提供:日本IBM
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長期間にわたる保障を提供する生命保険ビジネスを支えるシステムには、高い堅ろう性と安定性が求められる。その一方で、急速な社会環境の変化に対応するためには柔軟性や機動性が必要になる。“人・サービス・デジタル”でお客さまと未来を支えることを目指す日本生命では、この2つのテーマを両立させるためにハイブリッドクラウド化にかじを切った。なぜ今だったのか、ハイブリッド化にあたっての課題はどこにあったのだろうか。同社と同社のシステム構築を長年にわたって支援する日本IBMのキーパーソンに話を伺った。
――日本生命がDX(デジタル変革)に取り組んできた理由について教えていただけますか。
樋口 経済・生活・社会環境が大きく変化する中、保険会社としての保障責任を全うし続けていくためにデジタル変革が必要と考えています。当社は2019年度から「日本生命デジタル5カ年計画」を推進しており、具体的には既存のビジネスを高度化しながら、新たな事業基盤を創出することを掲げ、業務変革と事業変革の2軸で取り組んでいます。デジタル活用との親和性は年齢や地域ごとの違いがあり、それを踏まえて選べるようにすることも大切にしています。
――DXを推進するうえでの課題はどんなところにあったのでしょうか。
藤後 生命保険ビジネスは長期にわたって継続するもので、システムは堅ろう性、安定性があることが重視されています。一方で、DXに求められるのは柔軟性や機動性であり、どう両立していくのかが大きな課題でした。
また、ビジネスニーズが顕在化してからオンプレミス(自社運用)でシステム環境の整備に取り掛かると準備に時間がかかるため、これから先の環境変化に対応していくためにはコンセプトから変える必要がありました。
このように課題に対してシステムインフラとしての堅ろう性と安定性を維持しながら機動性を両立させるための一つの解がハイブリッドクラウドでした。
――どのようなプロセスでハイブリッド化を進めていったのでしょうか。
樋口 ハイブリッド化は当社にとって大きなチャレンジです。そのため、長年にわたって当社の既存システムの維持・発展を支援してもらってきた重要なパートナーであり、金融・保険業界全般の業務やシステムにも精通している日本IBMとの協業がベストと考えました。
旧来型のシステムだけでなく、AI(人工知能)やデータ分析、オープン技術などの先進テクノロジーについての製品やサービスがあり、その技術を活用して開発を推進できる人材が豊富にいることも重要な要素でした。
高椋 日本IBMは数十年前から日本生命の基幹システムを支えてきました。その流れの中で自然に相談を受けるようになりました。IBMのハイブリッドクラウドありきではなく、2030年を想定したシステムインフラとしてあるべき姿を検討していきました。
樋口 既存システムの棚卸しを行うことと同時並行でテクノロジーのトレンドを検討し、そこに日本生命のビジネスの方向性を重ね、何が最適なのかを整理したうえで各部門のビジネスの計画との整合性をとっていきました。
藤後 部門が違うとチャネルも顧客も業務も違ってきます。それらをトータルに支え、一つひとつのビジネスの方向性にも対応できるための要素を取捨選択しながら議論を進めてきました。
――議論のポイントはどこにあったのでしょうか。
高椋 システムの安定的な運用と新しい技術を取り込むことの「攻めと守りのバランス」をどう取っていくのかについては時間をとって議論し、技術的な実証実験も行いました。保険会社のシステムとしては、高い安定性が重要です。そこはハイブリッド、オンプレミスに関係なく既存の基幹システム同様に重視しました。
樋口 どのシステムをクラウドに移行するのかという切り分けはしっかりと議論しました。クラウドのメリットは外部のサービスとのつながりやすさとアプリケーションの変化に対する機動性の高さです。それを必要とするシステムはクラウドにシフトすることにしました。
一方で重要な処理はリスクの低いオンプレミスのほうがコントロールしやすいと考えていました。既存のシステム資産を有効活用しながらビジネスに貢献する機動性や柔軟性を備えたアーキテクチャーにどう進化させていくかを重視しました。
藤後 既存アプリケーションのクラウドへの移行については、単純に移行するのではなく、コンテナ技術を活用し、進化させたうえで移行することにもチャレンジしています。
高椋 基幹システムについてコンテナ化まで含めて行っているケースは少なく、チャレンジングな取り組みです。堅ろう性や安定性を重視しながら進めた結果、自然にハイブリッドクラウドが選ばれたのだと思います。
藤後 クラウドでもオンプレミスでも、アプリケーションのポータビリティーを上げておかないと不測の変化には対応できません。重要な資産としてのアプリケーションを守るためにもコンテナ技術にはチャレンジしたいと考えていました。
――IBMとの共創ではどのようなところを評価していますか。
藤後 長年一緒にシステム化に取り組んできたので、当社のビジネスやシステムには精通しています。そのうえでどう進化させていくのかという提案をいただいたので信頼感がありました。
樋口 一般的なトレンドや絵に描いたようなアーキテクチャーを見せるのではなく、当社のリスク感性や価値観にシンクロしてくれたうえで最適解を提示してくれるところを高く評価しています。IBMというよきパートナーがいたからこそ、“言うは易し行うは難し”という状態から一歩踏み出せたことは間違いありません。
藤田 IBMとしても会社を挙げた体制を整え、オンプレミスからクラウドまで一気通貫で安心してもらえるサービスを提供できたと思います。サービスのラインアップやプロダクトだけでなく、組織を超えたシームレスな連携体制によって一体感のある運用を実現できました。グローバルも含めてIBM全体で支えることができています。
藤後 IBMの各部門のトップと当社のトップの間でステアリングコミッティーをつくることができており、海外のスタッフからも迅速な回答がもらえるようになっていました。
――今後の展開についてお聞かせください。
藤田 今はミッションクリティカルにもクラウドが活用される第2章に入ったところです。その先駆け的なプロジェクトだけに、これからも全力でサポートしていきます。
高椋 今後も引き続き、最も身近なパートナーとして日本生命様とお客様にとって最適なサービスを一緒に検討していきたいです。
藤後 ようやくハイブリットクラウドに踏み出すことができました。これからもシステムインフラを継続的に進化させ、多様化するお客様ニーズに対応していきましょう。
樋口 システムインフラを整備した後の「ビジネス価値」が大事です。今回のプロジェクトの経験を生かして次の一手を一緒に手掛けていきましょう。