KDDI DIGITAL GATEではコロナ禍以降、どのようなDX支援を行いましたか。
山根 インターネットサービスプロバイダー大手のビッグローブ様では、温泉宿と企業をつなぐマッチングサービス事業を開始し、「ONSEN WORK」というサイトを立ち上げました。このサイトは働きながら休暇をとる“ワーケーション”に適した温泉宿情報を掲載し、コロナ禍により深刻な影響を受けている温泉宿を助けようとビッグローブ様が企画したものです。
KDDI DIGITAL GATEではデザイン思考とアジャイル開発の手法を取り入れ、操作性向上とコスト削減を両立しながらサイト企画フェーズを支援して、2カ月足らずという短期間でのリリースを実現しました。現在はまだ実証実験段階のため、エリアや温泉宿の情報は限られていますが、全国各地の温泉地や企業の総務部門から問い合わせが殺到しているそうです。
DX支援事例を通じ、企業がDXを推進するにはどんな心構えが必要だとお考えですか。
山根 なにより重要なのはDX推進チームに権限委譲することです。新しいビジネスを成功に導くためには、ビジネスの現場にいる人たちの知見にもとづく迅速な意思決定が欠かせません。適任者を決めてDX推進チームを組織し、そのチームにできる限り権限委譲するという心構えを持つことが大切です。ビッグローブ様の事例では、プロジェクトリーダーがチームをリードする能力に長けているだけではなく、「何としても成功させたい」という強い熱意と覚悟を持っていました。権限委譲されていた環境にあったからこその覚悟だと思いますし、こうした人財を登用することが、企業経営者に求められていると考えます。
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DX支援やアジャイル開発のプロセスを進化させるために、どのような取り組みを行っていますか。
山根 KDDI DIGITAL GATEは、課題に対して自分たちで解決・改善するという自治化・自律化された組織です。これまでもさまざまなツールがエンジニアの手で開発されています。その一つに、オンラインで共有する画面を4K解像度にするツールがあります。私たちはモブプログラミングを採用していますので、3~4人くらいで同時にコーディングを進めることが多く、テレワーク環境で画面を共有して進めるには一般的なWeb会議ツールの解像度では見づらく、一日中やっているとかなり疲れてしまいます。まさにDeveloper Experienceの低下が深刻な問題になりつつありました。そこで代わりに使える新しいツールをつくろうと、KDDI DIGITAL GATEのエンジニアが開発したものが4K解像度画面共有ツールです。実はこのツール、最初は東京と沖縄の拠点をつなぐツールとしてコロナ禍前からKDDI DIGITAL GATE内で利用していましたが、進化を重ねて、いまではお客さま企業側にも導入いただいて案件実施時にも活用しています。
この例のようにKDDI DIGITAL GATEには「日常の困りごとや潜在欲求を見過ごすことなく、ソリューションを自らつくって改善する」という文化が根付いています。またエンジニアが快適に仕事のできる開発環境を用意することにも、こだわりを持って取り組んでいます。人を幸せにするプロダクトをつくるには、まずはそれをつくる人が幸せでないといけないと思いますし、エンジニアにも常にクリエイティブな発想を持ってほしいという思いから、このような文化・環境を意識的につくっています。