鉞勇貴
1975年生まれ、岐阜県出身。幼い頃から鳶職人に憧れをいだき、15歳で建設業界に入る。現場で経験を積み、2000年11月に24歳で有限会社鉞組を設立。06年8月には株式会社鉞組に組織変更し、現在に至る。
http://masakarigumi.com/

INTERVIEW

今まで、かっこいいと思うことを選択しながら生きてきたつもりです。諦めるより諦めないほうがかっこいいですし、無難な選択より困難に挑戦するほうがかっこいいと思い「かっこよく在りたい」と常に意識してきました。曲げられない信念を持つことも大切ですが、私はいつも変化を探し求めています。変化し続けることは成長につながります。時代の変化に対応し、多くの人と話し自分と違う価値観を知り、学びと実践を積み上げていく。そういったことを大切にしています。

足場をとことん突き詰めてマニアの域に

鉞勇貴

私が中学生の時に、母が病気で他界しました。父は真面目な人ですがとても厳しかったので、その反発から思春期のころは少し荒れていました。その頃、先輩に誘われて建設現場でアルバイトをしたのですが、鳶(とび)職人が軽やかな身のこなしで高所作業する姿を見て、かっこいいなと憧れました。自分も鳶職人になろうと思ったのはこの時です。

中学を卒業してすぐ建設会社に就職し、社員寮で生活しました。今のように新人教育が充実していなかったので、たくさんしかられながら一つひとつ仕事を覚えました。いずれ一流の鳶職人になるために、足場を使用して作業を行う他業種のことも知っておきたいと考え、型枠大工や鉄筋工などの仕事もひと通り経験しました。橋の下に吊られている足場や、山の絶壁に組立ててある足場をテレビで見かけ、その卓越性に魅了され興奮し、必ずこの技術を身に着けようと決めました。

18歳で地元に戻ると、鳶職の会社に入社しました。もはや「足場マニア」のようになっていた私にとって、足場工事は仕事というより趣味。足場で分からないことがあると居てもたってもいられません。当時はインターネットもそれほど普及していなかったので、街で気になる足場を見かけると休みの日に観察しに行ったり、職人さんに質問したりしました。とにかく、とことん突き詰めて、自分のものにしようと必死でした。入社1年で現場を任され、20歳を過ぎるといくつかの現場を統括するようになっていました。

24歳のある日、いつものように出勤すると会社が倒産したという一報が飛び込んできました。資金繰りに苦労しているのは分かっていましたが、事務や経理は代表に一任していたので、倒産は予想できませんでした。しかも私は社内で唯一の役員だったので、膨大な借金を背負うことになったのです。結婚資金として貯めていたお金も返済に消え、人生のどん底を味わいました。

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人を活躍させ、成長させるための会社

お客様に迷惑をかけるわけにはいかないので、残っていた現場をどうにか最後までやり遂げ、起業しました。当面は借金返済のために昼夜を問わず死に物狂いで働いていて、社員たちにも厳しく接してしまいました。耐えられずに去っていく人もいました。感傷的な気持ちにもなりましたが、自分自身が変わらなければという考えにはまだ至りませんでした。お客様だけではなく、自分のそばにいる社員や仲間を大切にしなければいけないと気付いたのは、借金を完済したころでしょうか。仕事が忙しいから人を雇うのではない。縁あって来てくれた人を活躍させ、成長させるために会社が存在する。そう考えるようになりました。人を大切にすれば、仲間は自然と増えるものですね。最初は数人足らずでしたが、今は80人近くの社員が一緒に働いてくれています。

建設業界でも生産性の向上を目指してAI(人工知能)やIT(情報技術)化が進んでいますが、建設職人たちがこれまで培ってきた経験、心技体の部分が要であることはこれからも変わりません。今後、溶接や切断加工等さまざまな現場作業を機械やロボットが行い、生産プロセスが大きく変化していくと思いますが、日々状況や環境が変わりゆく現場に対応できるのはやはり人だと思います。卓越した技術を持つ職人を育てるには、その為の環境が必要です。現在、私たちが得意とする特殊な専門工事技術を継承するためのプログラムを作成し、社内だけではなく同業他社の方にも価値として提供していき、この業界に少しでも貢献したいと考えています。優秀な人材をたくさん育てて、鳶職の地位を向上できればうれしいですね。鳶職人として現場で活躍するには、身体能力や的確な判断力が必要です。そのため加齢やケガなどで長く続けられない人も少なくありません。社員が定年退職まで活躍できる仕組みや環境を整え続ける事は私の使命であり、存在意義と受けとめています。

自分の決めた目的に向かってやるべき事をやるべき量こなせば、必ず成果や成功を収めることができます。誰もがすべてのことを自分で決められる自由があります。
どんな成果を得たいのか、どんな人生にしたいのか、すべては自分次第ではないでしょうか。

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