松岡俊行
大阪出身。京都大学医学部医学科卒。大学院在学中に「Science」に、ロンドン留学中に「Nature」に論文掲載。2019年に江坂まつおか眼科を開業。21年9月に法人化し、「医療法人アメミヲヤ江坂まつおか眼科」と名称を変更した。妻が専門としている糖尿病内科を併設するほか、21年からは患者のニーズに応えるため、美容皮膚科も開始した。
https://www.matsuokaganka.com/

INTERVIEW

子どものころ、視力低下により不便な思いをしたことから、「自分と同じような思いをする子どもを一人でも減らしたい」と眼科医を志すようになりました。とはいえ、自分の病院を開業するまでには、眼の領域に関係なく、研究に取り組んできました。大切にしているのは「セレンディピティ(思いがけないものを偶然に発見すること)」。思いがけない出会いがあったときこそ、何を選ぶかを大切にしたいと思っています。

原体験から眼科医を志した

松岡俊行

父が内科医師、伯父が歯科医師でしたので、あまり病院の世話になることがありませんでした。そんな私が通っていた数少ない病院が眼科です。小学生のころに右目が悪くなり、コンタクトレンズを入れることになったのですが、当時はハードレンズが一般的だったこともあり、痛かったですし怖かったです。自分と同じような思いをする子どもを一人でも減らしたいと思い、眼科医を目指すようになりました。

ただ、そこから眼科の領域にまっしぐらだったわけではありません。中高生時代にはワンダーフォーゲル部に入り、ハードな部活生活を送りました。その反動で大学時代には何となく茶道部へ。しかし、いざ入ってみると壮大なテーマで茶会を創り上げる茶道の世界にのめり込み、お茶会に使う道具を一から自分たちで作るまでになりました。茶道におけるゼロからイチを作り出す精神や、テーマに沿ったストーリー創り、一期一会、おもてなしの心を知ることは、世の中を生きていく上での大切な学びとなりました。

大学院生時代、幸運にも雑誌「Science」に論文が掲載されました。「Science」と「Nature」の2誌に論文を書くのは一つの大きな目標でしたから、大変うれしかったです。そのうちの一つがかなったことで、「Nature」にも論文を書きたいと思い、編集部のあるロンドンに留学しました。留学先で没頭していたのは、眼の形成に重要な神経堤細胞の研究だったのですが、息抜きで通っていたロンドン自然史博物館で古生物学のペア・アールバーグ博士と知り合いになったことで、共同研究をすることになりました。魚から陸生生物への進化で首ができたことを証明し、「Nature」に論文が掲載されました。ひょんな縁で眼とは離れた研究をすることになったわけですが、当時のヒューマン・フロンティア・サイエンス・プログラム機構事務総長トルステン・ウィーセル博士(視覚神経生理学でノーベル賞)の「異分野融合」が重要との薫陶もあり、古生物学と分子生物学、医学を融合する新たな発想の研究ができたことは、最大の評価されたところであり、今でいうイノベーションだったと感じています。

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大切にしているのは「セレンディピティ」

紆余曲折を経て、眼科医として医療法人アメミヲヤ江坂まつおか眼科を開業。病院名の「アメミヲヤ」は、日本の神話に出てくる神様の名前が由来です。昔から神様が好きで、当初はアマテラスにしようと考えていたところ、調べていて知ったのがアメミヲヤでした。この神様は宇宙の始まりを意味しており、宇宙の始まり=ビッグバン=光が生まれると連想したのです。眼科医は患者様の光を守る存在ですから、これはぴったりの名前だと思いました。メインは眼科ですが、妻が糖尿病内科を専門にしていること、糖尿病と眼には密接な関係があることから、糖尿病内科も併設。さらに今年からは、美容皮膚科の3本立てで運営しています。眼科とはかけ離れていると思われるかもしれませんが、きっかけは患者様の一言です。白内障の手術後、視力が回復したことでシミやしわに気が付き、ケアをしたいと考えられる患者様がいることから、治療を始めました。

このように、大切にしているのは個人医院だからできる患者様に寄り添う取り組みです。キャッチコピーは、「『眼を見て分かる診断』『眼で見て分かる診察』」。眼科は画像診断が多く、医療知識の少ない患者様でも、検査結果を見て異常を理解しやすい特徴があります。医療はどうしても決定権が医師にありますが、その過程を患者様と共有し、一緒に診断を下していきたいと思っています。新しい視力回復の治療法「オルソケラトロジー」も扱っており、患者様からはご好評の声をいただいています。今後は、より多くの患者様の眼に関する困りごとを解決するためにも、分院展開を目指していきたいです。今は口コミで患者様が増えている状況ですが、離れた場所に分院を作るならば、クリニックとしてのブランディングが必要。土台を固めるべく、SNSなどを活用した発信活動にも力を入れているところです。

学生時代も開業後も、さまざまな出会いにより時折思わぬ方向に進みながら、今までやってきました。こうした偶然の産物を「セレンディピティ」と言います。私が生きていく上で大切にしている言葉です。出会いによっては、当初考えてもいなかった方向に進むことも少なくありませんが、そこで安全を取るのか、興味を取るのかが人生の岐路になります。私はどちらかというと興味で物事を決めてきましたが、そのおかげで今に生きる貴重な財産を得られたと思っています。

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