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先物・オプション投資の魅力

先物・オプション投資の魅力

現物とは異なる収益機会として注目が高まる先物・オプション取引。
個人投資家の参加も拡大する先物・オプション取引の魅力や投資戦略を紹介する。

  • 個人投資家による個人投資家のためのオプション取引講座
    第1回 プット・オプションの買い戦略①

    守屋 史章
    オプショントレード普及協会 代表理事
     

    オプションは「保険」でもあり「収益源」でもある

    守屋 史章氏 オプショントレード普及協会 代表理事
    守屋 史章氏
    オプショントレード普及協会
    代表理事

    金融商品、例えば自分の好みの株を買っているとか、日経225先物のロングポジションを持っているとか、あるいは日経平均株価に連動する金融商品を買っているというような場合に、私たちが恐れるのは、市場が何らかの原因でクラッシュして暴落することです。

    このように日経平均の変動に対して正の方向にポジションをとっている場合(上昇目線=ブル=ロングポジションなどという)に、いわゆる「何とかショック」などによる暴落の損失はごめん被りたいというとき、保険の機能を有するのが日経225オプションの「プット・オプション」です。保険の機能を有するということはすなわち、プット・オプションは日経平均の値動きと反対の動きをするように設計されている商品だということです。日経平均が下がれば、プット・オプションの値段が上がることになります。ですから、このプット・オプションを買っておけば、日経平均が下落する際、プット・オプション価格の値上がり益で株などの損失をカバーすることができるというわけです。

    オプションとは、原資産を保有する人がその原資産を守る保険として利用することができるものです。ただそれだけではなく、その面白い性質を利用し、オプション単体を投資対象として新たな収益源にできないか、と考えることは自然なことで、実際オプションはそのように利用されています。

    本講座のテーマは「個人投資家がいかにしてオプションを利用するか」ということです。今回は個人投資家でも手掛けやすいオプション戦略ということで、プット・オプションが日経平均の下落で逆に価格が上がる性質を利用して、利益に変える戦略を検討していきたいと思います。

    大きな利益が狙えるプット・オプション

    百聞は一見にしかず。最近の事例ですが、プット・オプションが10倍どころか75倍にもなった事例を紹介しましょう。図表1は2018年2月5日~6日の株価暴落の局面のものです。米国市場において雇用統計の結果が良く、逆に利上げ確実ということで、市場が大きく崩れた場面です。日本市場にも当然影響がありました。数日前、日経平均は2万4000円を超えていましたが、一気に2万1000円まで急降下。そういう状況でした。

    図表1 2018年2月2日に10円で購入したプット・オプション「P22125」が2月6日の終値(理論価格)で745円となった事例
    図表1 2018年2月2日に10円で購入したプット・オプション「P22125」が2月6日の終値(理論価格)で745円となった事例 ※クリックまたはタップすると拡大表示されます

    このとき2018年2月2日に10円で購入したP22125(プット・オプション権利行使価格22,125円を表します)が2月6日の終値(アウト・オブ・ザ・マネーである同じ権利行使価格のコールからプットコールパリティにより算出)で745円まで上がりました。日経225オプションの世界では、価格を1,000倍したものが投資金額になりますので、この場合、実際の投資額は1万円(10円×1,000倍)となります。そして、このオプションが、うまく決済できていれば70万円以上の利益になった可能性があったのです(満期まで持っていたら925,000円の利益)。仮に日経平均が権利行使価格を下回らなかったとしても、失うのは最初に購入代金として支払った1万円だけです。この事例を見れば、プット・オプションのすさまじさがお分かりかと思います。(北浜投資塾の事例もご覧ください。別の場面で同じくプット・オプションの買いで大きな利益となった事例を紹介しています)

    このプット・オプションの買いを個人投資家が手掛けるにはどうすればよいか、これを検討していくのが「第1回 プット・オプションの買い戦略」のテーマです。

    さて、プット・オプションですが、これは一般に「原資産を売る権利」と説明されます。プット・オプションの買い手は権利を買うわけですから権利者であり、この売る権利を行使して、自分の選択した権利行使価格で原資産を売ったことにできるのです。例えば、日経平均の権利行使価格20,000円のプット・オプションの買い手は、その権利(日経平均を20,000円で売ったことにできる権利)を行使することで、日経平均を20,000円で売った(ショートした)立場に立つことになります。そして満期において権利行使価格と満期の精算価格(SQ値)とで差金決済されるというルールです。したがって、いわゆる「売る権利」と説明するよりは、図表2にあるように、プット・オプションの買い手は、日経平均が権利行使価格よりも下に行った部分(権利行使価格と日経平均の差分)を受け取ることができる(逆に売り手は支払う義務を負う)と説明した方が分かりやすいかもしれません。

    図表2 プット・オプションのイメージ
    図表2 プット・オプションのイメージ

    初心者はプット・オプションの買いから始めよう

    プットの買い手としては、日経平均が自分の選んだ権利行使価格を割り込んで下げれば下げるほど、受け取りが大きくなりますから、相場が大きく下落してほしい(=動きが大きいことを期待している)わけです。もちろんこのプット・オプションはただでは手に入りません。売り手の立場に立てば、万が一大きく下落したら売り手は権利行使価格以下の部分、すなわち当該権利行使価格とSQ値の差額を買い手に支払わないといけませんから、あらかじめそれなりにそのリスクに見合う代金を買い手に支払わせる必要があります。一方、買い手としては、権利行使価格を割り込まなければ受け取りはないため、最初の支払額を全部失うことになるし、また、権利行使価格を割り込んでも当初の支払額以上に受け取りがなければ損失になるのですから、支払額はできるだけ少ない方がいいわけです。

    例えば、ある日の日経平均が20,100円ぐらいのときに、権利行使価格20,000円のプット・オプションが250円で売買されているとき、買い手は日経平均が権利行使価格である20,000円をただ割り込めばよいわけではなく、当初の支払額250円を回収するために日経平均が権利行使価格よりもさらに250円下の19,750円を割らなければなりません。一方、売り手の方はといえば、日経平均が20,000円を割り込んだとしても、19,750円までは当初に受け取った250円を原資として買い手に支払えばよいのであって、損にはなりません。したがって、ここでの勝負は、日経平均が350円以上下落して19,750円を割り込むかどうかということになります。このラインを割り込むと考える買い手と、割り込まないと考える売り手の思惑が拮抗し、250円で売買が成立している状態なのです。

    買い手に利益が出るためには、先の例でいえば満期までに下方向に350円以上動かなければなりません。もしこのプット・オプションが100円で売買されていたならば、そこまでの下落は必要なく19,900円を割り込めばよい、すなわち200円以上の下落があればよいことになります。株価の変動の大きさ(変動率)をボラティリティーといいますが、まさにオプションを取引するということは、単に株価が上がるか下がるかということのみならず、満期までにどれぐらい動くか、すなわちボラティリティーが非常に重要になってくるわけです。プット・オプションの買い手は、下落の予想のみならず、どれくらいの下落幅があるかを予想して戦うことになるのです。

    そうなるとオプションの買い手の願いとしては、①満期までに(短期的に)大きく動いてほしい、②できるだけオプションの購入代金を小さくしたい、ということになります。

    相場の変動は短期的には上昇よりも下落の方が速く、変動幅も大きいことは経験則上イメージがつくと思いますので、プット・オプションは上記買い手の願い①を満たします。従って個人投資家がまずオプションを始めるならば、プット・オプションを買うことから始めるとやりやすいわけです。ということで、最初にプット・オプションの買いからお話ししました。

    では、②のできるだけオプションの購入代金を小さくしたい、という願いはどうでしょうか。次回はこの点について検討したいと思います。どういうタイミングでやれば②が満たされるか、というお話です。お楽しみに!

    守屋 史章
    オプショントレード普及協会 代表理事
    宮崎県出身。慶應義塾大学法学部法律学科卒、同法学研究科修士課程修了。個人投資家として企業数社に投資し、ビジネスオーナーを務める傍ら、証券などへの投資をも手掛ける。投資におけるオプション取引を普及させることを目的に、金守遼太氏と共同でオプショントレード普及協会を設立。短期トレーディングから長期運用まで幅広い投資ニーズをかなえる資産運用を研究している。「オプションについて話せる仲間が見つからない」という孤独になりがちな投資の研究と意見交換を行える会員制のメンバーシップを中心に、個人投資家目線だからこその目からウロコの独創的アイデアと分かりやすい解説で、「わかる」「できる」をサポートする。