提供:日本IBM
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世界的なインフレ、サプライチェーンの混乱、消費者や従業員の意識の変化、サイバーセキュリティーの脅威など、今日の企業は様々な課題に直面している。加えて日本では少子高齢化による労働人口の減少、円安によるコストの増加といった課題もある。これらを解決する手段として期待されているのが、デジタルテクノロジーの活用だ。デジタルテクノロジーを活用して企業がDX(デジタルトランスフォーメーション)を成功させるためには何が必要か。IBMコンサルティングの日米トップに話を聞いた。
――IBMのコンサルティング事業部門が「IBMコンサルティング」という名称に変わってから1年がたちました。これまでにどのような変化があったのでしょうか。
グレンジャー まず市場、お客様、弊社の社員に対して我々のメッセージを明確にしました。これまでは「IBM Global Business Services、GBS」という名称でした。これでは何をする部署なのかがストレートに伝わりません。「IBMコンサルティング」であれば何をしているのかはすぐに分かります。拡大するエコシステムを活用し、ハイブリッドクラウドやAI(人工知能)を駆使してお客様のための変革を提供する。一言で言えばそれが私たちの戦略です。
IBMはよりオープンな会社に変わってきており、これまで以上にお客様の変革ジャーニーに寄り添ってご支援します。そのために重視しているのが、戦略パートナーとのエコシステムの構築です。クラウドを提供するAWSやマイクロソフト、ソフトウェアを提供するセールスフォース、アドビ、SAPなどと戦略的パートナーシップを拡大・強化するためにトップ同士が対話を重ね、資格取得や人財育成に多大な投資を行ってきました。例えば、マイクロソフトAzureの資格保持数は 3万以上に上り、また、最も成長の早いAWSのGSIパートナーでもあります。さらに、IBMコンサルティングとRISE with SAPによってSAPとの長期パートナーシップを一層強化しつつあります。2021年にIBMからスピンオフして誕生したキンドリルも重要なパートナーです。
加藤 実際に戦略パートナーとの協業を進めてきました。例えば、日本航空様のeJALプロジェクトでは、オンプレミス(自社運用)上のSAPシステムをAWS上のHANA Enterprise Cloud環境に移行してSAP S/4HANAにアップグレードし、業務プロセス改善の土台を整備しました。こうした協業事例は日本でも海外でも広がっています。
グレンジャー 今のIBMはよりシンプルでアジャイル、そしてオープンになりました。このフォーカスの見直しの結果は、IBMコンサルティングが5四半期連続で2桁成長したことに表れています。
――IBMコンサルティングは他のコンサルティングファームと何が違うのでしょうか。
グレンジャー 1つ目はIBMという企業の一部であり、お客様の複雑な変革の課題にエンド・ツー・エンドで対処するスケールがあることです。次に、Red Hatをはじめとしたオープンなソリューションを持っていることです。Red HatはIBMコンサルティングの成功の鍵であり、すでに1400件近くのRed Hat案件をリードしています。さらに長年にわたって蓄積してきたお客様に対する深い理解があること、IBM Garageのようなお客様との共創のアプローチを持っていることが挙げられます。この4つは大きな違いをもたらしています。
――現在注力している施策にはどのようなものがあるのでしょうか。
グレンジャー 大きく3つあります。1つ目はDXパートナーシップを起点としたエンド・ツー・エンドでお客様のDXを全面的に支援することです。DXを推進するために先端技術の活用、クラウド化の推進、共同化運用といったスキームを導入し、高品質で柔軟性のあるシステムを中長期的な視野で構築していきます。
加藤 オムロン様の経営システム基盤の構築支援は、IT基盤の刷新のみならず、業務プロセスの標準化や将来的なデータ活用までも視野に入れたグローバルの取り組みで、まさにその事例の1つです。
グレンジャー 2つ目はコンサルティング・モデルの変革です。世界が急激に変化していく中で継続してお客様に価値を提供していくために、横展開できるITアセットやエコシステムを実現するプラットフォームを活用し、お客様のDXを支援していきます。その1つが「IBM地域DXセンター」で、3つ目のフォーカスです。
加藤 地域DXセンターは地域のDX人財の育成や新しい働き方を実現し、地域経済を発展させ、地域に雇用を生み出すものです。今は札幌、仙台、那覇、北九州の4カ所に開設していますが、2024年までにさらに拠点を増やし、IJDSと地域の協力会社をあわせた人財を2500人体制に拡充していきます。
例えば、モノづくりの街であり工場が多い北九州では、サステナビリティー(持続可能性)のためのカーボンニュートラルへの取り組みを支援しています。
地域DXセンターでは、ビジネスアウトソーシングを引き受けたり、大都市圏のアプリケーション開発プロジェクトに参加したりするなど、地域に貢献できる様々なタイプのセンターをつくり上げていきます。
――すべての組織でDXがうまく進んでいるわけではありません。DXを成功させるためには何が必要でしょうか。
グレンジャー 4つのポイントが考えられます。まずDXはクラウドなしでは不可能です。最近行われた調査(IBM Transformation Index: State of Cloud)によると、回答者の71%がハイブリッドクラウド戦略なしにデジタル変革を全面的に実現することは難しいと答えています。最良の策をもってしても、企業はクラウド活用の加速に苦戦しており、どう投資を最大限に生かせるか模索しています。
成功する企業はハイブリッドクラウドを単に採用するのではなく、使いこなせるように習得し、オープンなイノベーションを実現して最大のビジネス価値を引き出すことに注力します。オープンになることで、パートナー企業との連携や先進的なオープン・テクノロジーやアイデアへのアクセスが可能になります。そのためどこにいても、誰の技術でもイノベーションを起こすことができるのです。
2つ目はAIを上手に活用することです。特にインテリジェントワークフローは重要です。プロセスにインテリジェンスを加えることでスキル不足も補えます。米国のオンライン証券大手のTD Ameritrade, Inc.様では、口座開設のプロセスにAIを導入することで新規口座の処理時間を70%削減することができました。
3つ目は「サステナビリティー」を取り込むことです。世界中の多くの経営者はサステナビリティーを重要な経営課題として認識していますし、従業員も高い意識を持っています。誰もが意識しているサステナビリティーとESG(環境・社会・企業統治)をビジネスに取り込むことは必須です。
最後の4つ目はエコシステムです。DXで成功している企業は、新しい市場を獲得するためにはスキルやテクノロジーを持っているパートナーとの連携が必要であることを理解しています。
――顧客と一緒に取り組んでいる共創事例にはどのようなものがあるのでしょうか。
グレンジャー これまでご紹介した事例以外にも数多くあります。Delta Air Lines, Inc.様は、IBMがクラウド・ジャーニーの加速を支援したとても良い例で、アプリケーションをクラウドに移行してモダナイズ(刷新)することでパフォーマンスを向上させ、同時にITメンバーのスキルアップも実現しました。
米国の銀行大手のPNC Financial Services Group, Inc.様では、複数年にわたってデジタル変革を進め、Red Hatオープンシフトをベースとしたハイブリッドクラウドのアプローチによってアプリケーションをモダナイズし、リアルタイムな処理を実現しました。
りそなグループ様では、「りそなグループアプリ」の展開にデジタルサービス・プラットフォーム(DSP)を採用され、オープンなエコシステムを実現する金融デジタルプラットフォームの共創を進めています。
また旭化成様では、IBM Garageが原動力となり、業務変革やビジネスモデル変革など多くのテーマで全社的なデジタル変革を進められています。今後もGarage手法を活用してDXが加速、拡大される予定です。
加藤 パンデミック(世界的大流行)がDXの取り組みを後押ししました。リモートによる仕事が得意ではなかった日本企業も変わりつつあります。バーチャルで進められることが増え、スマホだけで完了する取り引きも数多く実現されています。
今後もハイブリッドクラウドを活用したモダナイズ案件は増えてくるでしょう。本当の意味でのDXプロジェクトの広がりに対して、パートナーとの協業によるエコシステムでDXの実現を支援していきます。
グレンジャー 今、IT業界に対する期待が高まっています。経済状況が変わってもDXは進んでいくでしょう。そのような時期に日本市場のサポートができることを心から誇りに思っています。今後もエコシステムによって日本の活性化に貢献していきます。