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事例が実証する“新たなビジネスの創出” 企業のDX実現を強力に支援するKDDI DIGITAL GATE

KDDI株式会社
事業創造本部
KDDI DIGITAL GATE センター長
山根 隆行

コロナ禍により企業を取り巻くビジネス環境が激変するなか、デジタルトランスフォーメーション(DX)をさらに加速させ、新しいビジネスの創出を目指す企業が増えている。しかし社内の限られたリソースだけで成果を上げることは難しく、苦慮する企業も多い。KDDI DIGITAL GATEでは、そうした企業のDX実現を強力に支援する活動を行っている。設立から2年半にわたり、お客さま支援の先頭に立ってきたKDDI DIGITAL GATE センター長の山根隆行氏に、具体的な支援事例を交えながらDX成功へのポイントを聞いた。

コロナ禍で加速する企業のDX

写真:山根 隆行氏

KDDI株式会社
事業創造本部
KDDI DIGITAL GATE センター長
山根 隆行

コロナ禍が続くなか、企業のDXにはどのような変化が見られますか。

山根 コロナ禍という危機的状況は企業が新たなビジネスに挑戦する、またとない機会とも言え、これまでも多くの企業がDXの取り組みを始めています。一方で、財務に痛手を負い、投資を縮小せざるを得ない状況に見舞われた企業も少なくありません。より効果的にDXを推進したいという企業が増えつつあると感じています。

 しかし、デジタル技術を活用して新たなビジネスを探索するDXの取り組みは、不確実性が高く “多産多死”にならざるを得ない面があります。そのようななかで効果的にDXを進めていくためには、どのような課題に、どのような思いで、誰と取り組んでいくのかということがポイントになると考えています。

そうした企業のDXを支援する拠点として、KDDIは2018年9月に「KDDI DIGITAL GATE」を設立しました。KDDI DIGITAL GATEとはどのような拠点なのでしょうか。

山根 日本企業は欧米など諸外国と異なり、ITエンジニアの7割以上が事業会社ではなくITベンダーに所属しているため(※1)、ビジネスとITの融合が必要なDXを自社のみで素早く進めることが難しい状況にあります。この日本特有の課題を解決するためには、企業の壁を越えてDXに必要なスキルや経験を持った人財が集まり、新しいビジネスの開発や業務変革を素早くつくりながら探索できる場が必要だと考えました。そこで、KDDIが自らの新規事業開発やサービス開発で培った手法やノウハウをフル活用して、お客さまと一緒になりDXを実現する場として設立したのがKDDI DIGITAL GATEです。デザイン思考、リーンスタートアップ、アジャイル開発といったフレームワークを実践できる専門家が常駐する拠点として東京・虎ノ門に設けました。

 同地区にはKDDI DIGITAL GATEのほか、お客さまとの接点になる当社法人ソリューション営業部隊と、2030年の未来を見据えたライフスタイルを提案する応用研究拠点「KDDI research atelier(リサーチ アトリエ)」があります。KDDI DIGITAL GATEと合わせ、この3拠点を当社では「虎ノ門トライアングル」と命名しました。このなかでKDDI DIGITAL GATEは、まさにDXを本気で始める企業を迎える“ゲート”の役割を果たす拠点として位置付けられています。

図:IT企業とそれ以外の企業に所属する情報処理・通信に携わる人材の割合(日本、米国、イギリス、ドイツ、フランス:2015年、カナダ:2014年) 図:IT企業とそれ以外の企業に所属する情報処理・通信に携わる人材の割合 (※1:情報処理推進機構「IT人材白書2017」

KDDI DIGITAL GATEが設立されてから約2年半が経過しましたが、これまでにどのような取り組みを行ってきましたか。

山根 設立当初は各社のDX担当者をKDDI DIGITAL GATEに迎え、最初にユーザー体験(UX)をデザインするチームをアサインして、ファシリテーターとともにワークショップ形式で価値仮説の探索(ディスカバリー)を行い、その後、別の開発チームがアサインされてアジャイルでプロトタイプ開発とPoC(概念実証)を行うという、UXデザインを行うチームとそれを技術的に実装するチームとに分離した進め方をしていました。しかしプロジェクトを数多く経験するなかで、UXデザインとアジャイル開発は手段こそ異なるものの、自律的なチームで小さく・素早く実験的に探索するという考え方は同じであることから、チーム間の融合が進み、いまではプロダクトの状況に応じてタイムリーに最適なロールの人財がチームにアサインされるような方式に変わってきています。これによって暗黙知の割合が大きい初期探索フェーズをより効果的に実行できるようになりました。また最近では、チームの提供によるDXの支援だけでなく、スクラム開発チーム自体をお客さま企業内に立ち上げるための、実践をベースとした数カ月のトレーニングプログラムの仕事も増えてきています。

コロナ禍によってKDDI DIGITAL GATEの取り組みに変化はありましたか。

山根 コロナ禍で大きく変わったことは、支援プロセスの場をオンラインでも再現したことです。コロナ禍以前は多くのお客さまがKDDI DIGITAL GATEへ直接見学に訪れていましたが、現在はVR(仮想現実)技術を使ったバーチャル見学ツアーも行っています。ソフトウエア開発ツール、ホワイトボードといったワークショップやプロジェクトで使用する設備もすべてオンラインへ移行しました。ただ、オンサイトまたはオンラインのいずれかということではなく、オンラインの選択肢が増えたことで、お客さまの状況やコロナの状況、目的に応じて、それぞれの良いところを融合させたやり方で行うようにしています。プロジェクトの案件数も、コロナ禍以前に比べて増えています。

写真:KDDI DIGITAL GATE バーチャルツアー1

写真:KDDI DIGITAL GATE バーチャルツアー2

チームの能力と熱意が成功のカギを握る

KDDI DIGITAL GATEではコロナ禍以降、どのようなDX支援を行いましたか。

山根 インターネットサービスプロバイダー大手のビッグローブ様では、温泉宿と企業をつなぐマッチングサービス事業を開始し、「ONSEN WORK」というサイトを立ち上げました。このサイトは働きながら休暇をとる“ワーケーション”に適した温泉宿情報を掲載し、コロナ禍により深刻な影響を受けている温泉宿を助けようとビッグローブ様が企画したものです。

 KDDI DIGITAL GATEではデザイン思考とアジャイル開発の手法を取り入れ、操作性向上とコスト削減を両立しながらサイト企画フェーズを支援して、2カ月足らずという短期間でのリリースを実現しました。現在はまだ実証実験段階のため、エリアや温泉宿の情報は限られていますが、全国各地の温泉地や企業の総務部門から問い合わせが殺到しているそうです。

DX支援事例を通じ、企業がDXを推進するにはどんな心構えが必要だとお考えですか。

山根 なにより重要なのはDX推進チームに権限委譲することです。新しいビジネスを成功に導くためには、ビジネスの現場にいる人たちの知見にもとづく迅速な意思決定が欠かせません。適任者を決めてDX推進チームを組織し、そのチームにできる限り権限委譲するという心構えを持つことが大切です。ビッグローブ様の事例では、プロジェクトリーダーがチームをリードする能力に長けているだけではなく、「何としても成功させたい」という強い熱意と覚悟を持っていました。権限委譲されていた環境にあったからこその覚悟だと思いますし、こうした人財を登用することが、企業経営者に求められていると考えます。

KDDI DIGITAL GATEのDX支援事例はこちら

DX支援やアジャイル開発のプロセスを進化させるために、どのような取り組みを行っていますか。

山根 KDDI DIGITAL GATEは、課題に対して自分たちで解決・改善するという自治化・自律化された組織です。これまでもさまざまなツールがエンジニアの手で開発されています。その一つに、オンラインで共有する画面を4K解像度にするツールがあります。私たちはモブプログラミングを採用していますので、3~4人くらいで同時にコーディングを進めることが多く、テレワーク環境で画面を共有して進めるには一般的なWeb会議ツールの解像度では見づらく、一日中やっているとかなり疲れてしまいます。まさにDeveloper Experienceの低下が深刻な問題になりつつありました。そこで代わりに使える新しいツールをつくろうと、KDDI DIGITAL GATEのエンジニアが開発したものが4K解像度画面共有ツールです。実はこのツール、最初は東京と沖縄の拠点をつなぐツールとしてコロナ禍前からKDDI DIGITAL GATE内で利用していましたが、進化を重ねて、いまではお客さま企業側にも導入いただいて案件実施時にも活用しています。

 この例のようにKDDI DIGITAL GATEには「日常の困りごとや潜在欲求を見過ごすことなく、ソリューションを自らつくって改善する」という文化が根付いています。またエンジニアが快適に仕事のできる開発環境を用意することにも、こだわりを持って取り組んでいます。人を幸せにするプロダクトをつくるには、まずはそれをつくる人が幸せでないといけないと思いますし、エンジニアにも常にクリエイティブな発想を持ってほしいという思いから、このような文化・環境を意識的につくっています。

写真:KDDI DIGITAL GATEの様子1

写真:KDDI DIGITAL GATEの様子2

写真:KDDI DIGITAL GATEの様子3

3拠点体制でDX推進プロジェクトを支援

2019年9月に沖縄・大阪に拠点を開設するなど、KDDI DIGITAL GATEは活動の場を広げています。虎ノ門の拠点も含め、現在はどのような体制で臨んでいるのでしょうか。

山根 KDDI DIGITAL GATEのメイン拠点は東京・虎ノ門で40人強のメンバーがおり、沖縄拠点には6人、大阪拠点には2人のメンバーが常駐しています。企業のDX支援や新しいビジネスを探索するワークショップの開催は、お客さまの近隣にあるそれぞれの拠点で対応し、実際の開発においては虎ノ門と大阪の案件が虎ノ門で、沖縄の案件は沖縄内で支援しています。

 沖縄拠点は、地元の中小企業やスタートアップのお客さまからの、限られた予算の中でスモールスタートしたいという相談が多いという特徴があります。プログラミングを伴うアプリケーション開発だけではなく、既存のクラウドアプリを使って業務の改善や新規ビジネスの創出を行うDX支援事例もあります。

沖縄拠点では、具体的にどのような事例がありますか。

山根 ユニークな取り組み事例として、沖縄で活動しているお笑い芸人を支援する「UNIQUE」というサイトの構築支援事例があります。また沖縄をテーマにしたデザイン思考を体系的に学ぶワークショップを琉球大学の学生向けに提供するといった取り組みも行っています。

KDDI DIGITAL GATEは今後、どのように発展させていきたいとお考えですか。

山根 KDDI DIGITAL GATEはこれまで、お客さま企業のDX支援を中心に行ってきたため、お客さまの課題を起点にした活動が中心でした。しかしこれからは、自分たちKDDIの課題や意思を起点にしたDXの取り組みにもチャレンジしていきたいと考えています。KDDIは事業戦略の核として「通信とライフデザインの融合」を目指していますが、これを実現するためには自分たちの力だけでサービスをつくり切ることは難しいと認識しています。そこで外部のパートナー企業と協業しながら、自社のDXを推進するような取り組みを加速させ、DX支援という受けのビジネスだけでなく、お客さまと一緒に双方のマネタイズにも寄与していきたいと考えています。

写真:KDDI DIGITAL GATE 沖縄拠点の様子1

写真:KDDI DIGITAL GATE 沖縄拠点の様子2

写真:KDDI DIGITAL GATE 沖縄拠点の様子3

写真:KDDI DIGITAL GATE 沖縄拠点の様子4

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KDDI DIGITAL GATEの取り組み事例

事例1 ビッグローブ「ONSEN WORK」

 ビッグローブの「ONSEN WORK」は、温泉宿と企業をワーケーションでつなぐマッチングサイト。従来の旅行とは異なる価値を提供すべく、仕事環境、ネットワーク環境、会議室の有無といった温泉宿の情報、近隣のワークスペースや託児所などの周辺情報が掲載されており、企業のワークスタイルやワーケーションニーズに合わせて比較検討が行える。2021年3月のグランドオープンに合わせ、静岡県伊東市や大分県別府市と共同でワーケーションモデルづくりの実証実験を開始している。

写真:ビッグローブ「ONSEN WORK」

事例2 芸人・エンタメのプラットフォーム「UNIQUE」

 芸人・エンタメのプラットフォーム「UNIQUE」は、コロナ禍によるイベント中止などで活動の場を失ったお笑い芸人・タレントの支援を目的に、沖縄を中心に活動する放送作家キャンヒロユキ氏が企画し、KDDI DIGITAL GATEと一緒に1カ月でプロトタイプをつくり上げた。UNIQUEはお笑い芸人が登録したオリジナル漫才や人生相談など独自コンテンツをサイトから購入できる仕組みで、コンテンツの内容や価格は芸人・タレント自身が自由に決められる。2021年1月に公開されたベータ版では37組の芸人・タレントのコンテンツが登録された。沖縄県外への進出も視野に入れているという。キャン氏は「システム開発は未経験でしたが、エンタメの現状と課題をKDDI DIGITAL GATEチームの協力を得ながらあぶり出し、プロトタイプを通して芸人らからより深い聞き取りができました」と語っている。

写真:芸人・エンタメのプラットフォーム「UNIQUE」

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