教育者としての想い、
仕組み作りで支え EPISODE 5 相続で多くの資金を受け取った教諭

匿名で学校に寄付、子どもたちを支援

　「そんなに多くのお金をもらっても困る」

　長年、生徒たちを教えてきた男性は、降って湧いたような話に驚きを隠せなかった。きっかけは、親が創業し兄弟が後を継いで経営してきた企業の売却。親族内に後継者がいなかったため、M&Aで買い取ってもらうことが決まったようだが、それにともなって自分が親から相続した株式も手放すことになったのだ。結果、想像もしなかったような大金がいきなり手元に転がり込んできた。

　自分は独り身。財産をもらってもそれを引き継ぐ子どもはいない。特にぜいたくな暮らしを送ってきたわけでもなく、使い道も思い浮かばない。突然増えた資産のせいで急に環境が変わるくらいなら、いっそ今すぐどこかに寄付してしまった方がいいのではないか。そんなとき、声をかけてきたのは、M&Aのお膳立てをしたMUFGの担当者だった。「少しお話をさせていただけませんか」

　MUFGの担当者と行った面談は、当初は雑談が多かった。もちろん資産運用の話も出たが、教職一筋で過ごしてきた身にとっては別世界の話のようで、大して興味を持てなかった。自然と話の中心はそれ以外の部分、例えば自分の仕事や趣味などになる。そのうち、ふと長年気に掛けていたことが口をついて出た。「親の経済的問題で学費が払えなくなって、自分の意志とは別にやむにやまれず退学する子どもたちがいるんだよね」。子どもにとって思わぬ形で環境が変わるのは好ましくないと考えていたため、この問題はずっと心のどこかに引っかかっていた。

　うなずいて聞いていたMUFGの担当者が口を開く。「ではその問題に一緒に取り組ませていただけませんか」。MUFGが提案してきたのは、ただ単に学校に寄付するのではなく、継続的に苦学生を助ける仕組み作りだった。「いいんじゃないかな」。困りものと思っていた多額の資金にも、自分が望むような使い道があった。

　話し合いを重ねた結果、最終的にMUFGが様々な関係者とともに、自分が望む支援先に継続的に支援ができる寄付スキームを個別に構築してくれた。親の経済的困難のため子どもが教育を受けられないという「負のスパイラル」を食い止められる。胸のつかえが下りたような気がした。

将来の使い道に備え、「ハウスビュー」を生かす

　とはいえ寄付したのは入ってきた資金の一部。まだ他にも多額の資金が残っている。何もしなければ、自分が亡くなった後にこの資産は兄弟たちに引き継がれるのだが、兄弟たちも自分と置かれた状況はほぼ同じであり、それも困るだろう。最終的にこの資金も将来の学校の子どもたちのために使いたい。MUFGに相談すると、提案されたのは遺言の作成だ。確かに、これを定めておけば万が一の際にも資金の行き先を決められる。さっそく遺言を作った。

　資産の運用についてもMUFGと話し合った。今まで考えたこともないような金額をどう運用すればいいのか、自分には想像もつかないし、運用商品の知識もない。すると担当者から「ハウスビュー」という言葉が出てきた。「資産運用におけるMUFGウェルスマネジメントの公式見解です。これに基づく運用をしていただければ、担当者が変わっても継続的に同じスタンスで運用に取り組めますよ」。確かに運用期間が長くなれば、担当者も交代するだろう。そのたびに新しいことを言われるよりは、同じ方針で運用し続ける方が安心できる。MUFGからはハウスビューに基づくアドバイスを受け、わかりやすく長期間持つことを前提とした商品に投資するようにした。

　そうこうするうちに教師としての定年を迎えることになった。自分の人生に大きな意味を与えてくれた職場に、まさかこういう形で最後の貢献をするとは思いも寄らなかった。それでも長年の心残りに対し、できることをしたうえで幕を引けたことには満足していた。

　落ち着いた生活が戻ったところで、自分のこれからを考えた。仕事の都合で都心部のマンションに住んでいるが、退職後は住まいを変えてもいいかもしれない。いっそ郊外に引っ越して、ゆっくりと趣味に没頭できる家に住むのもよさそうだ。MUFGなら希望にあった不動産も紹介してくれるだろう。