日本の中小企業の多くは新型コロナウイルスの感染が拡大する以前から、後継者難による事業承継問題を抱えていた。それに加えて、コロナ禍による経済低迷の影響を受けている。アフターコロナにはDX(デジタルトランスフォーメーション)への対応なども求められるだろう。
こうしたさまざまな経営課題を解決する方法の一つがM&Aだ。事業の売却という初めての経験をする経営者にとって、買い手探しやM&Aの手続きをサポートしてくれる事業者は心強い味方といえる。ただ、M&A仲介業は参入障壁が低く、業者のレベルはさまざまだ。着手金を受け取ったまま何もしないといった悪質な業者も見受けられる。
このような状況を改善し、M&Aを推進するために中小企業庁は昨年、今後5年間に実施すべき官民の取り組みを「中小M&A推進計画」として取りまとめた。その一環として中小M&A支援機関に登録制度を導入し、昨年8月から登録申請の受付を開始。10月15日までに登録件数は2278となった。内訳をみると、約4割がM&A専門会社、約3割が税理士・公認会計士となっている。
登録機関をM&A支援業務専従者別で見てみると0~2人という機関が7割近くを占め、全体の約95%は10人未満だ。
専従者が少ないと、依頼者に対してきめ細かい支援を行うのは難しく、設立からの年数が短いとM&Aの経験やノウハウが蓄積されておらず、十分な支援ができないこともありうる。
M&A事業者を選ぶときは、登録の有無だけでなく、過去の実績や事業規模をしっかり確認することが大切だ。
M&Aで譲渡した会社は、譲受会社の子会社になるなどして、社名や従業員、社風などが引き継がれないことがある。それに対してPE(プライベート・エクイティ)ファンドへの譲渡の場合、株主と経営陣は交代するが、それ以外は残ることが多い。PEファンドは譲り受けた会社の企業価値を高めるために経営を改善し発展させる。
コロナ禍を乗り切るため、あるいはアフターコロナを見据えて、M&AやPEファンドの活用を検討してみてはどうだろう。