天野博之
1962年生まれ。奈良県出身。近畿大学法学部経営法学科卒業後、金融機関に入社。90年に東洋炉工業株式会社に入社。営業部に配属され、2012年に代表取締役に就任。現在に至る。
http://www.toyo-ro.com/

INTERVIEW

私たちが手がける熱処理炉はお客様のもとで絶えず稼働しています。いつ故障やアクシデントが起こったとしても、それがたとえ夜遅い時間や週末でも、連絡があればいつでもお客様の顔を思い浮かべてメンテナンスに駆けつけることが私たちの使命です。創業以来、切れ目のないメンテナンスを会社の強みとして大切にしてきました。この先、万一事業が大きく変わって別の機械を作ることになったとしても、この部分だけは変わることはないと思います。

経営危機で、お客様のご依頼のありがたさを痛感

天野博之

大学を卒業して初めての就職先は金融機関でした。いろいろな企業の財務状況を見ていく中で、ある会社が倒産に至るまでの一部始終を目にしたことが心に残っています。倒産によってその会社の経営者、社員、家族、様々な方の人生が一変する様相を目の当たりにし、会社とはどうあるべきか、どうすれば倒産しないのかというようなことを考えさせられました。この経験は、後の自分の会社経営にも生きていると思います。
東洋炉工業は、もともとは私の営業先の一つでした。初めて挨拶に出向いた時、当時の社長が私の遠戚であることが分かり、不思議な縁を感じたのです。炉の知識はまったくなかったのですが、稼働する炉を初めて見て、生命が宿っているように感じたのを今でもよく覚えています。
東洋炉工業に転職すると、20代と30代はほとんど営業部で経験を積みました。クレーム対応が多く、たくさんのお叱りを受ける辛い仕事でしたが、そのおかげで炉への理解を深めることができましたし、お客様の声で良い炉ができるのだということを実感しました。
創業55年の歴史の中で、時代の移り変わりとともに会社存続のピンチも幾度かありました。バブル崩壊とリーマン・ショックの時は大きなあおりを受けました。特にバブルの時は仕事がまったくない状態が3カ月ほど続き、工場は空になりました。先代の社長は、たとえ仕事がなくても雇用を死守すると明言していたので、社員たちはその言葉だけをよりどころにしていました。お客様からご依頼があることは当たり前ではないのだと痛感しましたし、その経験があるので、今でもお客様のご依頼をお断りすることは考えられません。
今はコロナ禍で世の中が大きく揺れ動いています。幸い、私たちの業界はさほど深刻な打撃を受けていませんが、次は何が起こるか分かりません。私たちは中小企業の中でも小さな会社ですから、一つの判断ミスが命取りになるかもしれません。経営者は五感をはじめ使えるものは全て使い、最後は肚で決めることが大切だと思っています。先代が守った「会社の存続」「雇用の維持」は、私の経営のテーマにもなっています。

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ものづくりの原点である現場を重視

「妥協を許さないものづくり」を追求して、半世紀以上経過しました。これまで何度も危機を脱し、今もなお工場を稼働し続けられるのは、お客様や協力会社、周囲の全ての方のおかげに他なりません。今後は私たちがお客様のニーズにお応えし、社会に貢献していく番だと思っています。
私たちの原点はものづくりの現場にあります。社員たちにも、現場で立ち止まり、私たちが手掛けた連続炉と向き合おうと常日頃から話しています。良い事も悪い事も、全ては現場に答えがあるからです。
20年には創業以来最大規模の予算を投じて工場を新設し、敷地面積も3倍に拡張しました。
従業員たちが安全で快適な環境で働けることはもちろん、より質の高い技術とサービス、切れ目のないメンテナンスをお客様にお届けするためです。お客様に新しい工場でものづくりの舞台裏を見ていただいた時に、「東洋炉工業に任せれば安心だ」と思ってもらえることを目指しています。
これから20年後、30年後、今の製品が売れ続けるかどうかは誰にも予測できませんが、今持っている技術を掘り下げていくことがお客様のため、ひいては企業存続につながるはずです。今は主力製品であるメッシュベルト式連続炉を中心に、燃焼効率を上げて熱処理のコストを低減していくことが私たちの役割だと思っています。さらに、「カーボンニュートラル」「SDG’S」のような世の中の動向やお客様のニーズを読みながら、カーボンフリーやCO²の削減に貢献できる製品を突き詰めていきたいですね。

私たちの目標は、同業他社には作れないような製品を、同業他社が追いつけないスピードで作ること。お客様にそう感じていただけるまで立ち止まることなく、日本のものづくりを連続炉で表現していきます。そして、その技術を次の世代につないでいかなくてはいけません。
先代の社長の「小さくてもいいから光る会社であってほしい」という思いを、企業のDNAとして浸透させていきたいと思います。

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