プライベート・エクイティ(PE)というのは、非上場株式を意味する。PEファンドは、複数の投資家から集めた資金で非上場会社の株式を取得し、経営に関与して企業価値を高めたのち、それを売却して得られた利益を投資家に還元する投資ファンドだ。
ファンドといっても単に非上場会社の株を買うのではなく、人材を送り込んでその会社の経営に深くかかわるのが特徴といえる。
PEファンドにはいくつか種類がある。「ベンチャーファンド」は、新興企業に投資して株式上場をバックアップし、上場後に株式を売却して利益を得る。財務や経営状況が悪化している会社に投資し、経営を健全化させて売却する「事業再生ファンド」もある。
最近注目されているのは「事業承継ファンド」だ。後継者がいないために事業が承継できない、できる見込みがない、といった会社は今、日本にたくさんある。そうした会社が、PEファンドに事業を譲渡する、あるいはその会社を譲り受ける会社にPEファンドが出資する。
事業承継ファンドの場合も単に出資するだけでなく、経験豊富な人材が経営にかかわり、事業を引き継ぐと同時に、経営上の問題の洗い出しや解決、取引先や販路の拡大、新規事業への参入、海外進出など、企業価値を高めることを目指す。
ファンドによるM&A後も、元の経営陣は会社に残るのが一般的で、従業員の雇用も維持されるので、他の事業会社に経営譲渡する場合に比べて社風が維持されやすい。経営課題が解決されて、従業員のモチベーションがアップすることも期待できる。
事業承継ファンドの出資を受ける場合、そのファンドが独立行政法人中小企業基盤整備機構の出資を受けていると税制優遇が受けられるなど、国も事業ファンドによる事業承継を推進している。PEファンドを活用した事業承継は、これからますます増えていくと見込まれる。