投資先とのエンゲージメントを深めることが重要。企業は資金を調達するだけでなく、それがきちんと役割を果たしているか投資家にフィードバックする必要がある。グリーン国際金融都市・東京の発展には、「グリーン」「トランジション」の定義の明確化や第三者認定取得の支援、積極的な情報開示が求められる。

パネルディスカッション4

「サプライチェーンファイナンスの高度化による中小企業の強靭化」

パネルディスカッション4

パネルディスカッション4 左から玉木(進行)、神崎氏、藤本氏、家田氏

神崎 忠彦

中小企業庁 事業環境部金融課長

藤本 守

SBIホールディングス
執行役員 ブロックチェーン推進室長/
SBI R3 Japan 代表取締役CEO

家田 明

マネーフォワードケッサイ 取締役会長

〈進行〉 玉木 淳

日本経済新聞社 金融エディター

共通EDIなど官民連携で

伝統的な決済手段であった手形は、振出・受取双方に問題が多く、2026年廃止方針を控え、中小企業共通EDIの普及による受発注から決済まで一気通貫のデジタル化が目指されている。他方、銀行融資を受けられない中小企業も存在し、売掛債権のファクタリング業者への売却による資金調達(オンライン型ファクタリング)、ブロックチェーンにより供給網を可視化し、発注元の信用力を使い末端サプライヤーまで資金繰りを支援する製品も登場している。デジタル化の恩恵を中小企業が享受できるためにも、サプライチェーンのデジタル化に向けた官民連携が求められる。

パネルディスカッション5

「国際金融都市としての未来
〜FinCity.Tokyo
アンバサダーが語る〜」

パネルディスカッション5

パネルディスカッション5 左からギャリー・スタントン氏(進行)、河合氏、ローラン・デュプス氏、
イェスパー・コール氏、デービッド・セマイヤ氏

河合 祐子

Japan Digital Design 代表取締役CEO

ローラン・デュプス

SMBC信託銀行 取締役

イェスパー・コール

カタリスト投資顧問
シニア・グローバル・アドバイザー

デービッド・セマイヤ

三井住友トラスト・アセット
マネジメント 会長

〈進行〉 ギャリー・スタントン

国際銀行協会 事務局長

グリーンファイナンスに好機

過去にもあった東京国際金融構想だが、今回は政治的覚悟がある。滞留する個人金融資産2000兆円が市場に出てくれば運用会社にとっては大きなチャンスであり、独自の運用商品を持つ外国の運用会社にもぜひ来てほしい。日本の強固な産業基盤や成長のエンジンとしてのアジアと密接な点も東京の強みだ。アジアの他の金融センターと競争するのではなく、補完することによりアジアの脱炭素にも寄与できる。日本で法規制の運用が徹底している点は、グリーンウォッシュを防止し、信頼性の高いグリーンファイナンス市場形成につながるだろう。

パネルディスカッション6

「コロナ後の国際金融都市間の連携について」

パネルディスカッション6

パネルディスカッション6 左上からNicolas Mackel氏、Jochen Biedermann氏(進行)、
Philippe Richard氏、Arnaud de Bresson氏、有友

Nicolas Mackel

CEO of Luxembourg for Finance,
the Agency for the Development of
the Financial Centre

Philippe Richard

Executive Director, International Affairs Financial Services Regulatory Authority of Abu Dhabi Global Market

Arnaud de Bresson

パリ・ユーロプラス CEO

有友 圭一

東京国際金融機構(FinCity.Tokyo) 専務理事

〈進行〉 Jochen Biedermann

Managing Director, World Alliance of International Financial Centers (WAIFC)

国際金融都市間は
競争しつつも連携が重要

FinCity.Tokyoは、国際金融都市連盟(WAIFC:World Alliance of International Financial Centers)に加盟している。このセッションでは、WAIFCに加盟しているパリ、ルクセンブルク、アブダビの金融都市プロモーション組織の責任者とWAIFCの事務局長が登壇した。WAIFCでは、各国の様々な社会課題を解決するための、共同調査・研究、事例紹介などを実施している。また、各国の金融エコシステムのインターオペラビリティーの向上にも努め、情報発信の相互連携も図っている。コロナ後は、さらに金融都市が連携し合い、グリーン化とデジタル化を推進するための資金循環を促進するための機能強化が求められる。

閉会挨拶

小池 百合子氏

小池 百合子

東京都知事

国際金融都市へ3本の柱で

東京都はコロナ禍を乗り越え、持続可能な成長を目指すサステナブルリカバリーの視点で政策を展開している。脱炭素やデジタル化の潮流などに対応すべく、昨年11月に「国際金融都市・東京」構想2.0を策定した。柱はグリーン、デジタル、プレーヤーの3つだ。Tokyo Green Finance Initiative(TGFI)の推進、フィンテック企業の育成やキャッシュレスの支援、資産運用業者や高度金融人材など多様な集積を目指す。こうした取り組みをFinCity.Tokyoとともに国内外に効果的にプロモートしていく。

本イベントは、東京都の「国際金融都市・東京」構想に基づく金融プロモーション事業の一環として開催しました。