提供:マネックス証券

信託の安心をより多くの人へ 次世代へ託す「思い」と「資産」

マネックス証券社長 清明祐子氏

業界初の、信託の仕組みを使って万が一の認知症や相続に備える株式管理サービス「たくす株」。
マネックス証券社長清明祐子氏がめざしたのは
誰もが気軽に安心を手にすることができる、信託の民主化だという。
年に1回、とくに優れた新商品・新サービスを表彰する『日経優秀製品・サービス賞2021』で
日経ヴェリタス賞を受賞するなど最近注目を集める「たくす株」について、開発の背景や思いを聞いた。
※2021年9月8日(水)時点。証券業界とは日本国内の証券会社を指します。

もしものときは親族が取引 口座凍結のリスク抑える

年齢別の認知症の有病率

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出所:朝田隆他(2013)総合研究報告書「都市部における認知症有病率と認知症の生活機能障害への対応」厚生労働科学研究費補助金(認知症対策総合研究事業)からマネックスSP信託作成

 人生100年時代と呼ばれ、国民の高齢化が進むなか、認知症の患者数も増加傾向にある。認知症の有病率は70代後半で約14%。7人に1人が発症している計算だ。有病率は加齢とともに急上昇し、90歳以上になると60%を超える。

 認知症によるトラブルはいくつかあるが、マネックス証券社長、清明祐子氏(以下、清明氏)がとくに問題視していたのが、認知症患者の口座凍結だった。

 「多くの金融機関では名義人が認知症を発症すると、本人の資産保護の観点から口座を凍結してしまいます。介護などでお金が必要になっても、本人も家族も資産を引き出せなくて困ってしまう。そうなる前に備えておきませんか、と初めてお客様とコミュニケーションしたサービスが、今回リリースした『たくす株』です」

 マネックス証券で取り扱う認知症や相続に備える株式管理サービス「たくす株」(以下、たくす株)では、万が一のときの財産管理や資産承継をスムーズに行うことが可能だ。

 まず、利用者は保有する国内上場株式(ETF含む)の管理をマネックスSP信託に委託。その際、認知症発症時、あるいは相続発生時に代理人や受取人となる親族をあらかじめ指定する。万が一のときは信託契約に基づいてマネックスSP信託が手続きを行い、親族は資産の売却や出金ができるようになる仕組みだ。

「たくす株」の仕組み

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 「マネックス証券では1999年の創業から四半世紀近くにわたり、貯蓄から投資へと、お客様の資産形成を後押ししてきました。その結果、当時よりも多くの人が投資を始め、資産を増やしている印象です。これからはその先、増やしたお金をどう使うか、どう次世代に託すかを考える段階になっていくでしょう。

 もしものときは突然訪れます。せっかく作った資産の使い道を自分で決められないのは、本人にとってもご家族にとっても残念なことです。とくに認知症や相続が起きたときは、お金が引き出せなかったり財産の配分でもめたり、どうしてもお金のトラブルが多くなります。そのような課題の解決こそが私たち金融機関のミッションであると思い、たくす株の開発に至りました」

小口化やネット申し込みで信託の民主化図る

 マネックスは2019年7月にM&Aで信託会社をグループ化している。たくす株の構想は当時からあったという。信託の仕組みを使った株式管理サービスの取り扱いは証券業界で初。新しい試みに業界からは驚きの声も多くあがったそうだ。

 「保有財産や家族構成はお客様ごとに異なります。それぞれに個別の対応が必要なため、サービス提供は人手がかかるという考えが業界の常識だったんです。コストも高く、資産が少ないお客様は利用できないというケースもありました」

 もっと信託が一般的になれば、多くの人が安心して暮らせるはず。そう考えた清明氏は信託業界としては異例となる、システム化されたサービスの開発に取り組んだ。

 「私たちマネックス証券がネット証券として進出した当時も、証券会社といえば対面がほとんどで、新しく始めようというお客様はハードルが高いと感じていたはずです。マネックス証券は資産形成がもっと身近な存在になるよう、商品の小口化やネット申し込み、手数料の引き下げなどを行ってきました。

 今まで培ってきたノウハウを活かせば、信託でも同じことができるはず。多くの人が気軽に、安心して資産を任せられる社会をつくる。今度のチャレンジは信託を身近にでした」

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 とはいえ、ゼロからの開発は一筋縄ではいかなかったという。とくに困難だったのが、認知症や相続発生の直前まで従来通りの取引を維持できる仕組みづくりであった。

 たくす株では利用者が健康な間は自身で株式の買い付けや売却、出金などを電話で指図できる。株主優待や配当金も継続して受け取れるほか、マネックス証券の口座とたくす株専用口座(信託口座)間で資産の出し入れも可能と自由度が高い。

 「多くの取引を管理、記録する複雑なシステムが必要なので、開発現場は非常に大変だったと思います。ただ、ネット証券を利用されている方の多くは、ご自身で取引をしたいという気持ちが強い。その楽しみを取り上げてしまうようなサービスは受け入れてもらえないと考えていたので、取引を続けられることにはこだわりました」

お金に込めた思いごと家族が引き継げるサービス

日経優秀製品・サービス賞2021 日経ヴェリタス賞

 たくす株は日本経済新聞社が毎年1回、とくに優れた新商品や新サービスを選ぶ『日経優秀製品・サービス賞2021』の日経ヴェリタス賞も受賞しているなど、世間からの期待も高い。

 「信託は昔からあるサービスですが、ネット証券にとっては新しいチャレンジ。それを認めていただけたのはとても光栄なことだと思います。

 たくす株は非常に足の長いサービスで、今はまだ、サービスの価値を知ってもらう段階です。『私はまだ大丈夫』と認知症や相続にどこか他人事でいる方は多いです。

 しかし、本当にそうでしょうか。いつ万が一のときが来るかは誰にもわかりません。まずは自分事として考えてみませんか、と伝えていきたいと思っています」

 マネックス証券では認知症に関するセミナーなども開催し、事前の備えについて啓発を行っている。最近では50代、60代からの問い合わせも増えているそうだ。

 「ご本人が早い段階から考えはじめているほか、高齢な親を持つお子様が、親のお金の管理に不安を感じてというパターンも多いです。親が認知症になった際、たくす株があれば介護費用を賄えたのに、という言葉を頂いたこともあります。いざというとき家族がお金を引き出せるのは、やはり心強いのではないでしょうか」

 最後に清明氏は、将来の不安を取り除くだけでなく、「お金について家族で話し合うきっかけにもしてほしい」と、たくす株に込めた思いを語った。

 「たくす株は事前に代理人を指定します。きっと、ご家族に黙って指定する方はいないでしょう。たくすということを前提に、資産形成を家族で考える機会にしていただきたいと思っています。

 ライフスタイルや価値観の多様化が進んでいる今、達成したいこと、やりたいことも人それぞれです。ただ、どんな夢にもお金は大切な要素だと思います。何のためにお金を増やしたのか、どんな思いを込めて資産形成をしたのか。突然相続が発生して、よくわからないまま売ってしまうのではなく、その思いごと引き継いでほしいと考えています」

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マネックスグループ株式会社 取締役 代表執行役COO兼CFO
マネックス証券株式会社 代表取締役社長
清明祐子氏

2001年京都大学 経済学部卒業後、三和銀行(現三菱UFJ銀行)に入行。06年にMKSパートナーズ(プライベート・エクイティ・ファンド)の参画を経て、09年2月にマネックス・ハンブレクト(17年にマネックス証券と統合)に入社し、11年に同社社長に就任。19年4月からマネックス証券代表取締役社長(現任)。20年1月マネックスグループ代表執行役COO、21年1月からCFO兼務。21年6月からマネックスグループ 取締役 代表執行役COO兼CFO(現任)。