自身の銘柄判断を明確にして アナリストレポートで検証する

企業分析の専門家が企業の経営状態や収益力などを分析した「アナリストレポート」は、株式投資において役立てたい情報源のひとつだ。証券リサーチセンターでリサーチセンター長を務める髙木伸行氏に、プロネクサスの伊藤直司氏が、銘柄選定のキーワードやアナリストレポートの活用術などを聞いた。

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Page1 項目ごとに整理された企業情報 投資家ニーズに合わせて活用できる

■伊藤 個人投資家の皆さんが上場企業を知るための情報源には、どのようなものがありますか?

■髙木 投資銘柄を選定するには、様々な情報を収集し、総合的に判断することが大切です。人に勧められた銘柄だから、よく聞く社名だからという理由ではなく、ご自身でしっかり調べたうえで投資するべきです。誰でも入手できる情報として、有価証券報告書や決算短信などの開示資料や企業の決算説明資料、日経会社情報などがあります。

一般社団法人証券リサーチセンター リサーチセンター長 高木伸行氏

一般社団法人証券リサーチセンター
リサーチセンター長
髙木伸行氏

■伊藤 最近は企業のウェブサイトの情報も充実していますね。

■髙木 そうですね。企業情報が日々更新される各社のホームページは、情報の宝庫です。「IR情報」や「投資家情報」といったページには投資に関連する情報が整理されており、財務情報に加え、コーポレート・ガバナンス(企業統治)の考え方や社会貢献への姿勢も説明されています。

■伊藤 個人投資家向けのイベントも活発に行われていますね。

■髙木 企業が個人投資家向けに行う会社説明会への参加もお勧めします。事業内容などを企業担当者がわかりやすく説明してくれますので、企業の理解を深めるうえでぜひ活用していただきたいと思います。

■伊藤 開示資料の見方がわからない、会社説明会に参加する時間がない方などはどうすればよいでしょうか?

■髙木 上場企業の情報をまとめたアナリストレポートが役立ちます。レポートの詳細は執筆対象となる企業によって異なりますが、一般的に開示資料と企業への取材を通じて収集した情報に基づき、中長期の持続的成長可能性や企業価値などの総合的な分析結果が記載されています。アナリストレポートには、大きく分けて、企業の変遷や事業内容などを総合的に紹介したベーシックなもの、直近に発表された決算内容を分析してタイムリーに業績を予想しアップデートするもの、新製品の発表など経営上の変化が起きた場合にアナリストが執筆する簡単なメモやノートのようなものの3つがあります。項目ごとに情報が整理されているため、投資家のニーズに合わせて必要な部分だけを参考にすることができます。

■伊藤 企業分析において非財務情報の重要性が増しています。アナリストレポートでも詳細な分析が行われている理由はどこにありますか。

株式会社プロネクサス 執行役員 IR事業部長 伊藤直司氏

株式会社プロネクサス
執行役員 IR事業部長
伊藤直司氏

■髙木 日本証券業協会の調査によると、個人投資家の50%超の方は5年以上株式を保有し、10年以上保有している方も30%を超えています。企業価値の大半は、人材や組織力、イノベーション力といった知的資本によってつくり出されるとの考え方が広がっています。株式を長期保有する上では、売上高や利益といった財務諸表以外の情報も必要になってくることは当然だと思います。個人投資家として、地球環境や社会問題を含めた課題にしっかりと対応する企業を応援することはごく自然な流れといえるでしょう。

■伊藤 非財務情報といえば、コーポレート・ガバナンスが特に話題になっています。

■髙木 2015年は、安倍政権の成長戦略の1つであるコーポレート・ガバナンスの強化を実行するうえでの規範への順守状況について、多くの企業が報告書を提出しました。企業内でコーポレート・ガバナンスの議論が進むにつれて企業経営の透明性が高まり、企業価値の向上や持続的成長につながることが期待されます。

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「効率」と「成長」が銘柄選定のキーワード
証券アナリストの強みは相対観ある企業分析

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Profile

一般社団法人証券リサーチセンター リサーチセンター長 高木伸行氏

1977年早稲田大学政治経済学部経済学科卒業、82年シカゴ大学ビジネススクールMBA。野村證券引受審査部長、野村證券金融経済研究所長などを経て、13年3月から株式会社エラン(東証一部上場)社外監査役、同年4月から一般社団法人証券リサーチセンター リサーチセンター長。15年9月から株式会社C&Fロジホールディングス(東証一部上場)社外監査役。16年2月から株式会社ラクト・ジャパン(東証二部上場)社外取締役。05年~06年企業会計基準委員会関連当事者開示検討専門委員会専門委員。09年~13年滋賀大学経済学部リスク研究センター客員教授。09年から芝浦工業大学大学院工学マネジメント研究科非常勤講師。

株式会社プロネクサス 執行役員 IR事業部長 伊藤直司氏

早稲田大学法学部卒業。1980年HOYA(株)入社。国内外の営業を経て1995年広報IR部門。2008年HOYAグループIR・広報室長。2013年米国Institutional Investors誌の「ベストIRプロフェッショナル」精密部門第1位に。同年秋(株)プロネクサスに転職。

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