KDDI株式会社
取締役執行役員専務
ソリューション事業本部長
森 敬一氏
コロナ禍をきっかけにデジタルトランスフォーメーション(DX)を推進して、ビジネス変革に取り組む企業が急増している。そうした企業に向けてDXを加速させるソリューションを矢継ぎ早に提供し、顧客の課題解決と事業継続を強力に支援しているのがKDDIだ。激動の2020年を振り返り、2021年は取り組みをどのようにドライブさせていくのだろうか。KDDI 取締役執行役員専務 ソリューション事業本部長 森 敬一氏に、同社の取り組みとお客さまに提供できる価値について聞いた。
通信を軸に付加価値を
提供できるKDDIの強み
お客さまに対してはKDDIのソリューションがどのような強みを持ち、どのような価値を提供できるのでしょうか。
森 KDDIは高品質な通信を中心に、クラウドの活用やIoTの導入などDXを進めるうえで欠くことのできないさまざまなサービスを組み合わせて、お客さまにご提供しています。お客さまが通信を意識することなく、ビジネス課題の解決やそのためのプロセスのデジタル化に専念していただけるようご支援できることが当社の強みです。
お客さまのビジネスをご支援する上で最も重要なことは、お客さまの課題に寄り添うことだと感じています。現場を訪問して課題を肌で感じることで、お客さまと同じ目線を持ちたい。デジタル技術が叫ばれる昨今ですが、お客さまに真摯に向き合うためには、あえてアナログな部分も重視したいと考えています。
またグループ全体では、幅広い経験と知見、実績を持った豊富なリソースが大きな武器です。当社がアジャイル開発に取り組み始めたのは2013年からです。例えば「auでんき」のような新しいビジネスを生み出す際にも、アジャイル開発の手法を取り入れました。さらにグループ傘下には、アジャイル開発を支援するScrum Inc. Japan、クラウドインテグレーションを提供するアイレット、IoTプラットフォームサービスを提供するソラコム、最先端のデータアナリティクスサービスを提供するARISE Analyticsといった、それぞれに強みや特徴を持つ子会社があります。これらグループ会社の技術は自社で活用して実績を積み重ね、お客さまにはその実績にもとづいた価値をご提供しています。
KDDIならではの強みを生かし、2021年はどのような取り組みを展開していく予定でしょうか。
森 2020年12月に、2021年へ向けた3つの重要な取り組みを立て続けに発表しました。
1つはJR東日本様との協業による「空間自在プロジェクト」の始動です。これは交通と通信という2つの社会インフラを融合して、場所や時間にとらわれない多様な働き方やくらしを創出する新しい「分散型まちづくり」の実現を目指すプロジェクトです。KDDIも長期的な視点からまちづくりや社会づくりを進めていきたいと考えています。
2つ目はAmazon Web Services(AWS)様と共同で提供を開始したエッジコンピューティングサービス「AWS Wavelength」です。このサービスはau 5Gネットワーク内にエッジサーバーを設置することで、5Gの特長の1つである「超低遅延」を実現するものです。ゲーム、エンタメ業界をはじめ、製造・物流・社会インフラ・医療などのさまざまな領域における新サービス開発に活用できるものとして期待されています。もちろん5Gネットワークへの投資も積極的に進めており、2021年度末には基地局5万局、人口カバー率90%を目指しています。
3つ目は2030年を見据えたニューノーマル時代のライフスタイルを提案する応用研究拠点「KDDI research atelier」の開設です。パートナー企業の皆さまとコラボレーションしながら、次世代社会構想「KDDI Accelerate 5.0」で示した7つのテクノロジーの応用研究を加速させたいと考えています。
これらが2021年の取り組みの中心となることは間違いありません。しかし、これにとどまらず、KDDIはお客さまのDX実現をご支援するための取り組みを強化し、お客さまのニーズに応えるだけでなく、先回りしてご提案していくための準備を続けていきます。東京・虎ノ門に構えた法人事業拠点、KDDI DIGITAL GATE、KDDI research atelierの3つの拠点からなる“虎ノ門トライアングル”も、その一環となるものです。トライアングルの3拠点がそれぞれに連携を深めることで、お客さまの課題解決と事業成長に貢献していきたいと考えています。
KDDIは高品質の通信を提供するだけでなく、新しい付加価値や生活スタイル、働き方、ビジネスをお客さまにご提案していきます。そして、お客さまとの共創を通じてレジリエントな未来社会の創造を目指すことで、社会の持続的な成長に貢献していきます。
「KDDI Accelerate 5.0」が目指す3つのレイヤーの環境整備
KDDIはコロナ禍をきっかけに、ニューノーマル時代における新しい働き方を目指す「KDDI新働き方宣言」を策定した。従来のオフィス勤務を前提とした勤務形態から、デジタル技術を活用して働く時間や場所にとらわれず成果を出せる柔軟な働き方へと変革を進め、社員の能力発揮を最大化して企業の持続的な成長を目指そうというものだ。その一環として、2020年7月には働いた時間ではなく成果や挑戦により能力を評価する「KDDI版ジョブ型人事制度」も発表、段階的に導入を開始している。