アマゾンウェブサービスジャパン株式会社
執行役員
技術統括本部長
岡嵜 禎 氏
KDDI株式会社
執行役員
ソリューション事業本部
サービス企画開発本部 副本部長
丸田 徹 氏
いよいよ商用サービスが始まった5G(第5世代移動通信システム)。「高速・大容量」「低遅延」「多接続」を特長とする5Gネットワークは、私たちの社会やライフスタイルを大きく変革するものとして期待されている。そのなかで5Gネットワークをさらに快適に、使いやすくする新しいサービスが登場した。AWSとKDDIが提携して提供するクラウドインフラサービス「AWS Wavelength」だ。果たして、デジタル変革に取り組む企業にどんなビジネスチャンスをもたらすのだろうか。アマゾンウェブサービスジャパン(AWS)執行役員の岡嵜禎氏とKDDI 執行役員の丸田徹氏に聞いた。(文中敬称略)
5GとAWS Wavelengthが創造する価値とは
今回のサービス提供に先立ち、5GとAWS Wavelengthを利用した実証実験がいくつか行われました。その概要や成果について教えてください。また海外では、どのようなユースケースがあるのでしょうか。
丸田 エンタープライズAIサービスを提供するブレインズテクノロジー様では、製造業のIoTシステムとAI技術を活用した異常検知システムの実証実験をAWS Wavelength上で行いました。生産設備の異常検知は従来、ネットワークの遅延が課題となっていましたが、実証実験では4Gネットワークと比較して約43%も遅延時間を改善する結果が得られました。これは迅速な異常判定や意思決定につながり、今後の商用化を検討しているそうです。
またゲームメーカーのTVT様では、5GとAWS Wavelengthによってネットワークゲームの通信品質がどれだけ向上し、ゲーム体験にどう影響するかを検証しました。その結果、5Gネットワークへの接続時間が4Gネットワークと比較して40~50%ほどに抑えられ、より滑らかな描画と優れたゲーム体験が可能になりました。こうした成果については予測できていたものもありましたが、新たな気付きが得られた部分もありました。
5GとAWS Wavelengthによる価値を広めるために、KDDIは「KDDI 5Gビジネス共創アライアンス」を立ち上げました。これは5GやAWS Wavelengthなどのインフラと、アライアンスに参加するパートナー企業さまの技術を活用し、5GによってDXを加速させる“ビジネス共創の場”となるものです。
岡嵜 日本国内よりもひと足先にサービス提供が始まった米国では、ヘルスケア分野やコネクテッドカー、スマートファクトリーなどの産業分野において活用が始まっています。またリアルタイムゲームやAR/VR、ビデオストリーミングなどのエンターテインメント分野にも広がっています。例えばゲームでは、端末側の処理をAWS Wavelengthへ移すことで端末が高性能である必要がなくなり、ユーザー拡大などのビジネスメリットが得られると期待されています。
5GとAWS Wavelengthを活用する企業に対して、どのような支援を行っていくのでしょうか。
岡嵜 AWS WavelengthのメリットはAWSクラウドと同じ開発スタイルのまま、5Gネットワークを活用できるところにあります。必要な環境がすぐに利用できるのはクラウドならではであり、お客さまの5Gを活用した新しいビジネスの創出をより加速すると考えています。また、お客さまのDXへの取り組みを支援するために、AWSでは「デジタルイノベーションラボ」「エグゼクティブブリーフィングセンター」などを通じたご支援も行っています。
丸田 KDDIは持続可能な生活者中心の社会「Society 5.0」の実現を5Gで加速させる、次世代社会構想「KDDI Accelerate 5.0」の取り組みのひとつとして、AWS Wavelengthを位置付けています。5Gのメリットを最大限に享受いただくためにも、AWS Wavelengthをご活用していただけるお客さまへのご支援を今後も積極的に行っていく考えです。
※感染対策には万全を期し、写真撮影時のみマスクをはずしています
AWS Wavelengthは5Gネットワークのエッジにある通信事業者のデータセンター内に、AWSのコンピューティング/ストレージサービスを組み込んだインフラを配置するというサービス。通信事業者のネットワークから出ることなくデータを処理できるため、インターネット経由でクラウドサービスへ接続する際に発生する遅延が回避され、5Gのメリットを最大限に生かすことが可能となる。日本国内では2020年12月からKDDIと提携してサービスが提供開始された。