水嶋淳
1957年生まれ、愛知県出身。高校で建築を学び、76年に村上設計事務所に就職。82年、水嶋建設入社。85年、一級建築士取得。2001年から現職。
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INTERVIEW

家づくりの魅力は、お客様と一緒に作り上げたものが作品として残るところではないでしょうか。
学校、病院、店舗、オフィスなどいろんな建物がありますが、家は家族が生活を送り、子育てをして老後まで過ごす、特別な建物だと思います。今、いろんな工法がありますが、地域の職人が地域の木材を使い、地域の伝統や特性を生かしながら作るのが家という建物です。お客様にも「家づくりとは何か」ということを私たちと一緒にじっくり考えていただきたいですね。

猛勉強の末、建築士試験に一発合格

水嶋淳

大工の棟梁として働く父の姿を見て、育ちました。家ができていく過程の中で、特に上棟を見るのが好きでしたね。一日で家の骨組みが一気に出来上がるのを見てわくわくしたものです。将来はきっと自分も父の跡を継いで大工になるだろうと思っていました。
10代で知人の設計事務所に就職し図面を描く仕事をしながら、建築士の国家資格を取ろうと一念発起しました。学歴がないので、現場経験だけではなく資格が必要だと思ったのです。過去問題集がぼろぼろになるまで勉強し、2級建築士の試験に一発合格することができました。その4年後には1級建築士の試験にも一発合格。努力は必ず報われることを身をもって経験しました。
21歳の時、結婚を機に父の会社に入らせてもらいました。子供の頃からの顔なじみの従業員もたくさんいて、これから一緒に仕事をすると思うと不思議な気がしましたね。最初は図面から使用資材を拾い上げる積算の仕事を担当し、その後リフォームの現場を任されました。
父が高齢になり体調を崩したことをきっかけに、私が代表に就任しました。44歳の時です。ずいぶん前から少しずつ仕事を引き継ぎ、経営にも携わっていたので、スムーズに交代できたと思います。父は経営哲学のようなことは何も言いませんでした。ただ、「まじめにやれ」というだけでした。
経営をやるからには組織を大きくしたいという野望もあったので、住宅以外の建築物も手掛けるようになり、従業員も増やしました。さらにフランチャイズ展開の飲食業にも手を広げました。多い時は8店舗ぐらい持っていましたね。業績は伸びましたが、今となってはマネジメントが行き届いていたかどうか、自信がありません。

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大工を育成して、木造住宅の技術を守りたい

その後、リーマン・ショックのあおりで業績が振るわなくなり、事業全体を見直しました。不採算店舗や事業は撤退し、借金返済に追われて苦しかったですが、自分たちは一体何者なのか、そもそも家づくりを生業としているのではないか、という原点に立ち返ることができたのは良かったと思います。品質改善、経費削減など様々な観点から実現可能な経営計画を社員みんなで考えていきました。その中で、本当にお客様のためになる家づくりを突き詰めた結果「健康」「自然素材」という二つのコンセプトにたどり着きました。従来のようにオールマイティーに何でも作るわけではありませんが、そこに特化したことで、共感してくださるお客様も増えました。
お客様は一人ひとり、個性も趣味も生活スタイルも異なります。ですので、打ち合わせでは理想の素材やデザイン、その家で何をしたいのかをじっくりヒアリングをします。特に間取りはいくつもパターンを用意し、時間をかけて決めていきます。いかにお客様のご要望にお応えできるかにこだわっていきたいですね。
大工の育成にも力を入れています。今、職人の高齢化や家づくりの工業化によって、大工のなり手が減っています。大工を育成するには、何年も棟梁の下について修行することが不可欠なのですが、棟梁は一人親方がほとんどで、見習いを雇って育てるだけの余裕がありません。今は労働基準法があるので、一昔前のように修業と称して無償で働かせるわけにもいきません。そこで、うちでは見習いを社員として雇い、給料や福利厚生の面倒をすべて見る上で、育成のみ棟梁にお願いしています。もちろん、育った大工がずっとうちで働いてくれる保証はありませんが、それでも日本の木の家づくりに欠かせない技術をどこかで受け継いでくれればいいと思っています。

一生で出会える人の数は限られています。人との出会いやかかわりを大切にしてください。好き嫌いだけで判断すると、視野が狭くなります。少しでもかかわっていいかなと思えるなら、かかわってみるといいと思います。仕事も同じです。お金をもらってもしたくない仕事ならやめたほうがいいけど、お金のためにできるなら嫌いではないはずなので、やってみる価値はあります。好き嫌いよりもできるかできないかです。
あとは、これだと思うものを見つけたら生涯を捧げるぐらい突き進んでください。壁にぶつかることもありますが、「ここまでは必ずやる」と自分で区切りを決めて、がんばってみてください。

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