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いよいよ5Gが面白くなってきた! “フジテレビ×KDDI”で創る 「新たなニュース番組視聴体験」とは?

池田 昌隆

株式会社フジテレビジョン
ニュース総局 LIVE STUDIO
局長職技術統括

矢野 修至

株式会社フジテレビジョン
ニュース総局 LIVE STUDIO
局長職 兼 室長

藤井 彰人

KDDI株式会社
執行役員
ソリューション事業本部 サービス企画開発本部長

 5G(第5世代移動通信システム)ネットワークの商用サービスが開始されてから1年余りが経過。この間、基地局整備が急ピッチで進められるなど、5Gは徐々に身近な存在になりつつある。そうしたなか「高速・大容量」「低遅延」「多接続」という5Gの特長を最大限に活用し、エンターテインメントからビジネス領域まで幅広い用途やニーズに対応できる「5Gスタンドアローン(5G SA)」の実証実験が始まった。これに「マルチアクセスエッジコンピューティング(MEC)」を掛け合わせることで、多彩なアプリケーションが縦横無尽に動く本格的な5Gネットワークの世界が、いよいよ到来する。

 そんな最新の5Gネットワークに大きな期待を寄せるのがフジテレビジョン(以下、フジテレビ)だ。「放送のDX(デジタルトランスフォーメーション)」を推進するフジテレビは5Gネットワークで何を目指そうとしているのか。同社ニュース総局 LIVE STUDIO 室長の矢野修至氏、技術統括の池田昌隆氏と、KDDI 執行役員 サービス企画開発本部長の藤井彰人氏が意見を交わした。(本文中敬称略)

視聴者との「時間の共有」を目指してDXを推進

写真:矢野 修至氏

株式会社フジテレビジョン
ニュース総局 LIVE STUDIO
局長職 兼 室長
矢野 修至

藤井 フジテレビ様ではいま、どのようなDX(デジタルトランスフォーメーション)施策に取り組んでいますか。そこで見えた課題についても、教えてください。

矢野 現在のテレビ放送は、スタジオや現場から中継映像をリアルタイムに放映する「生放送」が主体となっています。フジテレビの場合、テレビドラマやバラエティー番組を除き、1日24時間のうち14時間が生放送です。テレビメディアにはそれだけ情報の正確性・速達性が求められていますが、その背景には近年台頭してきたインターネットメディアとの激しい競争が挙げられます。

 視聴者の方々がテレビを見るのは「いま起きていること」を知るためと考えています。しかしながらフジテレビでは、生放送に関する大きな課題を抱えていました。報道番組、情報番組、スポーツ番組で行われている生放送ですが、それぞれが異なる制作インフラを使い、コンテンツも別々に管理されていました。使われている放送技術はレガシーなものもあり、このままではインターネットメディアに太刀打ちできなくなるという危機感がありました。

 そこで2020年12月、ニュース総局のなかに「LIVE STUDIO」という組織を新しく立ち上げました。生放送で使用する制作インフラを従来の報道番組、情報番組、スポーツ番組という縦割りをやめ、すべてを統合して運用することにしました。「放送のDX」を推進し、生放送を通じて視聴者の方々に対して「時間の共有」という体験を高めることが、テレビメディアがこの先も生き残っていくための道だと考えています。

藤井 なるほど。従来の課題を解決して「放送のDX」、とりわけ「生放送のDX」を推進するために生まれたのがLIVE STUDIOなのですね。私見ですが、インターネット時代になった今日も、テレビはライブメディアとして圧倒的な地位にあると思います。しかし将来はおそらく、メディアとしての役割が徐々に変わっていくのでしょう。そうした将来を見据え、視聴者の方々との「時間の共有」を目指して「放送のDX」にチャレンジしているフジテレビ様には大きな可能性を感じます。

大容量も遅延なく、KDDIが提供する5GとAWS Wavelengthに注目

写真:池田 昌隆氏

株式会社フジテレビジョン
ニュース総局 LIVE STUDIO
局長職技術統括
池田 昌隆

藤井 「放送のDX」の実現に向けて、5Gに注目したのはどのような経緯からでしょうか。

池田 スタジオ以外の現場から生放送で情報を伝えるために、これまでは中継車を現場に走らせる必要がありました。この方法では、例えば100人の記者が多拠点を結んで同時に中継映像を伝送するようなことはできませんでした。この課題解決の糸口を探ろうと、携帯電話の通信回線を使った中継映像の伝送にも挑戦しました。しかし従来の4G LTE回線では、やはり多拠点の中継映像を遅延なく伝送することは困難です。そうしたなか「高速・大容量」「低遅延」「多接続」を実現する5Gネットワークのサービスがいよいよ始まり、5Gを使えば多拠点を結んだ中継映像を同時に伝送することも可能になるのではないかと考えました。

藤井 KDDIは2020年3月に5Gの商用サービスを開始し、さまざまな業種業界のパートナーの皆さまとともに5Gネットワークによる課題解決や新規ビジネス創出を目指す取り組みを進めています。そうしたなか、フジテレビ様は5Gのサービスインから早いタイミングでKDDIにお声がけしてくださいました。なぜKDDIを選んでくださったのでしょうか。

池田 LIVE STUDIOが立ち上がってすぐに、KDDIとAmazon Web Services(AWS)が5Gネットワークで超低遅延を実現する「AWS Wavelength」の提供を開始するという報道がありました。5Gネットワークの高速回線を使いながら現場に非常に近い場所でMEC(マルチアクセスエッジコンピューティング)サーバーを置けるとなると、4K/8Kクラスの大容量・高精細映像も遅延することなく伝送できます。またインターネットを経由せずに専用閉域網を利用するためセキュリティの面でも安心で、かつパケットの優先制御までもができる。これを利用すれば、もしかしたら100人の記者が携帯電話を使って同時にライブ伝送できるのではないかと感じたわけです。そこですぐにKDDIへコンタクトをとったところ、非常に好意的な反応が返ってきました。それからトントン拍子に話が進み、共同で実証実験を行うことになりました。

写真:藤井 彰人氏

KDDI株式会社
執行役員
ソリューション事業本部 サービス企画開発本部長
藤井 彰人

藤井 実証実験では、KDDIの5G通信センターにMECサーバーを置いたAWS Wavelength、およびKDDI DIGITAL GATEに構築した5Gテスト環境を組み合わせ、中継映像をスイッチングしながら伝送するという検証が行われました。この実証結果をどのように評価されたのでしょうか。

池田 実証実験の結果で「完全に使える」ということを感じました。実証実験は複数台のスマートフォン、パソコンに接続した複数台の業務用カメラ、小さなエンコーダーを取り付けた業務用カメラの3種類で試しましたが、どれも満足のいく結果が得られました。グローバルスタンダードなクラウドで組んでいるため、さまざまな場所で実証実験を行えることもとてもよかったと思います。

藤井 今回の実証実験は、5Gを最大限に生かすプレミアムなサービスの通信環境を目指すKDDIにとっても、有意義なデータが得られました。KDDIではコア設備を含めて5G技術のみで構成される5G SAの提供に向けた準備を進めており、フジテレビ様とは5G SAとMECサーバーを連携させた共同実証実験にも引き続き取り組んでいきたいと考えています。

図版:フジテレビ様との実証実験

■「AWS Wavelength」とは
AWS Wavelengthは5Gネットワーク向けの超低遅延アプリケーションプラットフォーム。低遅延を必要とするアプリケーション向けに最適化されたAWSのサービスをKDDIの5G通信センターのエッジで提供する。
■「MEC(マルチアクセスエッジコンピューティング)」とは
サーバーを端末の近くに分散配置し、利用者側の近くでデータ処理を行って低遅延通信を提供する技術。AWS Wavelengthでは、KDDIの5G通信センターのエッジにMECサーバーがある。
■「5G SA(スタンドアローン)」とは
5Gの基地局に5G専用のコアネットワーク設備を配置したシステム。論理的にネットワークを分割して高速・低遅延を実現するネットワークスライシング機能を特長とする。

これからさらに加速する「放送のDX」の可能性

藤井 AWS WavelengthとKDDIの5Gネットワークを組み合わせたクラウド伝送環境は、実証実験を通じてどのような放送ニーズに応えられると感じましたか。

矢野 フジテレビを含む系列局から構成されるフジニュースネットワーク(FNN)の記者が災害現場を取材する場合、現状のIP中継システムでは、映像はいったん東京のフジテレビに送られてくる仕組みになっています。その信号を全国に配信するためには、衛星回線や光回線といったものを別途用意する必要があり、わざわざ東京から信号を送り返す必要があります。しかし、こうしたIP中継映像をクラウドに伝送できるようになれば、クラウドにアクセスするだけで誰もがマルチに中継映像を見にいけます。これはいまの報道番組にとって非常に大きなメリットになると感じています。

藤井 クラウド伝送環境を実現していくことでそのような苦悩も改善し、放送と通信でおもしろい取り組みもできそうです。現在進めている実証実験を経て、今後どのような施策に取り組みたいと考えていますか。

池田 実証実験は2021年7月に1回目、同年9月に2回目を行いました。今回の実証実験では5G SAの環境を試せていないため、こちらの実証実験にも取り組んでいこうと考えています。さらに将来的には、クラウドに接続することで得られた情報からデータを抽出・分析するといった使い方にも挑戦していくつもりです。もう一つ、5Gネットワークによる放送のDXを加速させるために、5Gネットワークの“遊び場”―― つまり、いろいろな実験に自由に取り組める環境を用意し、人材育成やサービスの基盤としても活用したいですね。

藤井 5Gを遊び場にするというのは、テレビ業界ならではの発想ですね。5Gに限らず、最先端技術から新しいビジネスを創出していくには、技術を使いエンジョイすることが非常に重要だと思います。また、5G SAを試したいというお話がありましたが、私は「本格的な5G時代は5G SAがもたらす」と考えています。

 5G SAとMECの登場により、5Gを取り巻く世界はますます面白くなってきました。これからも5Gを活用した新たなアイデアをともに創っていく機会を楽しみにしています。本日はありがとうございました。

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