上市裕史
1965年生まれ、兵庫県出身。高校卒業後、83年に伊藤ハム入社。近畿自動車教習所、豊岡市役所を経て2003年、アドバンスドライビングスクール設立。06年、STYLE代表取締役就任。11年にBEZEL設立。
https://www.kaatsu-studio.net/

INTERVIEW

「しんどい時は笑え」―プロアスリートを目指す若者たちに私がよく伝えていることです。「笑うな」「歯を見せるな」などという厳しさはもう古く、むしろリラックスして余計な力を抜いて笑ったほうが良いパフォーマンスを発揮できるものです。私のトレーニングジムやアカデミーはいつも笑い声であふれています。プロになる方法に正解はありませんが、一つ言えるのは「頑張らなくてはいけない」という気持ちでは長続きしません。もちろん努力することは大切ですが、そこに義務感が伴えばいずれ限界が来るでしょう。やらされるのではなく、自主的に考え、積極的に動いて、楽しみを見つけてほしいと思います。

教えることが好きで、教師を志した時期も

上市裕史

幼い頃は輪の中心にいることが多く、学級委員長や生徒会長に立候補するような子どもでした。思春期を迎えると一変して斜に構えていた時期もありましたが、自分は何でもできるという根拠のない自信と万能感は常に持っていた気がします。教師になりたいと思っていましたが、経済的な事情で大学進学を諦め、食品会社に就職しました。入社後すぐに「自分が目指す姿はここにない」と感じましたが、辞めるなら全国トップの営業成績を取ってからにしようと決め、2年後に退職しました。

その後、教師になる夢を忘れられず、教員資格がなくてもなれる自動車学校の指導員として働きました。人に教えることが好きなので、やりがいを感じながら充実した日々を過ごしていましたが、結婚を機に地元に移り、公務員に転身しました。生活は安定していましたが、今思い出しても公務員は一番自分らしくない選択でした。10年近く働きましたが、誰にも文句を言われず自分の好きなことをするためには起業しかないと考え、自動車教習所を開業しました。家族を含め、周囲には「安定した地位を捨てるなんて」と呆れられましたが、結果を出して納得してもらうしかないと思いました。指導員の経験はありましたが経営に関しては素人だったので、一から勉強しました。最初はうまくいっている企業をひたすらお手本にするだけでしたが、振り返ってみると結局それが正解だったと思います。

独立から5年で、現在のトレーニングジムの運営を始めました。1号店として、当時人気だった加圧トレーニングができる専門スタジオを大阪に立ちあげると、ありがたいことに、オープン前に予約で満員になるほど話題になりました。法人化してBEZELを立ち上げ、ジムは数年で10店舗に増えました。

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強豪校に行かなくてもプロになれるモデルケースを

現在、ジムと並行して、プロスポーツ選手やそのトレーナーを育成するスポーツアカデミーを運営しています。アカデミーが擁する野球チームでは、監督もコーチも「これをやりなさい」と細かい指示を出すことはなく、選手一人ひとりが自分でスケジュールや練習内容を考えています。プロを目指す以上、主体性を持って動かなければいけません。実際にプロになるような選手は、アマチュアの時点ですでにプロ意識を持っています。プロになる前から、行動も考え方もプロと同じことを実践するというのは、スポーツに限らずどの仕事でも大切なことです。

プロ野球選手になるには、強豪校に入り甲子園大会で活躍してプロ入りを目指すのが王道ですが、学校や野球部が合わずに辞めてしまう球児は年間3万人もいます。BEZELでは、行き場を失って大好きな野球を諦めてしまう若者たちの受け皿となり、強豪校の出身ではなくてもプロになれるモデルケースを確立していきたいと思います。先頭に立ちたいというよりも、全国に同じようなアカデミーやスクールが増え、みんなで手を取り合いながら日本全体を盛り上げていくことが願いです。また、スタッフの独立も後押ししています。現在、BEZELから独立してトレーニングジムを運営する法人は10社になりました。彼らと一緒に、全国でプロアスリートを輩出していくことができればうれしいです。

今後は健康を扱う企業として食にも力を入れていきます。ジム、スポーツアカデミー、食の3本柱で事業展開しながら、活動の場を海外にも広げていきたいと考えています。プロスポーツ選手やパラアスリートのサポート、国内外のエージェント業務、アスリートのセカンドキャリア支援など、やるべきことは山積みです。動きながら考える、考えながら動くということが大切だと思います。じっくり考えればうまくいくというのであれば、今ごろ世の中は成功者だらけでしょう。頭で考えるだけでは何も変わりません。行動あるのみです。試してみてだめだったら、もう一度やってみればいいのです。私も未熟な経営者なので、失敗は数知れません。それでも、成功するまで何度でも挑戦するだけです。

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