日本の中堅・中小企業の中には、経営者の高齢化や後継者難によって存続が難しくなっているところが多く、経営が順調にもかかわらず廃業に至るケースもみられる。それに加えて、新型コロナウイルス感染症がもたらす経済の低迷によって経営環境は厳しくなっている。すでに6月の倒産件数は飲食や宿泊関連を中心に前年同月を上回っており、今後はさらに増えると予測される。事業承継は先延ばしにせず、余力があるうちに行っておきたい。
また、コロナ後には、中堅・中小企業であってもテレワークなどの働き方改革やDX(デジタルトランスフォーメーション)への対応などが必要だ。早めに次世代の経営者に事業を承継して、経営の改革を図ることが望ましい。
とはいえ、今から後継者を探したり育てたりするには時間がかかる。そこで考えたいのが、企業を第三者に譲渡するM&Aだ。M&Aというと大きな企業が対象というイメージがあるかもしれないが、中堅・中小企業でもM&Aの対象になりうる。むしろ、企業サイズは問わず、優良な企業の売り案件があったら積極的に検討したいという企業は多い。
M&Aは事業会社に株式を譲渡するのが一般的だが、非上場企業を対象とするPEファンドによる出資もある。後継者がいない企業に出資する事業承継ファンドの場合、経営権はファンドに移るが、会社の運営は元の経営陣が行い、従業員の雇用も守られるケースが多い。
新型コロナの影響が長引くと見られる中、企業が生き残るにはM&AやPEファンドの活用が有力な選択肢といえる。
M&Aにはいくつかのステップがある。その各段階で、法律や税務などに関する知識や円滑な手続きのためのノウハウが求められる。M&Aを成功に導くためには、経験豊富で信頼できるアドバイザー選びが重要だ。中堅・中小企業のM&Aをサポートする会社は年々増えている。いくつかの会社の過去の実績や料金体系などを確認し、納得できるところと契約したい。
PEファンドも、自社の価値を正しく評価しそれを高めてくれるかどうかをしっかり見極めることが大切だ。