提供:KDDI

散在する倉庫の監視カメラを統合監視してAI分析

ロジスティードが描く「未来の物流センター」

新井 諭

株式会社日立物流
DX推進本部
IDコラボレーション部 副部長
兼 ロジスティクスソリューション開発本部
スマートロジスティクス推進部 担当部長

南雲 秀明

株式会社日立物流
DX推進本部
スマート&
セーフティソリューションビジネス部
部長

上村 幸夫

KDDI株式会社
DX推進本部
本部長
シニアディレクター

越智 康博

KDDI株式会社
ビジネスデザイン本部
営業1部長

「ロジスティクスを超えてビジネスを新しい領域に導く」という意思のもと、日立物流は2023年4月1日にロジスティード株式会社へと社名を変更する。かねてよりデジタルトランスフォーメーション(DX)に注力し物流業界全体をリードしてきた同社は、2023年1月に東京・中央区の本社に「安全コックピット」を開設した。これは、KDDI Video Management Service(以下、KVMS)を活用して、各地の物流センターや倉庫の監視カメラの映像を統合監視し、人工知能(AI)を使って分析することで防火・防犯などのリスク管理を強化しようというものだ。この取り組みをけん引してきた日立物流とKDDIのキーマンに話を聞く。
※記事内の部署名、役職は取材当時(2023年1月)のものです。

物流業界の課題をDXで解決する日立物流

写真:南雲氏

株式会社日立物流
DX推進本部
スマート&セーフティソリューションビジネス部
部長
南雲 秀明

―― 日立物流からロジスティードへ、まずは今回の社名変更にかける思いについてお聞かせください。

南雲 もともと「LOGISTEED(ロジスティード)」という言葉は、弊社のビジネスコンセプトでした。そこには、LOGISTICSにExceed、Proceed、Succeedを加え、Speed感をもって実行するという意思が込められています。社名変更を機に、さまざまなステークホルダーの課題解決と価値創出を実現する「グローバル3PL※1リーディングカンパニー」をめざし、社会の持続的成長を支えていく考えです。

―― 裏返せば、現在の物流業界を取り巻く環境変化に対応するためには、自らの変革が必要だということですね。

南雲 物流業界は現在大きな課題に直面しています。他の産業と比べて労働時間が長く賃金が安いとされ、深刻なトラックドライバー不足に悩まされています。また、温暖化ガスの削減の達成が強く求められるなかで、脱炭素経営への対応も不可避です。さらに直近では2024年問題と言われるトラックドライバーの時間外労働上限規制への対応や、インボイス制度、電子帳簿保存法の完全義務化などの各種法改正への対応も業界全体で急務となっています。また、電子商取引(EC)需要が高まるなかでは、商品の小口化、多頻度化、受け渡しの非対面化といったニーズの高度化にも対応しなくてはなりません。これらは、気合いや根性で乗り越えられる課題ではなく、テクノロジーを活用した変革、すなわちDXが不可欠だと考えています。

加えて強調しておきたいのは、弊社だけがDXを推進しても抜本的な課題解決にはつながらないということです。物流業界は全日本トラック協会による「トラック運送事業の規模別事業者数」によると、全国のトラック運送事業者は約6万2000社ありますが、そのうち約91%が従業員50人以下の中小事業者となっています。個社では投資が難しく、課題への対応がとれない中小事業者をサポートし、業界全体のDXを推進していくことが、弊社に課せられた使命でもあると捉えています。

写真:上村氏

KDDI株式会社
DX推進本部
本部長
シニアディレクター
上村 幸夫

―― 日立物流におけるDXへの取り組みについて、さまざまなプロジェクトでタッグを組んでいるKDDIとしてはどのようにご覧になっていますか。

上村 日本全体のさまざまな企業がDXに取り組み、一定の進捗が見られるものの、本業そのもののDXについてはまだまだ試行錯誤が続いており、発展途上の段階にあるという認識です。そうしたなかにあって日立物流様は、明確な目標のもとに着実な成果を上げています。その取り組みを自社だけにとどめることなく業界全体に視野を広げ、中小事業者を含めて課題解決を図っていこうとする姿勢は大変すばらしいと感じます。

南雲 弊社成長の原動力となった3PLを手掛けることになったきっかけの一つが、実は1985年の通信自由化です。保管と配送と情報の3つを通信でつないだ「HB-TRINET(トライネット)」というシステム物流サービスを開発し提供を始めた歴史があります。その意味で、通信に対しては強い思いがあります。

上村 KDDIは「通信を軸として人と人、モノとモノをつなぎ、次世代のビジネスや生活の発展を目指す」というビジョンを掲げていますが、考えてみると通信と物流とはとても似ています。どちらも「運ぶ」「つなぐ」ことを事業としており、業界は異なっていても根底にある課題感や思いは共通している気がします。

※1 3PL:サードパーティーロジスティクス。荷主企業に代わって効率的な物流戦略の企画立案、物流システム構築、実行を包括的に受託し、高度な物流サービスを提供する。

散在する倉庫に設置された監視カメラの映像をセキュアに統合管理

写真:新井氏

株式会社日立物流
DX推進本部
IDコラボレーション部 副部長
兼 ロジスティクスソリューション開発本部
スマートロジスティクス推進部 担当部長
新井 諭

―― これまで日立物流として、具体的にどんなDXを推進してきたのか聞かせてください。

新井 物流センターなどの倉庫DXの領域では、当社が培ってきた自動化・省人化ノウハウとデジタル技術を組み合わせて、お客さまの業界ごとに標準化し、最適な形で提供する「スマートウェアハウス」を展開しています。また、サプライチェーン(供給網)DXの領域では、お客さまのデータを集約・可視化し価値ある情報に変換することで、物流ネットワークの最適化から小売現場の効率改善まで実現する「SCDOS(Supply Chain Design & Optimization Services)」、輸送DXの領域では、AI・(あらゆるモノがネットにつながる)IoTテクノロジーを駆使してトラックドライバーの健康状態を含めた安全運行をサポートするとともに、輸送事業者の業務効率化と事故ゼロ化を支援する「SSCV(Smart & Safety Connected Vehicle)」といったDXソリューションを構築してきました。

今後はこれらのシステムを支えるデジタル事業基盤に蓄積されたデータを還元し、業界全体で活用を進めていくことで、さらなる事業領域の拡大や社会課題の解決につなげていきたいと考えています。

図:日立物流が推進するDXの全体像

図:日立物流が推進するDXの全体像

―― 倉庫DXの一環として、今回KVMSを活用して各地の物流センターの映像を遠隔で一元管理する「安全コックピット」を構築したのですね。

新井 はい。物流センター内には以前から監視カメラなどが多数設置されていますが、その映像は拠点単位でクローズされた状態でしか管理・活用できませんでした。これを東京の本社や、モバイル端末などからもリアルタイムに監視することで、現場負担の軽減や監視の高度化を実現したいと考えました。そこで、KDDIに相談したところ、提案を受けたのがKVMSだったのです。KDDIには実証実験の段階からプロジェクトに参画してもらい、私たちの課題感とのすり合わせを行ってきた結果、KVMSの導入に至りました。

写真:越智氏

KDDI株式会社
ビジネスデザイン本部
営業1部長
越智 康博

―― どのような経緯でKVMSの提案に至ったのですか。

越智 2019年に日立物流様から「5Gによる高速・大容量・低遅延の通信を使って物流センターにおける現場課題を解決できないか」というご相談をいただいたのがご提案のきっかけです。AIによる映像認識を通じて作業者の健康状態や動態をリアルタイムに把握し、安全かつ働き手にやさしい職場環境を構築すべく共同で取り組んできました。

そこからさらに一歩踏み込んだのが今回の安全コックピットによる物流センターの統合監視です。各地に分散している物流センターの監視カメラ映像を、本社に設置した安全コックピットで統合監視し分析することで、現場業務のさまざまな課題を包括的にかつリアルタイムに解決することを目指しています。

―― KVMSの特長をご紹介ください。

越智 遠隔監視をする際に最大の問題となるのがセキュリティーです。物流センターの監視カメラ映像には荷主さまの情報、作業者の個人情報などが大量に含まれており、決して外部に流出させることがあってはなりません。KVMS では、KDDIの閉域網を利用することで、映像データをセキュアに閲覧したり、蓄積したりできます。

もう1つのポイントは、すでに設置してある既存の監視カメラの多くが利用できることです。DXを進めるときには、どの企業も費用と現場の手間が課題になるものですが、KVMSは新たな設備投資を極力抑え比較的容易に導入することができます。

図:監視カメラ映像の課題を解決するKVMS

図:監視カメラ映像の課題を解決するKVMS

図:KVMSの仕組み

図:KVMSの仕組み

未来の物流センターに向けて役割を増す安全コックピット

―― これからの物流センターはどうあるべきなのか、展望をお聞かせください。

南雲 先述したとおり物流業界は慢性的な労働力不足に悩まされています。この状況を変えるためには、より働きやすく魅力的な職場に変革していくことが必要です。安全コックピットによって物流センター内の防火・防犯機能を高め、そこで働く人たちの安全・安心を守っているということが広く社会に伝わることで「集人力」の向上をもたらし、物流業界そのものの変革につながることを期待しています。

上村 物流センターに限らず、小売業の店舗やバックヤード、製造業の生産現場など、監視カメラが設置されている場所は業種を問わずいたるところにあります。KVMSによって、既存の監視カメラで収集した映像を遠隔地で統合管理し、リアルタイムでAIによる分析を行えば、異常などをいち早く検知できます。業務の効率化・省人化につながりますし、課題解決に役立つものと思います。

南雲 倉庫DXの領域では、KVMSで監視対象とする物流センターを増やすとともに、ロボットやドローンを活用した警備の自動化、火災検知・消火活動の自動化、安全品質活動の強化、湿温度・二酸化炭素(CO2)検知などの環境管理の強化を行い、未来の物流センターに向けた取り組みを進めていく計画です。それらの情報を管理する上でも、KVMSによって実現した安全コックピットの役割はより重要になっていくはずです。

上村 KDDIは通信を核として、AI、データ分析やドローン活用などお客さまの事業をサポートするアセットの拡充を進めています。日立物流様がさまざまな領域で進めているDXのお役に立てるよう、これからも対話を重ね、さらなるDX活用に向けてご一緒させていただきたいと考えています。

写真:東京・中央区の本社に設置された安全コックピット

東京・中央区の本社に設置された安全コックピット

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